遅刻や有給休暇の場合どうなる? 皆勤手当とは

皆勤手当とは、どんな条件で支給される手当でしょうか?

この記事では、皆勤手当が支給される具体的な条件や、似た内容の手当である「精勤手当」との違い、支給額の相場などをご紹介します。

皆勤手当とは

欠勤しなかった場合に支給される手当

皆勤手当とは「所定の期間に1日も欠勤しなかったときに支給される手当」のことです。

月給制の場合は「皆勤手当の算定期間=給料の算定期間」となるケースが多く、欠勤しなかった月の給与に皆勤手当の金額が上乗せされます。

なお皆勤手当は、法律で支給が義務付けられている手当(法定手当)ではないため、手当があるかどうかは企業によって異なります。厚生労働省の就労条件総合調査(2020年)によると、皆勤手当・精勤手当などがある企業は25.5%でした。企業規模が小さいほど、これらの手当を支給している企業割合が高いようです。

また、支給金額や支給要件も企業によって異なります。くわしくは企業の求人票や雇用契約書、就業規則を確認しましょう。

皆勤手当の相場|いくら支給される?

厚生労働省の就労条件総合調査(2020年)によると、皆勤手当の平均支給額は月9,000円でした(精勤手当、出勤手当などを含む)。

企業規模が小さくなるほど、支給金額が高くなる傾向があるようです。最も金額が高かったのは、従業員数30~99人の企業で月1万1,200円、最も低かったのが従業員数1,000人以上の企業で月6,400円でした。

皆勤手当の支給額(精勤手当・出勤手当などを含む)従業員数1,000人以上:6400円。300~999人:7600円。100~299人:7900円。30~99人:11200円。平均:9000円。

※出典:厚生労働省「就労条件総合調査(2020年)

精勤手当との違いは?

皆勤手当が「無欠勤のときに支給」されるのに対して、精勤手当は「無欠勤もしくは欠勤が少ない場合に支給」される手当です。二つをまとめて精皆勤手当と呼んでいる企業もあります。

  • 皆勤手当…「無欠勤のときに支給」される
  • 精勤手当…「無欠勤もしくは欠勤が少ない場合に支給」される

「欠勤日数が何日までなら精勤手当が支給されるか?」など、くわしい支給要件は企業によって異なるので、就業規則を確認しましょう。

Q. 遅刻・早退や、半日休んだ場合は支給される?

A. 会社の規定による

遅刻・早退した場合や、半日休んだ場合に皆勤手当が支給されるかどうかは、その企業の就業規則によって異なります。

以下のような支給要件が定められていないか、就業規則を確認しましょう。もし記載が無ければ、上司や総務の担当者に確認してみましょう。

〈支給要件の記載例〉

  • 遅刻や早退○○回で欠勤とみなす
  • 途中入退社した場合、その月の皆勤手当は支給しない
  • 途中入退社の場合は、日割り計算をする

Q. 有給休暇で休んでも、手当は支給される?

A. 皆勤手当を支給されるケースが多い

有給休暇は欠勤扱いにならないため、有給で休んだ日があっても皆勤手当を支給するという規定にしてある企業が多いようです。

その背景にあるのが、労働基準法附則第136条。この条文では「有給休暇を取得した労働者に対する、賃金の減額その他不利益な取扱い」を禁止しています(努力義務)。有給休暇を理由とした皆勤手当のカットも「不利益な取扱い」にあたり、有給取得の妨げになってしまうことから、基本的に禁止されています(努力義務)。

※参考:厚生労働省大阪労働局「年次有給休暇(年休・有休)について

皆勤手当のカットが違法にならないケースも

「従業員の有給休暇取得を抑制する」意図での皆勤手当のカットは違法ですが、そうではないと認められ違法にならなかった判例があります

有名な例が、1993年の沼津交通(タクシー会社)の事例です。

この企業の皆勤手当は「勤務予定表(シフト)通りに勤務した従業員に支給されるもの」と定義されており、シフト決定後に有給休暇を取得した場合は皆勤手当をカットしていました。

これに対し労働者が訴えを起こしたものの「シフトに穴をあけるリスクを減らすために設けた皆勤手当制度」であるという企業側の主張が認められ、訴えが退けられています。

有給休暇を理由に、皆勤手当がカットされたら?

もし有給休暇の取得を理由に皆勤手当がカットされたら、専門家に相談しましょう。

全国各地の労働局に設置されている「総合労働相談コーナー」なら、予約不要・無料で相談可能です。時間帯は平日9時〜17時と限られますが、電話または対面で専門家に直接相談できます。

Q. 皆勤手当に、税金はかかる?

A. 皆勤手当は、課税対象

皆勤手当は、所得税の課税対象です。多くの手当と同じく給与所得とみなされるため、源泉徴収の対象となります。

なお、所得税法の定めにより特別に非課税になる手当は、下記の3つのみです。

〈非課税になる手当〉

  • 通勤手当のうち、一定金額以下のもの
  • 転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
  • 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの

※参考:国税庁「No.2508給与所得となるもの

その他の手当について知りたいときは…

皆勤手当以外にも、求人票でよく見るポピュラーな手当について解説している記事をご紹介します。

支給される条件や金額の相場、注意点などをまとめているので、参考にしてください。

▼休業手当

▼家族手当

▼住宅手当

▼そもそも「福利厚生」とは?どんな手当がある?

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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