2万人と面接したプロが解説 本番前に読む最終面接対策【総まとめ】

内定を勝ち取るために、どんな準備をしてどのような姿勢で最終面接に臨めばいいのでしょうか。

リクルートやライフネット生命で人事・採用の責任者を務め、2万人以上と面接してきた採用のプロ曽和利光さんに聞きました。

曽和利光(そわ・としみつ) 人事コンサルタント、株式会社人材研究所代表。リクルートなどで人事・採用部門の責任者を務め、2万人以上と面接した人事とキャリアのプロ。

最終面接で面接官は何を見ているのか

最終面接は会社にとっても応募者にとっても重要な場ですが、会社はどのような観点から候補者の合否を決めているのでしょうか。

最終面接では何が問われるのか、一次面接・二次面接と比較してまとめたのが下記の表です。

一次面接、二次面接と最終面接の違い 一次面接 面接官:現場の担当者 目的:印象やコミュニケーション能力を見て足切りを行う 二次面接 面接官:現場のマネージャー・人事担当者 スキル・能力とタイプを見て、求める人材かどうかスクリーニングする 最終面接 役員・社長 最終候補者の順位づけをして、採用の優先順位をつける

簡単に言えば、一次・二次はふるい落としのための面接、最終面接は採用の優先順位づけを行う面接です。もう少し具体的に説明しましょう。

一次、二次面接でのふるい落としのポイントは?

まず、一次面接の段階では応募者は玉石混交の状態です。そのため「印象」や「コミュニケーション能力」をチェックして足切りが行われます。具体的には、「質問にきちんと答えられるか」「自分のことを論理的にわかりやすく伝えられるか」といったことが問われます。

二次面接では、応募者のスキル・能力のレベルはもちろんタイプ価値観を見極めて、「求める人物像とマッチするかどうか」が判断されます。

そのため、「人を見る能力」に長けた現場のマネージャーや人事担当者が面接官を務めます。二次面接を通過するのは、能力が高くマッチングも問題ないと評価された人たち。いわば、現場レベルでは「採用OK」と判断された人たちと言えるでしょう。

最終面接は「候補者の順位づけ」の場

そして、最終面接で行われるのが「採用の優先順位づけ」です。

すでに「採用しても問題ない」レベルまで絞り込まれたとはいえ、たとえば2人の採用枠に対して5人の最終候補者が残った場合、全員を採用することはできません。そこで、残った5人の能力を順位づけして採用の優先順位を決めるのが、最終面接の役割です。

つまり最終面接を突破するには、実力が拮抗した候補者の中でも高いレベルにある人材優先して採用すべき人材だと評価してもらえるようなアピールをしなければならないのです。

最終面接を突破するために必要な2つのこと

では、優先して採用すべき人材だと評価してもらうためには、何をアピールすればいいのでしょうか。

最終面接で面接官が見極めようとしているのは、候補者の「レベル感」と「志望度」の2つです。それぞれ説明していきましょう。

数字とエピソードで「レベル感」を伝える

まずレベル感についてです。たとえば肉食系の人材を求めている企業なら、最終面接まで残った候補者は全員が肉食系です。そこで問われるのが、肉食系といってもネコレベルなのか、ハイエナレベルなのか、それともライオンレベルなのかというレベル感なのです。

とはいえ、人に対する評価はペーパーテストのように絶対的な評価基準があるわけではありません。ですから、レベル感を見極めるのは非常に難しいものです。

そのため、適正な評価を得るには自分からレベル感を示す情報を伝える必要があります。むしろ、レベル感を示す情報を伝えられない人は落とされてしまうと言ったほうがいいでしょう。

レベル感がわかる情報とは具体的な情報のこと。具体的なイメージを持ってもらうために「数字」と「エピソード」を伝えることがポイントです。

レベル感を伝えるには? ポイント(1):「合格率○%」「○人中でトップ」など数字を使って説明する ポイント(2):具体的なエピソードを伝えて難易度を理解してもらう

