定義から設計まで キャリア&キャリアプランとは?

終身雇用制度の崩壊で「理想的なキャリアの描き方がわからない」と悩む方が増えています。そもそも、キャリアとは一体何を指すのでしょうか。

今回は、キャリアの意味・定義と、キャリアの積み方のヒントを5つご紹介します。

キャリアとは?意味・定義を解説

よく耳にする「キャリア」という言葉、一体どういう意味なのでしょうか?

キャリアの意味は仕事上の経歴・経験

キャリアは広義では「生き方」を指しますが、転職・就職においては仕事上の経歴・経験を意味します。

「キャリアを積む」は職業・技能上の経験を積むことを、「キャリアアップ」は専門的なスキルを身に付けたり、より給料の高い職業に転職したりすることを指します。

さらに「キャリア組」「キャリアウーマン」といった、専門知識を生かして働く人や特定の地位に就いている人を指す使い方もあります。

コラム:キャリアの語源とは?

キャリアの語源は、ラテン語の「carrus(荷馬車)」です。

荷馬車が通った後には車が通った跡である轍(わだち)が残ります。人生もそれと同じように、過去に辿った跡から道ができ、キャリアが形成されます。つまり、キャリアとは過去から連続して続いていく「道のり」のようなものだといえるでしょう。

ちなみに厚生労働省の「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書でも、キャリアは「継続性を持った概念」であると捉えられています。

キャリアの積み方は1人1人考えることが大切

個人のキャリアが多様化する今、キャリアの積み方を1人1人がしっかり考えておく必要があります。

かつては企業に入ってしまえばそのまま年功序列で出世していくため、個人がキャリアについて深く考える必要はありませんでした。

しかし、現代は大企業に入れば必ずしも定年まで安泰とは限りません。キャリアの積み方を会社任せにしていた時代は終わり、1人1人が自分の働き方・生き方について考える必要性が生まれたのです。

組織に頼らなくても自分の力で食べていけるようにするために、理想の働き方を考え、その実現に向けてどんなスキルを身に付けるべきか考えることが大切です。

コラム:警察のキャリア組・ノンキャリア組って?

キャリアという言葉で警察や国家公務員のキャリア・ノンキャリアを連想する方も多いのではないでしょうか? 警察官を含め多くの国家公務員は、大きくキャリア組とノンキャリア組の2つに分けられます。

キャリア組とは、難関といわれる「国家公務員採用試験(総合職試験)」を突破した人たちのこと。いわゆるエリート組の俗称です。

ノンキャリア組は、一般的に「国家公務員採用試験(一般職試験)」の合格者を指します。

1997年から放映された刑事ドラマ「踊る大捜査線」でキャリア組・ノンキャリア組の対立が描かれたことがきっかけでこの言葉が広まったといわれています。

キャリアの積み方を考える際のヒント5つ

キャリアに悩む方に向けて、悩みを解消するためのヒントを5つご紹介します。

(1)自己理解を深める

1つ目のヒントは、自分の価値観や興味、希望する環境を見直すなど、自己理解を深めることです。

給料ややりがい、仕事環境など働く上で重視することは人それぞれ。「ハードワークでもがっつり稼ぎたい」という人もいれば、「無理なく働いてそれなりの収入が貰えれば満足」という人もいます。

そうした自分の価値観や優先順位を知り自己理解を深めることで、この先どんなキャリアを積むべきか考えることができます。

自己理解を深める方法を2つご紹介します。

エニアグラムやストレングスファインダーなどの自己分析テスト

エニアグラムとは、人間の性格を9つのタイプに分類するテストのこと。ストレングスファインダーは、34の資質のうちトップ5つの資質を確認できるツールです。

自分の思考パターンや資質を客観的に知ることができ、仕事や生活でどう生かしていけば良いかがわかります。

エニアグラム(無料)
http://shining.main.jp/eniatest.html

ストレングスファインダー(有料)
https://heart-lab.jp/strengthsfinder/sf-manual/

身近な人に自分の長所・短所を尋ねてみる

家族や友人をはじめ、普段からよく接する人に自分の長所・短所を聞いてみるのも良いでしょう。

他者の目で自分を分析してもらうのも自己理解の1つの手段。自分では気づけない自分の良さを発見できるかもしれません。

(2)できることを起点にしてキャリアを考える

やりたいことがない人は、できることを起点にしてキャリアを考えるのも1つの手です。

仕事選びに役立つ「Will・Can・Must」という考え方があります。Willは自分が仕事を通じて成し遂げたいこと、Canは自分ができること、Mustは使命という意味です。

