後悔しないために知っておきたい Uターン転職のリアル
「都会から離れてゆとりのある生活がしたい」
「故郷にいる家族が心配。一緒にいたい」
「地元に貢献する仕事がしたい」
など、理想のUターン転職を実現させるには、きちんと情報収集し、自分のキャリアや人生設計をよく考える必要があります。
この記事では、Uターン転職で失敗しないための基礎情報や、失敗例から学ぶポイントをご紹介します。
Uターン転職の基礎知識
そもそもUターン転職って?
Uターン転職とは、生まれ育った地元を離れて都会で仕事をしていた人が、地元に戻って転職すること。
地元に戻る理由は、自分の生活を変えたい、家業を継ぎたい、など人によってさまざま。地元にいる家族の介護が理由になる場合も多くなってきています。
どの場合にも言えるのは、仕事だけではなく生活も変わるため、人生の大きな転機になるということ。良くも悪くも、その後の自分の人生を考える機会になるでしょう。
Iターン・Jターンもある
「Iターン」「Jターン」も、Uターンと同じように「地方に移って働く」ことです。
▼Iターンとは・・・
もともと都会で生まれ育ち、仕事をしていた人が、地方に移って働くこと。
▼Jターンとは・・・
地方出身者が都会で就職して働いた後、生まれ育った地元とは異なる地方で働くこと。
Uターン転職の魅力
- 自然に囲まれ、ゆとりある暮らしができる
- 都会よりも生活費が抑えられる
- 通勤ラッシュがない
- 家族の近くにいられる
- 慣れ親しんだ土地で生活できる
- 地元に貢献する働き方も選べる
地方自治体のUターン支援施策
上記のような「田舎暮らし」ならではの魅力に加え、地方自治体が行っているUターン者の支援施策もメリットのひとつ。住宅の確保や子育て支援、引越し費用の負担など、自治体ごとにさまざまな支援施策があります。
また、全国的なITインフラの基盤が整い「都会でなくても仕事ができる」という環境ができてきたこともあり、業種によっては地方に拠点を置く企業が増えています。
例えばIT、Web関連企業はその最たる例。もちろん都会よりも企業数・求人数が少ないという前提はありますが、職種によってはゆたかな生活環境の中で最先端の仕事ができる場合もあるかもしれません。
Uターン転職者ってどれくらいいるの?
「社会保障・人口問題基本調査第8回人口移動調査」(2016年)によると、Uターン者(出生県から県外に移動した県外移動者のうち、再び出生県に戻った人)の総数全体に対する割合は20.4%。
前回2011年の20.5%とほぼ同水準であることがわかります。
Uターン転職理由ランキング
Uターン転職経験者が地元に帰ることを決めた理由を、マイナビ転職が聞いたアンケート結果がこちら。
▼Uターンを希望した理由
第1位:自分にあった生活スタイルや趣味を活かした生活がしたいから (32.0%)
第2位:家庭の事情 (24.8%)
第3位:勤めていた会社に不満があるから (23.8%)
第4位:地元の方が生活環境が充実するから (22.6%)
第5位:地元の方が経済的に楽だから (21.2%)
第6位:地元は自然環境が豊かだから (20.2%)
第7位:通勤が楽になるから (19.2%)
※出典→Uターン転職に関する実態調査(マイナビ転職)(Uターン転職経験のある20~39歳の男女500名が対象)
このアンケートの対象者である20~30代では、都会とは違うゆとりある生活を求めてUターン転職を決意した人が多いようです。
後悔しない!Uターン転職でよくある失敗と注意すべきポイント
Uターン転職を成功させ、満足のいく仕事・生活ができている方はたくさんいますが、その逆の事例ももちろんたくさんあります。
あとで後悔しないために、よくある失敗例と考えておくべき注意点を確認しておきましょう。
仕事に関する失敗3パターン
1下調べをきちんとしないままに地元に戻ってしまったら、希望する求人が全くなかった
ここに注意!
