この3項目を押さえればOK! わかりやすい給与明細の見方
「給与明細の見方について、実はきちんとわかっていない……」
そんな方に向けて、給与明細の見方と、押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
給与明細は3項目を押さえればOK
給与明細は、大きく分けると(1)勤怠(2)支給(3)控除の3項目で構成されています。
- 勤怠…勤務した日数や時間
- 支給…勤務先から支払われる金額
- 控除…給与から天引きされる金額
明細のデザインは企業によって異なりますが、この3項目が書かれているのが一般的。「支給」から「控除」を引いた金額が「差引支給額(=手取り金額)」になるという構成になっています。
ここからは、各項目の内容をくわしくみていきましょう。
「勤怠」欄の見方
まずは「勤怠」欄の見方から解説します。
勤怠欄には、勤務日数や労働時間が記載されており、給与締め日までの1ヶ月間のうち何日出勤し、何時間働いたのかなどがわかります。
勤怠欄にかかれている主な内容をまとめました。
就業日数 | 会社が定めた就業日数 |
出勤日数 | 出勤した日数 |
欠勤日数 | 欠勤した日数 |
特別休暇日数 | 慶弔関連など、特別休暇を取得した日数 |
有給休暇日数 | 有給休暇を取得した日数 |
有給休暇残日数 | 残りの有給休暇日数 |
労働時間 | 勤務時間の合計 |
残業時間 | 法定または所定労働時間を超えて働いた時間 |
深夜時間 | 22時~翌5時の間に働いた時間 |
休日労働時間 | 労働基準法で定められた休日に働いた時間 |
遅刻早退時間 | 遅刻や早退で勤務できなかった時間 |
「支給」欄の見方
つづいては「支給」欄の見方を解説します。
支給欄には、勤務先から支給される給与や手当の金額が記載されており、基本給や残業手当など、いくつかの項目に分かれています。
主な記載項目について、くわしく見ていきましょう。
基本給
基本給とは、毎月決まって支払われる基本賃金のこと。
月によって金額が変動する残業代などの手当とは異なり、昇給や降給がない限り毎月同じ金額が記載されています。
各種手当
残業手当
残業手当は、1日8時間、週40時間を超えて働いた時間外労働に対して、基本給とは別に支払われます(※)。
手当の金額は「1時間あたりの賃金(基本給 / 1日の所定労働時間 × 1ヶ月の平均所定労働日数) × 割増率 × 残業時間」で算出されますが、割増率は残業した時間帯などによって変動します。
※「月◯時間の残業時間を含む」といったみなし労働時間制で働いている場合、時間外労働手当が支給されるのは、所定のみなし残業時間を超えた場合のみ
▼残業手当の計算例
(平日22時までのみの残業の場合)
1時間あたりの賃金 × 割増率 × 残業時間
={(21万円 / (8時間 × 21日)}× 1.25 × 20時間
=1,250円 × 1.25 × 20時間
=31,250円
▼くわしい計算方法や深夜残業手当・休日手当の計算式を解説
通勤手当
通勤手当とは、通勤にかかる交通費に対して支給される手当のこと。
電車・バス通勤なら定期代、自動車通勤ならガソリン代が支給されるのが一般的で、月15万円以内であれば非課税(※)となります。
※自動車や自転車などで通勤している場合は非課税となる金額が異なります。くわしくは国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」を確認してください。
そのほか代表的な手当
代表的な手当をまとめました。なお、時間外労働手当以外の手当は支給が義務づけられていないため、手当の支給があるかどうか、いくら支給されるかは、会社によって異なります。
役職手当 | 役職に応じて支払われる手当 |
資格手当 | 会社が定める資格を保有している場合や取得した場合に支払われる手当
※相場は「資格手当とは?どのくらいもらえる?」で解説 |
住宅手当 | 住宅費用を補助する手当
※相場は「住宅手当っていくらもらえるの?」で解説 |
家族手当 | 配偶者や子どもなどの扶養家族がいる場合に支払われる手当
※相場は「家族手当の相場はいくら?」で解説 |
地域手当 | 物価が高い地域や離島などの不便な地域、光熱費がかさむ寒冷地域などで勤務している場合に支払われる手当
※相場は「地域手当とは? 相場は?」で解説 |
単身赴任手当(別居手当) | 単身赴任をしている場合に支払われる手当
※相場は「単身赴任手当ってなに?相場はいくら?」で解説 |
出張手当 | 出張した期間や移動距離に応じて支払われる手当