特にやりたいことが見つからない場合、自分の得意なこと(Can)を足がかりにするとそれがキャリアにつながることがあります。

例えば、あなたは英語が得意(Can)だとしましょう。その場合、教育に問題意識を持っている(Will)ならば英語教材を開発する企業、人の健康をサポートしたい(Will)ならば海外展開を行う製薬会社というキャリアが考えられます。

また、できることややりたいことが明確になると、その先に、誰でも理解しやすい教科書をつくる、難病に効果のある新薬を開発する、といった使命(Must)が見えてくるでしょう。

仮に成し遂げたいことがなかったとしても、英語が得意という出発点さえあれば、英語力が生かせる仕事という観点でキャリア選びができるはずです。

(3)どんな会社で働きたいか考える

どれくらいの規模の企業で働きたいのかを考えるのも、キャリア設計のための手がかりになるでしょう。

大企業・中小企業・ベンチャー企業は企業規模が異なるため、仕事内容や待遇にも大きな差があります。それぞれの定義やメリット・デメリットを整理しておきましょう。

大企業…経営規模が大きい企業のこと。知名度の高い企業を指して使う場合も。

中小企業基本法では、以下の定義に当てはまる企業が大企業といえる。

  • 製造・建設・運輸・その他の業種→資本金3億円超、従業員数300人超
  • 卸売業→資本金1億円超、従業員数100人超
  • サービス業→資本金5,000万円超、従業員数100人超
  • 小売業→資本金5,000万円超、従業員数50人超

※割合は全企業数の全体の0.3%

メリット:ネームバリューがある、福利厚生が充実している

デメリット:転勤や異動が多い、意思決定のスピードが遅い

中小企業…経営規模が中程度以下の企業のこと。

中小企業基本法では以下の定義に当てはまる企業を中小企業としている。

  • 製造・建設・運輸・その他の業種→資本金3億円以下、従業員数300人以下
  • 卸売業→資本金1億円以下、従業員数100人以下
  • サービス業→資本金5,000万円以下、従業員数100人以下
  • 小売業→資本金5,000万円以下、従業員数50人以下

メリット:社員が少ない分コミュニケーションが取りやすい、転勤や異動が少ない

デメリット:福利厚生が充実していない、労働環境が整っていない

ベンチャー企業…一般的には、革新的なビジネスに取り組む企業を指す。明確な定義はなく、大企業や中小企業も含まれる場合も。

メリット:意思決定のスピードが早い、裁量権が大きい

デメリット:福利厚生が充実していない、ネームバリューがない

※参考:2017年版中小企業白書 概要|経済産業省

これらはあくまでも一例で、実際の働き方は企業により異なります。しかし、このような傾向があることを踏まえ、自分に適した企業の形態を考えてみるのもキャリア観を深める足掛かりとなるでしょう。

(4)年代ごとの理想のキャリアを知っておく

転職市場では、20代、30代、40代……と年代ごとに期待されるスキルがあります。それぞれを、今の自分が身に付けておくべきスキルを考えるための参考にしてください。

20代

20代で見られているのは、社会人としての基礎力です。挨拶やビジネスメールなどの社会人マナーや、仕事の基礎的なスキルを身に付けましょう。

また、20代は若手ゆえにポテンシャルや熱意が期待されるため、アピール次第で新たな業界・職種にキャリアチェンジすることも可能です。

20代は失敗しながらもさまざまな経験を積むことが重要で、キャリアを模索する時期だといえるでしょう。

30代

ある程度社会人経験を積んだ30代は、即戦力になることが期待されます。転職活動では、企業の求める人材像に合わせて自分のスキルや知識をアピールしましょう。

また、30代は自社の仕事の進め方や理念が定着するころ。新しい職場に転職したときに前職とのギャップを感じる可能性もあるので、柔軟性を身に付けておくことも大切です。

そして、30代といえば結婚・出産といった大きなライフイベントが増える時期。仕事重視か家庭重視かでキャリアが分かれていくでしょう。

40代

ある程度熟練してきた40代は、即戦力であることに加え、マネジメント経験が求められます。後進の育成やプロジェクトの管理経験があると、転職活動ではより有利でしょう。

また、キャリアチェンジができる20代と比べ、年齢的な問題で新しい業種・業界に挑戦しにくくなるのが40代の特徴です。40代は、自分が磨いてきたスキルを生かしてより活躍の場を広げるキャリアアップを目指しましょう。