都会よりも求人は少ない。先に仕事を探すのが基本
人口の少ない地方では、都会に比べて企業の数が少なく、当然ながら求人数も少ないです。
Uターン転職の場合、実家など生活の拠点は確保できる場合が多いため、「とりあえず帰る」という選択をしても大丈夫と思うかもしれませんが、「帰ったはいいものの希望の仕事が見つからない」という危険は大いにあります。
まずきちんと情報収集し、地元の状況を把握した上で、転職の目処が立ってから動くのが得策です。
2これまでの実績や学歴もあるのでキャリアには自信があったが、どこにも採用されなかった
ここに注意!
キャリアの評価基準が都会と違うことを把握する
地方の企業では、高学歴や仕事での実績、高キャリアがむしろマイナスに働くことがあります。
とくに中小企業やベンチャー企業では、高学歴でキャリアもあるいわゆるエリートは「部下として扱いにくいのでは」「オーバースペックなのでは」と判断され、敬遠されることも。
もちろん、これまで積んできた実績を卑下したり、隠したりする必要はありません。
ただ、上記のように都会の企業とは考え方が違うということを念頭に置いて、伝え方を工夫しましょう。
- 実績をすべてアピールするのではなく、その企業で活かせるポイントをピックアップする
- 地元に貢献したい思いを伝えてUターンへの本気度をアピールする
3どんな仕事でもいいと思って転職したが、仕事内容や社風が合わずに結局辞めてしまった
ここに注意!
事前に企業の情報収集をし、できるだけ直接確かめに行く
まず大前提として、Uターン転職であっても、転職の第一歩は、どんな仕事がしたいのか・どんな働き方がしたいのかをよく考えることです。
Uターン転職の場合、生活の変化に注意が行きがちですが、だからといって仕事を適当に決めてしまうのは失敗のもと。
また、企業の風土や文化も都会とは違う場合があるので、その点も踏まえてできる限り情報収集をしましょう。知人のツテや縁故での転職が決まっていたとしても、入社を決める前に会社を訪問し、直接自分の目で見ておくべきです。
生活に関する失敗2パターン
1年収が下がっても生活費が低いから問題ないと思っていたが、意外と生活が苦しくなった
ここに注意!
その地域の生活スタイル・生活費の目安を確認しておく
年収が下がることは把握していても、地方なら生活費が安いから大丈夫・・・と安心するのは危険です。
地方では家賃などの住居費は安いものの、実は、それ以外の生活費は都心とあまり変わりません。
また、都心部では公共交通機関が発達しており交通費が安く抑えられますが、地方に行けばいくほど交通網は未発達で、移動には自家用車が必要だったり、公共交通機関を使うと逆に交通費が高くなったりすることも。
昔の記憶や「なんとなく地方は生活費が安そう」というイメージだけを信じるのではなく、今の環境や生活コストをきちんと確認しておきましょう。
また、地方自治体では、転入を促進するための制度として、転入支援金、住宅補助、教育費支援など、さまざまな施策を実施しています。自分の地域で活用できる制度を調べてみましょう。
▼参考:各都道府県の平均年収
厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」(平成30年)によると、各都道府県の平均年収では東京都が622万2900円でダントツの1位。
以下4位までは神奈川県、愛知県、大阪府と大都市が占めており、それ以下の道府県になると平均年収は500万円以下です。
2家族を連れてUターンしたが、暮らしてみると「思っていたのと違った」と不満が出た
ここに注意!
