成功させるコツは? 介護職からの転職、介護職への転職
人手不足で引く手あまた、未経験者でも転職しやすいと一般的に思われている介護業界ですが、そのイメージは本当なのでしょうか。
ここでは、介護職から転職したい方や、介護職に就きたい方へ向けて転職のコツや志望動機例などをご紹介します。
介護業界での転職を成功させるコツ
主に現在、介護職として働いている人向けに、もっと良い環境で働けるよう転職を成功させるコツをご紹介します。
おすすめは業界内転職
介護業界は人手不足のため、現在の介護職からの転職を考えている場合は、スキルを生かせる業界内転職がおすすめです。
逆に、介護職から他業界への転職はハイリスク。介護のスキルは他業界で生かしにいため就職が難しく、就職できても今より給与ダウンする可能性があるためです。それでも「他業界に転職したい」と思う方は他業界でも役立つマネジメントスキルを身に付けておくと転職しやすくなるでしょう。
介護職の8つのキャリアパターン
転職活動を本格的に始める前に、まずは転職を通じてどうなりたいかを明確にすることが大切です。
ここでは、転職の方向性を考える上で役立つ、働き方のパターンを8つご紹介します。
(1)日勤だけのデイサービスやデイケアで働く
「子どもが生まれた」「年齢を重ねて夜勤がつらくなってきた」などの理由で夜勤のない職場で働きたい場合は、デイサービスやデイケアに転職する方法があります。また、会社の時短勤務制度を利用する、パート社員として働くといった方法であれば転職しなくても働き方を変えることは可能です。
(2)生活相談員になる
介護施設で入所相談から生活指導までを幅広く請け負う仕事です。なるためには、社会福祉士や精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格などの資格のいずれか、もしくは特定の施設でのケアプラン作成経験などが必要です。
(3)ケアマネジャーの資格を取得してケアマネ業務を行う
要介護の方のケアプランを作成するケアマネ業務に役立つ資格です。取得するには、看護師や社会福祉士など国家資格に基づく業務経験5年か、生活相談員や支援相談員など支援業務経験5年が必要になります。
(4)訪問介護のサービス提供者(サ責)になる
訪問介護事業所におけるリーダーです。なるためには介護福祉士の資格を持っている、実務者研修を修了している、ホームヘルパー1級を取得している、介護職員基礎研修を修了しているなどの条件を満たす必要があります。
(5)施設の介護長、施設長になる
20代半ばで副主任、30代前後で主任、30~40代で介護長、40代で施設長になるのが理想的です。ただし、ポストが限られているため新規オープンの施設に介護長や施設長として転職するという方法もあります。
(6)看護師の資格を取得して看護師になる
実は、「介護職ではできない専門的なケアができるようになりたい」と考えて看護師の資格を取得する方も多いです。仕事を続けながら資格取得に励む方もいれば、いったん辞めて看護学校に通い、看護師として介護業界に戻ってくる方もいます。
(7)作業療法士、理学療法士、言語聴覚士になる
近年ニーズが高まっているリハビリ系の職種です。夜間の専門学校もあり、介護職を続けながら資格取得を目指す方もいますが、学費としてある程度の資金が必要です。
(8)事業所を立ち上げる
理想の介護を提供したいと考えているなら、自ら事業所を立ち上げるという手もあるでしょう。ただし、事業を成功させるには、ある程度の資金力と人材集めが必要になり、適確にニーズを把握する力も求められます。
ブラック施設を見分ける6ポイント
介護業界では施設の運営方針に不満を感じて辞める方も多く、転職するなら始めから良い施設に就職したいものです。ここでは、ブラック施設を見分けるポイントをご紹介します。実際の雰囲気を確かめるために、必ず施設見学に行きましょう。
※一概には言えないケースもあります。あくまでも参考程度にしてください。
- 求人を頻繁に掲載している
- 給与がほかの事業所より不自然に高い
- うたい文句に内容がなく、「夢」「感謝」「創造」などばかり
