文章例や注意点も紹介 「退職したい」とLINEで伝えてもいい?
上司と顔を合わせた状態で退職の意思を伝えるのは勇気がいる作業です。「対面は難しいからLINEを使って伝えたい」と考える人もいるかと思います。
そこでこの記事では、退職の意思を対面ではなくLINEで伝えてもいいのかどうか、法律・ビジネスマナーの両方の観点から解説します。また、LINEで伝える場合の方法や注意点、文章例なども紹介します。
「退職したい」とLINEで伝えてもいい?
退職の意向をLINEで伝えることが法的にセーフなのかアウトなのか、根拠とともに解説します。
法的には有効だけどマナーとしてはNG
上司にLINEで「退職したい」と伝えた場合、法律の観点から考えると退職の意思表示としては有効と見なされます。しかしビジネスマナーの観点からは、あまりおすすめできません。
民法上では「退職の意思を14日前までに伝えれば良い」と定められており、退職の意思の伝え方に関する決まりはありません。そのため、対面でなくてもLINEのメッセージを送って上司が読んだことが確認できれば、会社側に退職の意思を伝えたことになります。
しかし、LINEやメール、電話など、上司と顔を合わせない手段で退職の申し出をするのは、社会人のマナーとしてはNGです。本来であれば、退職したいという旨を上司に直接伝え、合意が得られた段階で「退職届」を提出するのがベターでしょう。
対面で直接伝えることが難しい場合はLINEでもOK
退職の意思は対面で伝えることが好ましいですが、パワハラを受ける危険性がある、肉体的・精神的に弱っていて出社できないなど、上司に直接会って伝えることが難しい場合はLINEで伝えても問題ありません。
ただし、普段の業務連絡の手段として、電話・メール・他のメッセンジャーアプリといったLINE以外のツールが使われている場合は、たとえ個人的に上司とLINEが繋がっていても普段使っている業務連絡ツールで退職の意思を連絡するべきです。
なぜなら、上司の立場からすると、プライベートで使うツールで「退職したい」と伝えられても、仕事の話として処理すべきなのか、私的な話として受け取ったほうがいいのか分からないためです。その結果、勇気を出してメッセージを送ったのに真剣に取り扱ってもらえず、退職手続きが始められないという事態になりかねません。
退職の意思が伝わるLINEメッセージの書き方【文章例】
LINEで退職の意思を伝えるときは、以下の3つの要素をメッセージに入れるようにしましょう。
1.「退職したい」とはっきり意思を伝える
LINEで退職の意思を伝えるときは、メッセージの序盤で「退職したい」とはっきりとした意思表示をすることが大切です。
「退職するか迷っている」「退職を考えている」など曖昧な表現を使うと、退職の連絡ではなく悩み相談だと勘違いされたり、意思がまだ固まっていないと思われて引き止められたりする可能性があります。
2.LINEで連絡した理由を述べてお詫びする
退職の意思をはっきり示した後は、本来直接伝えるべき内容をLINEで伝えざるを得なくなった背景について、説明してお詫びしましょう。LINEで連絡した理由について何も触れずにいると「社会人なら対面で直接伝えるべきだろう」と相手の怒りを買ってしまうかもしれません。
また、「LINEでやりとりするより直接話したほうが早いから」と出社を求められる可能性もあるため、対面で話すことが難しい事情があることを自分からきちんと伝えるようにしましょう。
3.退職の手続きについて指示を求める
「退職したい」という意思表示だけでは上司にどうしてほしいのかが伝わらないため、メッセージの最後は「退職の手続きで必要なことがあれば、このLINEで指示がほしい」として、上司に求めることを具体的に示しましょう。
メッセージを送った後の流れは、会社によってさまざまです。そのまま退職の意思が認められて具体的な退職日や有給消化の話になることもあれば、まず退職願を出すように言われることもあるため、まずはどのような方法で進めるべきか、上司に判断を仰ぎましょう。
LINEで退職の意思を伝える場合の注意点
LINEは対面と違って、退職の意思が上司に伝わったかどうか、確認しづらいのが難点です。
そのため、LINEで退職の意思を伝えるときは次の2点を注意するようにしましょう。
LINEで退職の意思を伝えるときの注意点
- メッセージを送った後は既読がついたか確認する
- トーク画面のスクリーンショットを保存しておく
メッセージを送った後は既読がついたか確認する
上司にLINEで退職のメッセージを送った後は、既読がついたかどうかを必ず確認しましょう。通信状況によっては、自分は送信したつもりでも相手に届いていないことがあります。