「なんとなく快適そう」というイメージだけではなく、収支・生活スタイル・教育環境なども具体的に共有しておく
家族やパートナーがいる場合、生活の変化を共有し、納得を得るのは大前提ですが、「田舎住まいってなんとなくよさそう」というイメージだけで移住を決めるのは失敗のもと。
家族がその地域のことを知らない場合は、とくに配慮が必要です。前述のように生活スタイル、コストなどが具体的にどうなるかを確認し、シミュレーションすることが重要です。また、子どもがいる場合は、教育環境や教育機関についても気を配りましょう。
他にも、それぞれの地域ごとに特有の文化や状況があります。
昔はなじみのあった土地でも、しばらく離れていれば状況は変わるし、情報はつかめないものです。
知っている土地だからこそ安心しがちですが、あとから後悔しないためには事前の情報収集と準備が何よりも重要です。
なお、自治体によっては、移住前に暮らしを体験できる「体験移住」の制度を設けているところもありますので、不安がある場合は活用してもよいでしょう。
▼体験移住制度の例
富山県南砺市(体験住宅に一泊1000円で最大1ヶ月滞在)
鹿児島県奄美大島(フリー滞在プログラム、移住体験ツアーなど)
山口県下関市(宿泊料は無料。利用期間1泊〜4泊5日まで、利用人数1〜5名まで)
※現在は制度が廃止されている場合もあります。詳細は各自治体にお問い合わせください。
Uターンでの転職活動のポイントと方法
転職活動のポイント
地方の求人数は都会よりも少ないため、希望通りの仕事が見つかるかどうかは活動の仕方やタイミングが大きく影響します。
また、地方ごとに強い産業があるため、それ以外の業種を希望する場合は極端に求人数が少なくなることも多くあります。
そのため、ポイントは2つです。
求人が出るタイミングを逃さないこと
地方の企業は中小企業が大半です。募集する人数が少ないので、求人が出てもすぐに枠がうまってしまったり、ツテやコネで決まってしまうことも。希望に合う条件があったらすぐに動きましょう。
様々な手段を組み合わせて可能性を広げること
求人数が少ないので、チャンスを逃さないようにしておくことが必要です。
現地に足を運んで転職活動をするのは時間も費用もかかります。効率よく進めるためにも、都会にいても活動できる手段をうまく使って情報を集めましょう。
また、どの場合も、決める前には必ず直接企業に行って自分の目で確かめることは必須です。ある程度情報収集ができたら、自ら足を運び、判断しましょう。
そのためには交通費などの資金も必要になりますので、Uターン転職の活動をすることを決めたら、なるべく早く準備を始められるとよいでしょう。
転職活動の流れと注意点
1求人情報の収集
地元の求人情報を集めるためには、さまざまな方法があります。
自治体ごとのサポート情報やハローワークのほかにも、求人サイトやエージェントに登録したり、知り合いの人脈をあたったり、自分に合った方法で探しましょう。
その場合、どれかひとつに絞るのではなく、いろいろな手段を組み合わせて行うのがベター。地方は求人の絶対数が少ないので、チャンスはできるだけ広げておくべきです。
次の項目で、それぞれの方法について詳しく説明しますのでそちらもご参考ください。
2選考~内定
地方の企業の選考も、都会と同じく平日に行われることが多いです。そのため、面接を受ける場合は有給をとるなどの調整が必要になります。
また、二次選考、三次選考と複数回の面接がある場合も。交通費などの費用は基本的には自己負担になるため、事前にそのための活動資金を確保しておきましょう。
ただ、「ぜひ来て欲しい」と思う人材に対しては、企業が費用を負担してくれる場合もあります。自分から言い出しにくい場合は、エージェントに相談するのもひとつの手です。
3現職の引継ぎ、退職
転職先が決まったら、現職を退職する手続きを。
退職に際しては、就業規定によりますが少なくとも2週間前には申し出ることが必要です。
また、状況によっては退職交渉にかなり長い期間がかかる場合もあります。選考が進み、ある程度Uターン転職の目処がつくまでには、退職のための準備を始めておくのが得策です。
退職に際しては、以下の記事も参考にしてください。
4引越し、移住
あらかじめ移住先が実家などで決まっている場合以外は、住む場所を探す必要があります。
自治体によっては、住居自体を無償で提供していたり、Uターン者のために優遇したりする制度もあるので調べてみましょう。
引越しに際しては、さまざまな手続きがあります。一度移住してしまえばなかなか都会に戻ってくることはできなくなるかもしれません。なるべく早めに準備を進め、抜け漏れがないようにしましょう。
求人探しの5つの方法