ここまで20代~40代に求められるスキルや経験を説明しました。ただし、これはあくまでも傾向であって、明確なビジョンを持っていればキャリアアップは可能です。

転職活動では、これまでのキャリアを踏まえ、今後どう成長していきたいのか、はっきりと語れるようにしておきましょう。

※女性のキャリアについて詳しくは→女性のキャリアはどうあるべき?

(5)時代の一歩先を読む

将来性を考えるなら、時代の一歩先を読んだキャリアプランを考えることも大切です。

英オックスフォード大学マーティンスクールのマイケル A. オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士による研究では、2025~2035年頃には、日本の労働人口の49%が人工知能やロボットなどによって代替可能になると予測されています。

単純作業は機械に代替され、複雑な思考が必要で人間にしかできないような仕事は残ると考えられているため、例えば受付係やバスやタクシーの運転手、ビルの管理人などは機械に取って替わられてしまうかもしれません。

また、日本では高齢化が進み、介護・医療業界のニーズが増えると予想されます。

それに伴い働き方はどう変わるのか、給料は上がるか、政府の支援制度はあるのかなど、細かくチェックしておくと良いでしょう。

このように、トレンドや景気が将来を左右するため、希望する業界・業種の実情を把握しておくことも重要です。

※参考:日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に|野村総合研究所

「キャリアの8割は偶然決まる」という説も

米スタンフォード大学の教育学・心理学者であるJ・D・クランボルツ教授は、「キャリアの8割は予期せぬ偶発的な要素によって決まる」と提唱しています。

クランボルツ教授が米国の一般的な社会人を対象に行った調査によると、18歳のときになりたかった職業に従事している人はたったの2%

また、同教授が米国で成功を収めた数百人に行った調査では、約8割の人が「自分のキャリアは偶然決まった」と答えており、これらのデータから教授は「計画された偶発性理論」を導き出しました。

通常、「キャリアを描く」というように、キャリアは主体的に積み上げていくものと考えられがちです。しかし、思いがけないことがきっかけで、予期せぬキャリアが偶然形成される可能性もあります。

今のキャリアが未来でどう生きるかは予測不可能な部分もあるため、失敗を成長の機会と捉えて前向きに挑戦し続けることが大切です。

キャリアアップを考えている人へ

次のキャリアを積むために一歩踏み出そうとしている方へ、アドバイスをお送りします。

安易な転職は危険

安易な転職はしないようにしましょう

例えば、これといった実績がないまま転職活動を始めると、なかなか転職先が見つからないことがあります。そんなときに、少ない情報だけで判断して就職先を決めると、入社してからイメージとの違いを感じて後悔することになるかもしれません。

本当に今のタイミングで良いのか、他に方法はないかなどを検討した上で転職を決めましょう。

※これといった実績がないときの転職について→「逃げの転職」でも成功する方法

資格がキャリア形成に役立つことも

例えば、以下のような難易度の高い資格や専門性をアピールできる資格を持っていると、キャリア形成に役立つことがあります。

ただし、業界・業種によっては資格が全く必要ない場合もあるため、自分にとって本当に必要か確かめてから資格の勉強を始めるようにしてください。

  • ITパスポート試験
  • MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)
  • 日商簿記検定
  • 中小企業診断士
  • 普通自動車運転免許
  • TOEIC

※詳しくは→【転職で有利な資格】おすすめ15選

今後のキャリアに迷ったときは…

どのようなキャリアを歩むべきかは、多くの人にとって共通の悩みです。焦らずにじっくり考える時間を確保し、ときには人に相談しながら考えをまとめるのもいいかもしれません。

その一方で、今後のキャリアを考える際には、まずはどのような選択肢があるのかを知っておく必要があります。

例えば、目指すキャリアは「スペシャリスト」か「ゼネラリスト」かという点です。

下記の記事では、専門性を追求する「スペシャリスト」と、複数の職種を経験して幅広く活躍する「ゼネラリスト」の役割や適性について解説しています。キャリア選択のヒントとして参考にしてください。

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