またLINEの機能上、相手が自分を非表示やブロックの対象に設定していてメッセージに気づいてもらえなかったり、メッセージを意図的に開かず放置する「未読無視」をされたりする可能性があります。
自分が送った退職のメッセージに既読がつくまでは、退職の意思は伝わっていないと考えましょう。
トーク画面のスクリーンショットを保存しておく
退職の意思表示をしたメッセージに既読がついた後は、上司とのトーク画面をスクリーンショットで保存しましょう。
スマホを紛失したり、LINEのアプリの誤作動が起こった場合にトークの履歴が消えてしまうリスクがあるためです。また、上司があなたの退職を防ごうとして意図的にトークルームを削除するかもしれません。
退職の意思を伝えた証拠を残すために、既読がついたときや上司から返信があったときは必ずトーク画面のスクリーンショットを残して、パソコンやUSBなどスマホ以外の媒体に画像を保存しましょう。
スクリーンショットを撮るときは、証拠として不十分な点がないよう、以下のポイントを意識してください。
〈スクリーンショットを撮るときのポイント〉
- 相手のLINEアカウントとトークの日付が見える状態で撮る
- トークが長くスクリーンショットの画像が複数になる場合は、話の流れが分かるようにトークの前後を少しずつかぶらせて撮る
【Q&A】LINEの返信がない場合は?出社を求められたら?
LINEで退職の意思を伝える場合によくある疑問をQ&A形式でまとめました。
メッセージを送るときの参考にしてください。
Q.上司から返信がこないときはどうする?
A.2日以上返信がない場合は改めてメッセージを送る
上司が忙しくてLINEを返信できていない可能性があるため、退職のメッセージに2日以上返信がない場合は改めてLINEで連絡をしましょう。
改めて送ったメッセージにも返信がなければ、電話やメールなど他の連絡手段に変えることをおすすめします。他の手段で連絡しても退職の意思を受け入れてもらえない場合は、さらに上の上司や人事担当者に電話・メール・LINEなどで相談しましょう。
それでも話が進まなかったら、配達証明付きの内容証明郵便で退職届を郵送する方法があります。
内容証明郵便とは「いつ、どのような内容の文書を、誰から誰あてに差し出したか」を郵便局が証明する制度で、会社あてに退職届を送ったことの裏付けになります。内容証明郵便だけでは「会社に退職届が届いた」ことの証明にはならないため、郵便物が会社に到着したことを証明する「配達証明」も付けるのがおすすめです。
Q.手続きなどを理由に出社してほしいと言われた場合は?
A.可能なら出社。難しい場合は郵送で対応可能か相談する
「退職届や会社への返却物を持参してほしい」「手続きの都合上、出社してほしい」など出社を求められた場合、可能なら出社することが望ましいです。しかし、どうしても出社できない事情がある場合は、上司や人事担当者に事情を説明して、書類のやりとりは郵送で対応できないか相談しましょう。
ただし、出社が難しい事情を伝えたにもかかわらず、会社に来るよう強要された場合、話し合いの場を設けて引き止めようとしている可能性がないとは言い切れません。
上司や会社の対応に不安を覚えたら、厚生労働省の総合労働相談コーナーや労働問題に強い弁護士に相談すると良いでしょう。
※総合労働相談コーナーについて詳しくは→全国の労働相談センターの案内|厚生労働省
Q.アルバイトならLINEで「退職したい」と送ってもいい?
A.アルバイトでも上司に直接伝えるのがマナー
アルバイトであっても正社員と同じように、本来は対面で退職の意思を伝えるべきです。
責任者と出勤のタイミングが合わない場合や体調が悪い場合、強い引き止めに合いそうで対面を避けたい場合など、やむを得ない事情があるときのみLINEを連絡手段の一つとして考えましょう。
退職の引き止めに合わないか心配だったら…
対面ではなくLINEで退職の意思を伝えようとしている方の中には、会社からの引き止めに不安を感じている方もいるかもしれません。
もし退職の引き止めにあったら、以下の記事で紹介している引き止めを穏便に断る方法を実践しましょう。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の監修者
弁護士
南 陽輔
一歩法律事務所
大阪市出身。大阪大学法学部卒業、関西大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。その後、大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立。誰もが利用しやすい弁護士サービスを心掛け、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行う。