地方自治体ごとのUターンサポート情報を探す
各自治体では、Uターンをサポートする情報を発信しています。
都道府県ごとのWebサイトでUターン支援制度の説明や求人も見られるので、手っ取り早く情報収集ができます。
都会に事務所を持っている自治体も多くあります。直接詳しい話を聞ければよりタイムリーで具体的な情報が得られるので、足を運んでみてもよいでしょう。
また、定期的にU・I・Jターン希望者のためのフェアや説明会も行われています。その地方の企業と直接接することができるので具体的な転職のイメージが沸きそうです。
地方の求人情報を掲載している求人サイトに登録する
全国の求人を扱っている求人サイトや、その地方に特化した求人サイトなどに登録して求人情報を探します。まずはUターン先の地域の求人を扱っているかどうかを検索し、複数のサイトに登録しておきましょう。
また、地方ごとに強い産業があるため、それ以外の業種・職種が希望の場合はなかなか見つからない場合も。希望する求人が出るのを待つなら、タイミングを逃さないよう、継続してチェックする必要があります。
地方に拠点を持つ転職エージェントに相談する
転職エージェントに登録してサポートを受ける場合は、Uターン先の地域に拠点を持っているかどうかをまず確認しましょう。大手であっても、その地域には拠点がなく、サービス対象外の場合もあります。
転職エージェントの中にはUターン転職に特化したサービスを行っているところもあります。Uターン転職の専門的なアドバイスがもらえるのはメリットといえるでしょう。
また、ある程度の規模の都市であれば、その地域だけでサービスを展開する転職エージェントがあることも。その場合、まさに地元で活動しているので、地域の環境や生活の生の情報が得られます。
⇒Uターン転職特化型転職エージェント:リージョナルキャリア
ハローワークで探す
ハローワークのインターネットサービスで求人を検索することができます。業種・職種にこだわらず幅広く探したい場合に適しています。
ただし、ハローワークに求人募集を出している企業は中小企業が多く、地方では第1次産業農業・第2次産業の求人が多いという特徴があります。それ以外の業種・職種を希望するなら、他の手段と組み合わせて利用するのが得策です。
地元の人脈(ツテ、コネ)を使って探す
生まれ故郷ならではの転職活動の方法として、「ツテ」「コネ」があります。
転職する本人の人脈だけでなく、ご両親や祖父母、友人など、様々なつながりが転職のチャンスになるかもしれません。
この場合、地方ならではの人との濃いつながりがメリットでもあり、デメリットにもなります。
▼メリット
- 希望が伝えやすい
- 人となりなどの見えない部分も評価してもらえる
- つながりがあるからこそのアンオフィシャルな仕事が紹介してもらえる可能性も
▼デメリット
- 断りたい場合、断り方や断った後の関係性に配慮が必要になる
- 入社後、社内の関係性にも「ツテ」「コネ」の影響が出る場合も
- 入社後辞めたくなった場合、辞めにくい
ツテ・コネで転職する場合にも、安易に入社を決めてしまうのはNG。必ず決める前に面談したり、会社に行って自分の目で「職場としてどうか」「仕事を一緒にする相手としてどうか」を見極めましょう。
事前の確認をせず入社後に後悔することになれば、しがらみが残ってしまいます。
Uターン転職に役立つ情報サイト
各都道府県・自治体の暮らしや移住のサポート情報、既に移住した人の事例など、自分の地元自治体の情報を探せるサイトをご紹介します。
- ふるさとSearch (国土交通省 国土政策局)
国土交通省 国土政策局が、都道府県・市町村の情報をまとめています。
都道府県が運営するUIJターンについてのポータルサイトと、UIJターン・定住の促進に取り組む市町村の情報が掲載されています。 - ニッポン移住・交流ナビ JOIN(一般社団法人 移住・交流推進機構)
Uターン、Iターンなどで地方への移住を考える人に向けたポータルサイト。
自治体ごとの移住支援の制度や、移住した人の声など、参考になる情報がまとまっています。 - iju info/移住インフォ 移住情報(全国農業会議所)
「農業」「林業」「漁業」「農林漁業」を仕事にしたい人向けフリーペーパーのWeb版。
Uターンして上記産業に転職した人の紹介や、I・J・Uターン農林漁業就業相談窓口の紹介も。
おわりに
Uターン転職は、人生の大きなターニングポイント。その先の生活が充実したものになるかどうかは、事前の活動にかかっているといっても過言ではありません。
これを良いきっかけとしてキャリアや人生をロングスパンで考えてみるだけでも、きっと無駄にはならないはずです。