- フロアに異臭が漂う、利用者さんが「臭う」など衛生管理が行き届いていない
- 利用者さんの部屋が殺伐としていて、写真や植物などもない
- スタッフの表情が暗い、口調が荒い
より一般的なブラック企業の見分け方について知りたい方はこちらをご覧ください。
【コラム】未経験や40代で介護職を新たに始めたい方へ
介護業界では「未経験でもできる?」「40代から介護職を始めたいけど……」という声もよく聞かれます。
介護業界は人手不足のため未経験や40代以上の人でも転職は可能ですが、就職時・就職後に苦労することも。転職前に押さえておきたいポイントをまとめました。
- ポイント1
求人には「経験・年齢不問」と書いてあっても、将来性を鑑みて若い応募者が優先的に採用されるケースがある→40代なら:
「この人なら40代でも採ってもいい」と面接官に思わせられるような明確な志望動機を伝える→未経験なら:
資格を取って知識・熱意があることをアピールする - ポイント2
年下の職員の下で働くことになる→年齢にこだわりすぎず、謙虚に学ぶ姿勢を持つ
- ポイント3
体力的に仕事がきつい可能性がある→夜勤のない施設を選ぶか、時間帯を調整しやすいパート職員として応募する
介護職の志望動機と面接のコツ
ここからは、実際に介護職を志望している方に向けて、具体的な志望動機例や面接のコツ、おすすめの転職サイトをご紹介します。
志望動機の4つの例
志望動機の例を、介護業界経験者と未経験者のパターンに分けて4つご紹介します。さまざまな年齢・経験の方にあてはまる例をご紹介しますので、自分に近いパターンを参考にしてください。
経験者
育児が一段落したのを機に、以前と同じ介護職に就職したいと考えました。
前職の介護付き有料老人ホームで4年間、さまざまな介護度の方を担当した経験を生かして、新しい職場ではその方に合ったケアを提供したいと考えております。
また、貴社は研修制度が充実している点にも魅力を感じています。研修や業務を通じて自己研鑽に努めたいと思っています。
特別養護老人ホームに3年間勤務しながら、スキルアップのためにケアマネジャーの資格を取得しました。
また、認知症ケア学会に所属して認知症そのものや地域包括ケアに関する専門知識を身に付けました。地域と連携しながら認知症ケアも行っている貴施設で、資格と得た知識を生かして利用者さんが住み慣れた地域でその人らしく生活できるようなお手伝いをしたいと考えています。
未経験者
祖母が4年前に介護施設に入所し、何度か訪問するうちに介護の仕事に興味を持つようになりました。
当時は介護といえば身体介助というイメージがあったのですが、祖母が運動療法や食事管理も行うことで元気になっていく姿を見て、リハビリ、栄養管理、身体のケアなどを総合的に行う貴施設で働きたいと思い、応募しました。
介護業界は未経験ですが、前職のアパレル系の販売職で培ったコミュニケーション能力を生かして頑張りたいと思います。
以前は食品会社に勤めていましたが、人の健康に直接関わる仕事に魅力を感じ、転職を決意しました。
ボランティアとして貴施設を訪れた際には、職員の方々の細やかな対応に心を打たれ、是非ここで働かせていただきたいと感じました。
前職では管理職としてマネジメントや人材育成にも関わっていたため、そのスキルを生かしながら介護の知識を身に付け、いち早く貢献できるよう精進します。
面接でよく聞かれる質問
ここでは、介護業界の面接でよく聞かれる質問とその回答例をご紹介します。
Q1「前職を辞めた理由は何ですか?」
同じ理由で辞めるのでは、と面接官に思われてしまうためネガティブな理由は伝えるべきではありません。
「前職での経験を生かして次の職場ではどう働きたいか」を前向きな答え方で伝えると良いでしょう。
Q2「なぜ当社を希望しましたか?」
面接官はこの質問で、あなたの熱意やスキルをチェックしています。×の例では簡潔すぎるため、事業所のホームページを確認するなどして、事業所の運営方針や業務内容を理解した上で応募していることをアピールしましょう。
Q3「これまでの経歴を教えてください」