たとえば難しい資格試験に合格したのなら、ただ「難しい試験でした」と言ってもレベル感は伝わりません。でも、たとえば「合格率○%の試験だった」と言えば、難易度のイメージを持ってもらうことができます。

同様にトップ営業だったら「○人中でトップでした」など、定量化できることは数字を使って伝えることが大切です。

また、「そこに至るまでにどんなトラブルや想定外の壁があったのか」「どうやってそれを達成したのか」といった数字に落とせない情報は、できるだけ具体的なエピソードを伝えて面接官に難易度を理解してもらうことが必要です。

自分の実績や能力を伝えるためにどのようにレベル感を表現したらよいか、本番までにしっかり考えておきましょう。

高い「志望度」を伝えて一歩抜け出す

繰り返しになりますが、最終面接に残る候補者は粒ぞろいで拮抗した能力の持ち主ばかりです。そこで頭ひとつ抜け出すために必要なのが、レベル感に加えて高い「志望度」を伝えることです。

能力の次に志望度が重視されるのは、成果が能力とモチベーションの掛け算成果=能力×モチベーション)で決まるからです。能力が高くてもモチベーションが低ければ高い成果は出せません。そして、このモチベーションに深く関わっているのが志望度の高さであり、志望動機の強さなのです。

強い志望動機があれば、当然、仕事に対するモチベーションも高く、高い成果を上げられるはずです。そして、仕事で厳しい局面に直面したときも投げ出さずに頑張ってくれるはずと会社は考えています。

ですから、たとえば能力では優劣つけがたい2人のうち、どちらか1人を採用して1人を落とさなければいけないといった局面では、志望度が評価に加算されることになるのです。

高い志望度を示すには、説得力ある志望動機を伝えることが大事です。志望動機は一次面接から繰り返し聞かれるものですが、最終面接での重みはまったく違うものと考えて、説得力ある志望動機を語れるよう準備しておきましょう。

最終面接で語るべき志望動機とは?

説得力ある「なぜ」が必要

最終面接で語る志望動機は、「どんな局面でもこの人なら逃げ出さずに力を発揮してくれるだろう」と面接官に感じさせるものでなければなりません。

そのために必要なのが、なぜその会社に魅力を感じたのか」を明確に伝えることです。それも表層的な理由ではなく、自身の価値観に根ざした理由が求められます。

自身の価値観に根ざした理由とは、たとえば「過去のこのような経験から、こうした価値観を持っているから」「これまで一貫してこういう考え方で物事を判断してきたから」といった過去の経験やライフストーリーに起因する価値観、つまり自分の中に深い根っこがある価値観と紐づいた理由のことです。

そのような説得力ある志望動機を語れてこそ、面接官は「それだけの思い入れがあるなら、どんな局面でも力を発揮してくれるはずだ」と評価してくれるのです。

価値観に根ざした志望動機の作り方については、下記の記事で詳しく説明しているので確認してください。

裏付けとなる「行動」を伝えよう

もうひとつ、志望動機に説得力を持たせる上で大切なのが「行動化」です。ここでいう「行動化」とは、価値観や考え方が行動に現れていることを言います。

たとえば、「本が好きなので出版社に入りたい」と言っている人が、どれくらい本を読んでいるかと聞かれて「月に2冊くらいです」と答えていては何の説得力もありません。

ですが、「月に30冊は読んでいます」などと答えられれば印象は大きく変わってくるでしょう。このように、価値観や志望動機の裏付けとなる行動を伝えることが、最終面接では非常に大きな意味を持っています。

「それでも入社したい」という覚悟を伝えよう

志望度を伝えるためにもうひとつ重要なのは、覚悟を伝えることです。

会社としてはミスマッチを避けたいので、「入社できればどこでもいい」という人を採用したり、入社後に「こんなはずじゃなかった」と思われたりすることを恐れています。

そのため最終面接では、候補者がその会社のことをきちんと調べて理解しているかという点についても問われます。

たとえば面接でよくある質問のひとつに「どんなことでもいいので何か気になること、不安なことはありませんか」というものがあります。実は、この質問には良い面も悪い面も含めて、候補者が会社のことを理解しているかを確認する意図があるのです。

