何点から履歴書に書いていい? TOEICのスコアの書き方
履歴書の資格欄は、せっかくなら少しでもプラスアルファになることを書いて、アピールにつなげたいもの。
TOEICのスコアはアピールポイントの1つですが、「あまりに低いスコアを書くと、逆に評価が下がるのでは?」と不安に思われるかもしれません。
ここでは、アピールにつながるスコア、逆に書かないほうがいいスコアのボーダーラインなどをお伝えします。
そもそもTOEICって何?
英語のコミュニケーション能力をチェックするテスト
TOEIC(トーイック)とは、英語を母国語としない人を対象にした、英語のコミュニケーション能力を評価する世界共通のテストのことです。
ビジネス英語の能力を測るテストとしては、日本ではもっともポピュラーです。
TOEICとは一般的にリーディング、リスニング能力を測るTOEIC Listening & Reading(以下TOEIC L&R<)のことを指しますが、この他にスピーキング、ライティング能力をはかるためのTOEIC Speaking & Writing(以下TOEIC S&W)というプログラムもあります。
文部科学省認定の「実用英語技能検定」(英検)は、「1級」「準1級」といったレベル別のテストを受けて「合否」が出ますが、TOEIC公開テストの場合、全員が同じテスト(990点満点)を受け、結果は10~990点(5点刻み)のスコアで出されます。
年10回行われており、全国の約80都市で受験することができます。
主催はEducational Testing Service(ETS)というアメリカの団体ですが、TOEICの日本国内でのテストは、財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が実施しています。
⇒TOEIC日本公式サイト
▼TOEICテストの概要
受験料 | 6,490円 |
試験時間 | 2時間 |
受験者数 | 2,456,000人(2018年) |
試験日 | 年10回(1・3・4・5・6・7・9・10・11・12月) |
受験地 | 全国約80都市 |
試験内容 | マークシート方式。リスニング・リーディングのふたつのセクションがある |
※「就職に有利!おすすめ英語資格まとめ」の記事も参照してください。
企業が重視するのは英検よりもTOEIC
国内の企業が、現在、社員や入社志望者の英語力を測るうえでもっとも重視しているのはTOEICです。
これから就職のためにTOEICか英検のいずれかを受験しようと思っているのであれば、TOEICのほうが断然おすすめです。
日本国内の英語能力のテストとしては、英検のほうがポピュラーな時代もありました。
しかし、2000年にはTOEICの国内年間受験者数が100万人を超え、国際ビジネスコミュニケーション協会の調査(「上場企業における英語活用実態調査」報告書(2013年))では、約7割の上場企業が「採用時にTOEICのスコアを参考にする」と答えるほど、TOEICは普及しました。
TOEICは「聞く」「読む」の能力しか測定できないこともあり、企業側も、「TOEICのスコアが高い」=「すぐに英語で仕事ができる」とは考えていません。
ただし、TOEICのスコアによって、「英語習得のための基礎能力があるか」「目標に向けて努力を継続することができるか」といったことを判断しているのです。
TOEICテストは合否ではなくスコアで結果が出ているので、他の人と比べやすく、基礎力や努力を測るための「物差し」にしやすいと企業は考えているのです。
TOEICが万能というわけではない
外資系の企業の中には、TOEICよりもTOEFL(トーフル/Test of English as a Foreign Language)というテストを重視する企業もあります。
TOEFLは、英語圏の大学などへの留学に必要な英語力を判定する試験で、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの能力を総合的に測定します。「読む」「聞く」だけが測定されるTOEICと比べ、実践的な英語力が測れているとみなされ、TOEICよりも信頼性が高いと考えられているのです。
また、TOEFLは英語圏の大学への留学に必須であることから、国際的な知名度でTOEICに勝ります。そのため外資系企業や海外企業に直接応募する場合は、TOEFLのほうが響く可能性が高いと言われています。
まずは自分が志望する企業の情報を調べ、どのテストを受けておくのがいいのか、判断しましょう。
TOEFLが海外でTOEICよりも知名度があることには、その成り立ちに理由があります。
TOEFLは、TOEICと同じくETSが主催しており、TOEICよりも早い1964年にスタートしています。
一方TOEICは、TOEFLが難しすぎてなかなか点数が取れなかった日本からの要請により、ETSが1979年に開発・新設したテストなのです。
