中途採用に関わる383人に聞く 20代の転職者に求めたい能力、第1位は…
企業は20代の若手ビジネスパーソンに、どのような経験やスキルを期待しているのでしょうか?
転職Hacksでは、企業の中途採用担当者383人を対象に「20代の転職者に求めたい能力」についてアンケートを実施しました。
企業が求めている能力とその理由のほか、その能力が自身に備わっていることをアピールする方法やコツについて、20年以上にわたり転職支援に携わり、企業の採用戦略についても熟知している結城賢治さんに解説してもらいます。
※アンケートについて
- 方法:Webアンケート
- 期間:2023年3月8日~14日
- 対象者:過去5年以内に、自社の中途採用に携わったことのある日本全国の22歳以上の男女383人
- 集計に使用した指標:経産省が提唱する「社会人基礎力」の12の能力要素。
- ランキングの集計:社会人基礎力の12の能力要素のうち、20代の転職希望者に求めたい能力を3つ選んでもらい、最も求めたいものから3pt、2pt、1ptとし、回答者の人数と掛け合わせた。合算値が大きいものから降順で並び替えた
- 割合のデータ:社会人基礎力の12の能力要素のうち、20代前半と20代後半それぞれの転職希望者に求めたい能力を1つ選んだ人の割合
Q.20代の転職希望者に最も求めたい能力は?
今回実施したアンケートでは、経産省が提唱する社会人基礎力の中から、企業の中途採用担当者に「20代の転職者に求めたい能力」を選んでもらいました。
社会人基礎力とは「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」のこと。「主体性」「働きかけ力」「実行力」など、12の能力要素で構成されています。
このアンケート結果からまとめた、企業の中途採用担当者383人が選んだ「20代の転職者に求めたい能力ランキング」は、以下のとおりです。
最も多く票を集めたのは「実行力」(421pt)。2番目に多かった「柔軟性」(282pt)に100pt以上の差をつけての1位となりました。
3番目の「主体性」(265pt)は、「柔軟性」と僅差となっています。
4番目の「情況把握力」(203pt)と50pt以上の差がついていることから、企業の多くが上位3つの能力を求めている傾向が見てとれます。
転職支援のプロによるポイント解説
結城賢治さん
実行力は「自分の業務をやり遂げる力」と言い換えられます。すなわち、過去の業務経験すべてが実行力を伝えるエピソードになりうるということです。
また、企業が応募者の実行力を測るときには「目の前の課題をどのように乗り越えたのか」もあわせて確認したいと考えています。
例えば
- 顧客から自身の対応に指摘があったときに、すぐに会いに行って問題点を聞いた
- 顧客の業界の知識・専門用語を理解するために、関連書籍を読み漁った
などの経験があれば、企業は「この人は課題を解決するために自ら行動できそうだ」と感じるでしょう。
まずは、いままでの業務経験を振り返り、簡潔に説明できるように準備しましょう。あわせて、業務を通してどのような課題があり、解決に向けてどんな行動をしたのか、具体的なエピソードを考えてみてください。
Q.20代前半と後半で求められる能力に違いはある?
次に、転職希望者の年代によって求めたい能力の違いはあるか見てみましょう。
20代前半(20~24歳)と20代後半(25~29歳)の転職希望者のそれぞれについて、「最も求めたい能力」を1つずつ選んでもらったところ、どちらの年代でも1位~3位には同じ能力がランクインしました(1位:実行力、2位:主体性、3位:柔軟性)。
ただし、それぞれの割合には差が出ています。具体的に見てみましょう。
まず、1位の「実行力」は、20代前半(21.2%)よりも20代後半(23.5%)の転職希望者に求めたい能力として多く選ばれています。
逆に、2位の「主体性」と3位の「柔軟性」は、20代後半よりも20代前半の転職希望者に求めたい能力として選ばれる割合が高くなりました。
4位以降の割合は、20代前半・後半ともに10%以下で、上位3つの能力が特に重要視されていることが伺えます。
ちなみに、20代前半・後半で同じ項目を選んだ人は約35%(383人中136人)。3人に1人は「20代前半と後半で求めたい能力に違いはない」としていることがわかります。
転職支援のプロによるポイント解説
結城賢治さん
20代前半よりも後半で「実行力」を選ぶ人が増えるのは、企業が「成果」や「結果」をよりシビアに求めていることの表れだと思います。
ただ、その成果が本当に評価できるものなのかは、結果だけを見ても判断できません。
仮に「営業成績が1位」だとしても何人中の1位なのかによって評価は変わりますし、「資格試験に合格」といっても何人が受験して合格率は何%なのかといった情報がなければ、どれくらい難しい試験に合格したのか適切に評価することはできません。
このため、たとえば、所属しているチームの人数や、その中での役割、担当業務、目標達成率など、できるだけ数字を使って定量的・具体的に説明したほうがあなたの経験やスキルは適切に伝わるでしょう。
また、これは私個人の認識ですが、「主体性」や「柔軟性」は能力やスキルではなく仕事に向き合うスタンスだと考えています。
- 主体性…なにごとも自分ごととして取り組む姿勢
- 柔軟性…状況や場面に応じて自分なりの対応策を考える頭の柔らかさ
任された仕事を決まったやり方で、ただこなすだけではなく、自分なりの手法を考え、行動した経験があれば、主体性や柔軟性が伝わるのではないでしょうか。
Q.20代後半で特に求められる能力とは?