このような質問に対して「何もありません」と答える候補者がいたら、面接官は「本当にうちの会社に入りたいと思っているのか」「良い面だけを見てバラ色の会社と思い込んでるんじゃないか」と不安を感じてしまいます。

この世に完璧な会社など存在しませんから、不安を感じていることを面接官に伝えたからといって、それがマイナス評価につながることはありません。むしろ、不安につながるようなマイナス面も知った上で「それでも入社したい」という覚悟を示せる人を採用したいと考えているのです。

ですから、会社に対して魅力を感じている点だけでなく、不安に感じることはないか、あるとしたらどんな点に不安を感じているのかも認識して、それでもその会社に入社したいかどうか、しっかり考えておく必要があります。

逆質問は本気度を伝えるチャンス

逆質問ではファクトを押さえた質問を

面接の終盤に「何か質問はありませんか?」と聞かれる逆質問は、志望の本気度を伝えるチャンスです。

逆質問のポイントは、ファクトを押さえた質問をすること。私の経験から言っても、入社の意思があって本気で何かを確かめたいと思っている人は、必ずファクトを押さえた質問をしてきます。

ファクトとは事実に基づいたデータや事象のことです。たとえば「女性が働きやすい組織です」とアピールしている会社があっても、それを裏付けるファクトがなければ本当に女性が働きやすいのか、働きやすいといってもどのくらいのレベルなのかはわかりません。

そこで本気度が高い人は、「女性の管理職の人数は?」「採用人数の男女比は?」といったファクトを確かめる質問をしてきます。逆に、漠然と「女性が働きやすい職場なんですか?」と質問する人がいたら、面接官は「本当に知りたくて聞いているの?」「何も考えていないのでは?」とマイナスの印象を持つことでしょう。

逆質問をしたら、面接官の回答にきちんとリアクションを取りましょう。女性管理職の比率を質問したなら、「思っていたより多いので驚きました」「意外と少ないですね。これから増やしていくのでしょうか?」と素直に感想や疑問を伝えるだけでも、真剣に検討しているという本気度が伝わります。

経営層には未来の質問を

最終面接は、役員や社長といった経営層と直接話せるチャンスでもあります。逆質問を聞かれたら、マクロな視点での質問や未来に対する質問など、経営層ならではの質問をしてみてください。

たとえば、新規事業に力を入れている会社であれば、新規事業の売上比率の推移を聞くのもいいでしょう。また、今後どれくらいの規模で新規事業に投資をしていく予定なのか、どんな事業展開を考えていて、そのためにどのような布石を打っているのかといった未来の話は、経営者にしか聞けないことだと思います。

熱意を伝えるだけでなく、経営者の目線や考え方に触れるという意味でも有意義な経験になるのではないでしょうか。

「この人を採用したら得する」と思わせるために

面接だけでなく転職活動全般に言えることかもしれませんが、特に最終面接では面接官に「この人を採用したら得する」と思わせなければなりません。そのためには、自分がその会社にどのように貢献できるのか」を伝える姿勢を持つことが大切です。

転職を考えるきっかけは、「給料が上がらない」「やりがいが感じられない」といった不満であることが大半です。

そのため「年収はどれくらい上がるのか」「やりがいある仕事を任せてもらえるのか」といった、自分がその会社から得られるものばかりに意識が向いてしまう人が少なくありません。

会社が採用を行うからには、その人に求めている能力や役割があるはずです。会社が求めることに対して、自分がどんな価値を提供できるのかを真剣に考えてみてください。

そのような意識を持つことが、候補者の中で一歩抜け出すだけでなく、自らの成長にもつながるはずです。

取材・文/藤田佳奈美(@yakou_chuu_

この記事の話を聞いた人

人事コンサルタント

曽和利光

株式会社人材研究所 代表取締役

京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート、ライフネット生命などで人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。著書に『人事と採用のセオリー』(ソシム)、『日本のGPAトップ大学生たちはなぜ就活で楽勝できるのか?』(星海社、共著)など多数。

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