日本や韓国ではポピュラーなTOEICですが、全世界的に見るとそうは言い切れないようです。
TOEICスコアの履歴書への記入方法
TOEICのスコアの履歴書への記入方法について解説します。
「資格」欄に日付とスコアを書く
履歴書にTOEIC(TOEIC L & R)のスコアを記入する際は、「資格」欄や「免許・資格」欄です。受験した年月とともに記入します。
試験名は「TOEIC公開テスト」と明記しましょう。
一般的なTOEIC(TOEIC L & R)ではないテストのスコアの場合は、それとわかるように記載しましょう。
※TOEIC L & R以外のテストについて、詳しくは下記→『TOEICの種類』
コラム:「TOEIC IP」のスコアを認めない企業もある
以前にTOEICを受験した際に、学校や企業の単位で受けていたら、そのテストは、「公開テスト」ではなく、「TOEIC IP」テストの可能性があります。
「TOEIC IP」とは、テスト内容の種類ではなく、テストの実施形式のことです。
通常の「公開テスト」とは別に、学校や企業が利用できる「団体特別受験制度」があり、これが「TOEIC IP」テストです。
TOEIC IPは、以下のような点が公開テストとは異なります。
・学校や企業がテストの運営を行う。
・TOEICで出題された過去問が出る。
・写真入りのTOEIC公式認定証がもらえない。
このような事情から、「TOEIC IPのスコアは認めない」という企業もありますが、TOEICの公式サイトには、「どちらのテストを受験してもスコアの有効性に違いはありません」と明記されています。
⇒こちらを参照
そのため、TOEIC IPテストのみを受験している場合は、履歴書に書かないよりも書いたほうがいいでしょう。スコアの基準は、公開テストとほぼ同じです。
ただし、就職を希望する企業がTOEICスコアを重視しているのであれば、公開テストを受験しておいたほうが無難でしょう。
履歴書に書くなら2年以内のスコアにしよう
TOEICのスコアは、厳密には「有効期限はない」ということになっていますが、認定証の再発行(有料)が2年までは可能なこともあり、一般的には、2年以内のスコアを書きます。
「3年前に受験したまま」というような人は、再度受験しておくといいでしょう。
なお、受験後にスコアが発表されるまでに最低でも3週間はかかるので(インターネット申し込みの場合)、履歴書の提出時期も考慮して、ぎりぎりにならないように注意しましょう。
もし、履歴書の提出期限までに再受験する余裕がないときは、何も書かないよりも、過去のスコアを書いておいたほうがいいでしょう。もちろん、それが自分で納得できるスコアの場合です。
そして面接のときなどに、受験時期について質問されたら、「今回は受験が間に合わなかった」ということをきちんと説明しておくといいでしょう。
履歴書に書いてアピールになるTOEICスコア
企業の業種や、自分が希望する職種によって異なる
TOEICスコアが何点以上なら、「履歴書に書くことで有利になる」のかは、残念ながら、明確な基準はありません。
企業の業種、日本企業か外資系か、海外の取引先の有無などによって、求められる英語能力が異なるからです。また同じ会社であっても、希望する職種によっても異なるでしょう。
さらに、企業が同じような英語能力を求めているとしても、TOEICスコアをどの程度重視するかは、企業の方針によって異なります。
自分のスコアを記入することで有利になるか不利になるかの見極めは、上記のことなどをよく調べたうえで判断しなければなりません。
英語を使う仕事でなければ、600点が目安
大学新卒者の場合、「英語を使う仕事でなければ、600点以上」と言われています。
はっきりした根拠があるわけではないのですが、以下のようなことが「600点以上」の理由だと思われます。
(1) TOEICの平均スコアが590点(2015年7月実施回)。
(2) ETSの公式サイトに記載されている「TOEICスコアとできることの目安」で、600点は、「読む」「聞く」というコミュニケーションができる最低ラインであること(下記の表参照)。
しかし、先に述べたように、企業がどの程度の英語力を社員に期待しているかによって、求められるスコアは変わるので、「595点の人は絶対に書くべきではない」というわけではありません。
できることの目安と照らし合わせ、企業が求めているレベルと自分が見合っているかを判断してから、書くかどうかを決めましょう。
▼TOEICスコアとできることの目安
英語を使う仕事なら、750~800点以上が目安
大学新卒者が履歴書に書けるTOEICスコアは、日常的に英語を使う仕事の場合、「750点以上」「800点以上」といった基準も、ビジネス雑誌の英語特集記事や、ネット上の就活情報などでよく見かけます。
こちらもはっきりした根拠はないようです。