※相場は「出張手当の相場ランキング【国内・海外】」で解説 |
皆勤手当 | 特定の期間中に欠勤がなかった場合に支払われる手当
※相場は「皆勤手当とは?」で解説 |
「控除」欄の見方
最後は「控除」欄の見方について解説します。
控除欄には「支給」欄にある給与から天引きされる金額が記載されています。記載内容は主に、社会保険料(健康保険・介護保険・厚生年金・雇用保険)、所得税、住民税です。
ここからは、それぞれの内容についてくわしくみていきましょう。
健康保険
健康保険とは、病気・けがの治療などにかかる医療費に備えて毎月支払う社会保険のこと。
保険料は「標準報酬月額(4月・5月・6月の総支給額の平均)× 所定の保険料率」で算出され、このうち半分が自己負担、もう半分が会社負担となっています。
保険料率は加入している健康保険組合(全国健康保険協会の場合は加入している都道府県支部)によって異なり、標準報酬月額が20万円代なら1万円強が天引きされます。
基本的には4月・5月・6月の給与をもとに保険料が決まるため、今年の4月・5月・6月の給与が前年同時期と比べて多ければ、支払う保険料も増額します。
くわしい保険料額について知りたい方は、加入している健康保険組合の保険料額表を参考にしてください。
※協会けんぽに加入している場合は、全国健康保険協会「都道府県毎の保険料額表」で保険料額を確認できます。
介護保険
介護保険とは、高齢者の介護を支えるための社会保険のことで、満40歳になった月から自動的に加入します。
健康保険・厚生年金と同じく「標準報酬月額(4月・5月・6月の総支給額の平均)× 所定の保険料率」で算出され、このうち半分が自己負担、もう半分が会社負担となっています。
くわしい保険料額について知りたい方は、加入している健康保険組合の保険料額表を参考にしてください。
※協会けんぽに加入している場合は、全国健康保険協会「都道府県毎の保険料額表」で保険料額を確認できます。
厚生年金
厚生年金とは、会社員や公務員が入っている公的な年金のこと。
保険料は、健康保険と同じく「標準報酬月額(4月・5月・6月の総支給額の平均)× 所定の保険料率」で算出され、このうち半分が自己負担、もう半分が会社負担となっています。
20~60歳なら必ず加入することになっている国民年金とあわせ、月収の1割程度が天引きされるのが一般的です。
くわしい保険料額について知りたい方は、日本年金機構「厚生年金保険料額表」を参考にしてください。
▼厚生年金制度についてくわしく解説
雇用保険
雇用保険とは、失業や育児休業に備えて加入している保険のこと。
31日以上雇用される見込みがあり、1週間の所定労働時間が20時間以上であれば加入義務があるため、フルタイムの正社員であれば加入して、保険料を支払うことになります。
保険料は「毎月の給与総額 × 雇用保険料率」で算出されており、2022年4月1日〜9月30日までの一般事業の雇用保険料率は0.95%。このうち0.3%が自己負担、0.65%が会社負担となっています。
2022年10月から一般事業の雇用保険料率は13.5%へ変更となり、0.5%が自己負担、0.85%が会社負担となります。
所得税
所得税は、その年の課税所得に対して計算されるもので、国に支払う税金のこと。「その年の課税所得」は現在の月収が続く想定で仮設定されており、源泉所得税として毎月天引きされます(=源泉徴収)。
正確な所得税の金額は、年末に年間の給与総支給額や社会保険料などの控除額が確定した段階で精算され、多く支払っていた場合は還付を受け、不足していた場合は追加で支払うことになります(=年末調整)。
税額は課税所得や扶養家族の人数に応じて異なるため、くわしい所得税額は、国税庁「給与所得の源泉徴収税額表(令和5年分)」を確認してください。
住民税
住民税は、前年の課税所得に対して計算されるもので、地方自治体に支払う税金のこと。都道府県税と市区町村税の2種類があり、あわせて住民税として徴収されています。
前年の収入がない社会人1年目は支払う必要がないため、1年目と2年目で支給額が変わらなければ、2年目のほうが給与の手取りが少なくなります。
※社会人1年目でも、前年にアルバイトなどで一定額以上の収入があれば住民税を支払う必要があります。住民税が課税される場合は自宅に納税通知書が届くため、その案内に従って納税するようにしましょう。
▼住民税の金額について、くわしく解説
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この記事の監修者
社会保険労務士
三角 達郎
三角社会保険労務士事務所