転職希望者の年代によって求めたい能力の違いについて、さらに詳しく見てみましょう。
アンケート結果では、20代前半と20代後半の転職希望者に求めたい能力の1~3位は共通しているものの、4位以降は異なる項目が並びました。
特に注目してほしいのは4位の結果です。20代前半は「情況把握力」、20代後半は「課題発見力」と、一見その違いがわかりにくい能力が並んでいます。
この2つの能力の違いから、企業がそれぞれの年齢層にどんな力を期待しているのか読み解くことができます。
20代前半の4位にランクインしたのは「情況把握力」です。情況把握力とは、現状を正しく把握する力のこと。若手層である20代前半には、まずは所属する職場やチームで掲げる目標や、目標達成に向けて取るべきアクションを適切に理解する力が求められていると言えそうです。
対する20代後半の4位は「課題発見力」で、20代前半では7位となっています。中堅層になる20代後半では、自分や所属する職場やチームの現状を高い視座から俯瞰して、そこにある課題を明らかにする力が求められていると言えます。
転職支援のプロによるポイント解説
結城賢治さん
アンケート結果からは、20代前半の転職希望者に比べて、20代後半の転職希望者がより多く求められる能力として「実行力」「課題発見力」「ストレスコントロール力」の3つがあげられます。
この3つは、企業が次期リーダー候補となりえる20代後半の若手ビジネスパーソンに求めたい能力だと言えるでしょう。
「課題発見力」はその名の通り課題を発見する力ですが、その力にプラスして自分だけにとどまらず組織全体を客観視できるかどうかが大切です。
自身に実行力と課題発見力があることをアピールするには、チームのあり方やメンバーの行動などに課題意識を持ち、その課題を解決するための何かしらのアクションを起こした経験を伝えるといいでしょう。
また「ストレスコントロール力」も人の上に立ち、関わる人が増えるにつれて重要視される力です。
この力はストレスがかかる場面や状況へ対応する力のこと。たとえば経営層やマネージャーの前でプレゼンする機会や、部下となるメンバーに課題を伝える経験など、強いストレスやプレッシャーがかかる場面を経験してきたことを伝えることができれば、ストレスコントロール力が備わっていそうだと感じてもらえるでしょう。
あなたの強みは?過去の経験を振り返ろう
「実行力」や「主体性」など能力や強みは、それを表す過去の経験やエピソードがあってこそ伝わるもの。
企業に納得感を持って理解してもらうために、過去の業務経験から課題解決に向けた行動や、そのときの仕事に対する自分自身の考えや価値観などを振り返り、言語化しておくことが大切です。
▼キャリアの棚卸しのヒント
自分一人で過去の経験を棚卸しし、強みを言語化するのが難しいという場合は、転職エージェントに相談するのも一つの方法です。
あなたの能力やスキルを客観的に評価し、マッチする企業を見つけてくれるでしょう。
▼転職エージェントを使いこなすコツは…
(作成:転職Hacks編集部 柴田栞)
この記事の話を聞いた人
キャリアアドバイザー
結城 賢治
株式会社クイック 最高人事責任者/上席執行役員
株式会社クイックに新卒入社。20年以上にわたりキャリアアドバイザーとして転職支援に携わり、企業の採用戦略にも精通している。コーチングの手法を取り入れ、求職者と伴走しながら個人の可能性を引き出すキャリアコンサルティングが強み。求職者からの信頼も厚く、転職後のキャリア相談の依頼も多い。現在は最高人事責任者として、自社の採用・育成・評価制度を牽引。新卒・中途採用の面接官も務める。キャリアコンサルティング技能士の資格も保有している。