しかし、先に挙げた表などから判断すると、800点以上は、「英語で書かれたインターネットのページから、必要な情報・資料を探し収集できる」「職場で発生した問題点について議論をしている同僚の話が理解できる」とされており、企業側が、英語を使う部署の新入社員に求めるスキルとしては、確かにこのあたりが妥当と言えるでしょう。
英語を使う仕事の場合も、企業の規模や海外業務のウエイトなどによって求められるレベルは異なります。
後述の『各企業が求めるTOEICスコアは一様ではない』も参考にしつつ、判断してみてください
ウソの申告はすぐにバレてしまう
「TOEICで思うようなスコアが取れなかったため、履歴書には少し水増しして書きたい」といった誘惑にかられる人もいるかもしれませんが、ウソのスコアを書くことはやめましょう。
内定を得た時点でスコアの認定証の提出を求められる可能性もあり、そこでウソのスコアを申告していたことがバレれば、内定取り消しになりかねません。
また、入社後にTOEIC受験を義務づけている企業も。大幅に水増しをすると、業務開始後スコアを信じた周りの期待を裏切ることになり、あとで自分が苦労します。
くれぐれも、履歴書のスコアは正直に書きましょう。
各企業が求めるTOEICスコアは一様ではない
新卒の基準スコアを明記している企業も
大手企業の中には、大学新卒者に求めるTOEICのスコアの目安を、ウェブサイトなどで明記しているところもあります。
▼募集要項等でTOEICスコアについて明記している企業
社名 |
求められるスコア |
備考 |
武田薬品工業 | 700点以上 | TOEIC700点程度(以上)が望ましい※職種による |
楽天 | 800点以上 | TOEICスコアで不合格になることはないが、入社までに800点を取得することが必要。 |
伊藤忠アビエーション | 700点以上 |
TOEIC700点推奨 |
※表の内容は、2020年7月現在の情報です。また、職種によっても異なります。
ネット上には、「企業が求めるTOEICスコア」という情報が溢れていますが、出典がはっきりしないもの、情報が古いものも多いようです。
例えば、ネット上のウワサで、「この企業は、TOEIC○点以上」とされている企業の「募集要項」や「採用に関するFAQ」などを見てみると、特にTOEICについて言及していなかったり、「語学力はあるに越したことはありませんが、TOEICスコアを取得していなくても大丈夫です」と書かれていたりすることが多々あります。
自分が希望する企業を絞り込んでいるなら、企業の公式サイトを調べたり、直接問い合わせたりしてみましょう。
また、企業によっては英語力を重視しているものの、新卒採用・キャリア採用ページの「募集要項」や「FAQ」で、「TOIECのスコアを採用条件にはしていない」と記載していたり、英語能力に関する記述でTOEICについて何も言及していない場合も多いようです。
ただし、ウェブサイトに明記していないだけで、採用の際に英語力を問わないというわけではありませんので、誤解のないようにしてください。
▼募集要項等で、TOEICスコアを明記していない企業
社名 | 募集要項やFAQの語学力に関する記述 |
三菱商事 | TOEICやTOEFLのスコアは参考にするが採用選考に有利になる資格はない。入社後は英語力が求められるため、内定者期間に自己研鑽の機会あり。 |
AGC | 語学力不足を理由に採用しないということはないが、業務上英語は必要となるため、学ぶ気持ちは必須 |
三井住友銀行 | 採用選考において語学力基準は設定していない。 |
日清食品 | あらゆるビジネスシーンで必要となる語学力や知識は仕事ですぐに活かせるという点でプラスになる。 |
※表の内容は、2020年7月現在の情報です。社名のリンクは、募集要項ページなど。
外資系の企業はTOEICを重視しないケースもある
外資系の企業の中には、TOEIC以外の英語能力テストを重視するところもあり、このような企業を受験する場合は、英語圏留学には必須の「TOEFL」(トーフル)」、ビジネス英語に特化した「Linguaskill Business」(リンガスキル ビジネス)、留学や移住の際に有利な「IELTS」(アイエルツ)などを取得していた方が、アピールにつながることがあります。
というのも、1章で解説したように、TOEICは、日本と韓国以外ではあまり知られていないからです。また、「話す」「書く」能力が測れないという弱点もあります。
特に外資系を志望の場合は、企業が求めている資格などをよく調べ、テストを選択するのも重要です。
TOEFL(トーフル)
ETSが主催する、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4つの能力を総合的に測定する英語能力テストです。
アメリカやイギリスなど英語圏の大多数の大学が、TOEFLのスコアを入学や卒業の基準として利用しており、留学生には必須のテストです。