×の例では簡潔すぎるため、具体的な資格や得たスキルを説明しながらあなたの成果や強みをアピールしましょう。
Q4「いつから勤務できますか?」
面接官は入社の時期確認と本気度を測る目的で聞いているため、なるべく具体的な日時を答えることがポイントです。
在職中などで日時が確定できない場合は、就業規則を確認し、引き継ぎ期間を計算した上で以下のように答えましょう。
「在職中で退職手続きと業務の引き継ぎに1ヶ月半はかかるため1ヶ月半後とさせていただきたいのですが、御社がご希望になっている日時より長すぎるという場合は、時期を早められないか上司に交渉してみます」
Q5「残業や夜勤は大丈夫ですか?」
デイサービスや日勤のみの訪問介護でない限り、多くの介護施設で残業や夜勤があります。
難しい方もまずは「できます」と述べ、緊急の場合の代替案を伝えて残業に対応できる体制を整えていることをアピールできると好印象です。
実際に働いてからは予定の調整を入念に行った上で、突発的に休まなければいけなくなった場合は、ほかの人が休んだ際に精一杯フォローすることを心がけましょう。
Q6「ほかに何か聞きたいことはありますか?」
何もない、という答えでは入社の意欲がないように思われてしまいます。また、待遇や給料に関する質問ばかりでは自分の損得しか考えていないように映るため、避けた方が良いでしょう。
転職前に知っておきたい介護職の実情
介護業界で働き続けるか迷っている方も、未経験で介護業界に挑戦する方も知っておきたい、介護職の実情をご紹介します。
辞めた理由1位は「人間関係」
「平成30年度 介護労働の現状について(公益財団法人介護労働安定センター)」によると、介護職を辞めた理由の1位は「職場の人間関係に問題があったため」(22.7%)、2位は「他にいい仕事・職場があったため」(17.6%)でした。
介護以外の全業界を含めた統計では1位が「結婚・出産・妊娠・育児のため」(26.4%)、2位が「自分の将来の見込みが立たなかったため」(18.1%)となっており、介護業界は他業界に比べてより人間関係に悩む方が多いのかもしれません。
さらに辞職理由を詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
給与額が見直されつつある
収入の低さを嘆く声が聞かれることも多い介護業界ですが、給料に関しては今後少し期待できるかもしれません。「令和元年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)」によると、介護職員の給与は24万4,500円。
全体の平均賃金30万4,000円(男女計)と比較すると賃金差があることが伺えます。
現在、人手不足状態の介護職員を増やすために、国によって「処遇改善加算」という取り組みが行われています。
処遇改善加算とは、簡単に述べると特定の要件を満たした事業所に支払われるお金のことです。
※具体的な金額や加算の有無は事業所によって異なるため、気になる方は事前に求人情報の諸手当の欄を見るか、転職コンサルタントを通じて確認してください。
介護業界で働くメリット・デメリット
介護業界の実情を簡単に説明しましたが、ここでは介護業界で働くメリットとデメリットを3つずつご紹介します。介護職を続けるか悩んでいる方、始めるか迷っている方は参考にしてください。
メリット3つ
- ニーズがあるため就職しやすく、職場を移りやすい
- 資格や技術を生かして働くことができる
- 利用者さんと密に関わり合い、人の役に立つことでやりがいを感じられる
デメリット3つ
- 人間関係のトラブルが起きやすい
- 仕事内容のわりに給料が安い
- 身体介助や夜勤など身体的負担が大きい
介護職は人を相手にするため人間関係の軋轢が生じやすく、命を預かるという意味で責任も大きいですが、人と直接対面するからこそ大きなやりがいを感じられる瞬間もあるようです。
まとめ
介護業界は転職しやすい業界ですが、安易に転職すると後で後悔しかねません。
業務経験や取得した資格を通じてどんな働き方を実現したいのか、家族や趣味とどう両立させていくのかなど、将来のプランも考えて転職活動を進めましょう。