世界レベルで認知度がもっとも高いテストと言えます。
Linguaskill Business(リンガスキル ビジネス)
イギリスのケンブリッジ大学英語検定機構と日本英語検定協会が共同開発した、英語能力テストです。
「聞く」「話す」「読む」「書く」の4つの能力を測定すること、ビジネスシーンに特化していることなどが特徴。
日本国内ではTOEICほど認知されていないものの、英語圏の国々では少しずつ普及しているテストです。
IELTS(アイエルツ)
ケンブリッジ大学英語検定機構、ブリティッシュ・カウンシル、IDPによって共同運営されている英語能力テストです。海外留学や移住に必要な英語力を測定する試験で、16歳以上での受験が推奨されています。
イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダのほぼすべての高等教育機関で認められており、アメリカでも、TOEFLに代わる試験として採用する教育機関が増えています。
日本企業では認知度が低いものの、外資系企業ではTOEFLと同程度に周知されています。
TOEICの種類
TOEIC L&Rと同じETS主催の英語能力テストに、初心者向けの「TOEIC Bridge」、「話す」「書く」の能力を評価する「TOEIC S&W (Speaking & Writing)」などがあります。
それぞれテスト内容やレベル、履歴書に書けるか否かなどがTOEICとはまったく異なります。
「TOEIC Bridge」は初心者向けなのでNG
「TOEIC Bridge」テストは、TOEICのスコアが450点に達しない人たちに向けた、初心者用のテストです。
このテストは履歴書には書けないレベルなので、いくら英語が苦手な人でも、就活用にわざわざ受ける必要はまったくありません。
「TOEIC S&W」は、TOEICスコアとあわせて書くとより効果的
「TOEIC S&W (Speaking & Writing)」は、「TOEIC」で測定できない「話す」「書く」の能力を証明するテストであり、スコアがよければ、履歴書に書くことで大きくアピールすることができます。
TOEICは、「聞く」「読む」という能力しか測定しないため、たとえハイスコアが取れた人でも、「話す」「書く」能力がどの程度なのかはわかりません。
そこで、「話す」「書く」の能力を測定するために2007年からスタートしたのが「TOEIC S&W」です。
テスト内容は、「スピーキングテスト」(20分間、11問)で200点、「ライティングテスト」(60分間、8問)で200点、計400点満点です(スコアは10点刻み)。
TOEIC S&Wは、国内での年間受験者数は14,300人程度(2018年)。
履歴書に記載する人はまだ少ないので、英語を「話す」「書く」能力をアピールできることは確かでしょう。
TOEIC S&W、履歴書に書くなら何点以上?
もちろん、TOEIC S&Wも、履歴書に書く場合はあまりに低いスコアでは逆効果です。
「何点からなら書いていい」という明確な基準はありませんが、スピーキングテスト、ライティングテストがそれぞれ110点以上(合計220点以上)、というのが目安となりそうです。
TOEICの主催団体が公式に発表している基準では、スピーキングテストもライティングテストも100点以下になると、「○○の能力が限られている」とマイナス面が明記されており、ここがひとつのボーダーラインと言えるでしょう。
また、海外出張レベルが、「スピーキング130点以上、ライティング140点以上」とされているため、これ以上のスコアであれば、英語を使う仕事の場合でも、一般的には恥ずかしくないスコアだと言えます。
「全受験者の平均スコアが260点前後」「大学生の平均スコアが220点前後」とされている現状なども踏まえて、自分のスコアを書くかどうかを決めてください。
▼TOEIC S&Wスコアとできることの目安
※「TOEIC S&W」の公式サイトのデータから転用しています。スピーキングではレベル3以下を、ライティングではレベル4以下を省略しています。
履歴書に書く場合は、下記のように受験年・月、試験名とスコアを書きます。スコアは「何点満点中、何点か」を書くようにすると、人事担当者が英語の資格に詳しくない人であっても伝わりやすくなります。
まとめ
「TOEICが何点であれば、履歴書に書いていいのか」については、一概に言えないことが多いのですが、おおまかな基準としては、以下のようなことが言えます。
- 英語を使う仕事でなければ、600点以上
- 日常的に英語を使う仕事の場合は、「750点以上」か「800点以上」
- 企業や職種によって求められるレベルは大きく異なるので、企業情報をしっかり調べることが重要
自分のスコアと、企業から求められている英語力のレベルを比べて、効果的にアピールしましょう。