リッチ?それともプア? 年収600万円の生活スタイル

国税庁の令和元年分民間給与実態統計調査によると、日本の平均年収は約436万円。年収600万円は、ややリッチなイメージがあります。

では、年収が600万円あると実際にどのような生活が送れるのでしょうか。この記事では、その懐事情を探ります。

日本で年収600万台は10%未満!年代・性別にみる年収

国税庁が2020年11月に発表した「民間給与実態統計調査」によると、年収600万円台の人は約16人に1人という結果となりました。

労働者全体で年収600万円超は約20%

年収601万円以上の労働者の割合は全体の20.5%。年収601万円~700万円の層だけを見るとわずか6.5%です。

給与所得者の構成比のグラフ。601~700万円は全体の6.3%

給与所得者1人あたりの平均年収は436万円で、600万円台に遠く及ばない人たちがほとんどを占めています。最も多い給与階級は年収300万円超~400万円以下で、現状では一生懸命働いても600万円以上の年収を稼ぐことがいかに難しいかがわかります。

現在、年収600万円の人の平均年齢は44.3歳と、40~50代の働き盛りの年代が中心。この層は会社員なら何らかの役職に就いていることも多く、役職手当などで給与が優遇されている可能性が考えられます。

キャリアや実績の薄い若手世代が年収600万円を目指すには、なかなかハードルが高いのが現実です。

※参照→令和元年度民間給与実態統計調査_第3表 給与階級別の総括表_その1、1年を通じて勤務した給与所得者)令和元年度民間給与実態統計調査_第3表 給与階級別の総括表_その4累年比較(給与所得者の構成比))/国税庁

20代前半で年収600万円はほぼゼロ

世代別の平均年収はどうでしょうか。最も年収が低いと思われる20代だけに絞ってみると、働き始めの20~24歳の平均年収は264万円。やはりかなり低めです。

年齢階層別の平均給与のグラフ

個人事業主の場合など例外も考えられますが、この図だけから読み解くと、20代前半で年収600万円に到達している人はほぼゼロに近いと言えるでしょう。やはりキャリアの浅い20代の初めのころに高い年収を得ることは非常に困難なようです。

しかし、昨今はIT関連会社や大手メーカー、外資系企業など、能力や実績に応じた昇給システムや年俸制を導入する企業が少しずつ増え、20代でも実力次第で高収入を手にできるチャンスが広がっています。

そうしたチャンスをつかんで、20代のうちに高い年収を得るにはどんな能力が必要なのでしょうか。人事のプロに聞いた「30歳までに高い年収を得るための条件」を下記の記事でまとめました。ぜひ参考にしてください。

▼人事のプロフェッショナルが語る

※参照→令和元年度「民間給与実態統計調査(第10表 事業所規模別及び年齢階層別の給与所得者数・給与額 その3平均給与)」/国税庁

女性で年収600万以上は7.1%とわずか

一方、働く女性の場合はどうでしょうか。下の円グラフは金額ごとの給与所得者の構成比を男女別に示したものです。

年収600万円を超えている女性給与所得者は全労働者のうちのたった7.1%しかいないことがわかります。

男女別給与所得者の構成比のグラフ

さらにデータを深堀していくと、男性の年収分布は300万円以下から600万円以下を中心に広がり、1500万円までばらつきが見られるのに対して、女性の中心層は100万円以下から400万円以下にまとまっています。現状では、女性で年収2000万円を超えている人はかなり少ないと言えるでしょう。

このように、男性と女性の間に歴然とした年収差があるのにはいくつか理由が考えられます。女性の方がパートなど非正規雇用の人が多いことや、結婚や出産、育児でキャリアが停滞しがちなこと、女性の能力が認められにくい職場環境などが挙げられるのではないでしょうか。

女性のキャリア職が増えているとはいえ、年収600万円への壁はかなり高いのかもしれません。

※参照→令和元年度民間給与実態統計調査_第3表 給与階級別の総括表_その4累年比較(給与所得者の構成比)/国税庁

年収600万円の生活スタイルってどんなの?

多くの若い世代ではいまだ未知の年収600万円生活。実際にどれほどの暮らしが送れるのでしょうか。

年収600万円は…「手取り470万円程度」「手取り月収30万前後(年二回、二ヶ月ずつボーナスを貰える場合)」

年収600万円の手取り額はおよそ470万円

600万円の年収があるといっても、手取りにするとだいたい470万円程度。これは一般的なサラリーマンを想定し、年収から税金や保険料を引いた額です。個人差はありますが、年収が全額手元に入ってくるわけではなく、サラリーマンの場合は、税金や保険料などトータルで130万ほどが天引きされます。意外と少ないと感じるかもしれません。

この手取り額はボーナスを含めたものなので、ボーナスを年2回、2ヵ月分ずつもらったとして試算すると、月々の手取り収入は約30万円前後といったところでしょう。

年収600万円のリアルな生活1~独身男性の場合~

単身サラリーマンの場合

一般的な会社に勤める年収600万円の単身サラリーマンでは、住まいや車、食費にどのくらい使えるのでしょうか。その内訳を推測してみました。細かな金額は個人によって多少異なるので、あくまで参考としてください。

住まい…月々13万円程度の賃貸1K

一般的に、家賃の目安は「手取りの3分の1程度」と言われます。年収600万円の独身者の場合は、月々の手取り収入を約30万円前後と考えると、およそ10万円。

東京23区内なら便利で華やかな港区・渋谷区あたりのワンルームや1Kの賃貸マンションに住めそうですし、立地や築年数にこだわらなければ広めの間取りに住むこともできそうです。

車…300万円までの国産新車や中古輸入車

一般的に、車の購入金額の目安は年収の半分以内と言われています。もうちょっとランクを上げていい車に乗りたいと思っても、維持費などを考慮すると年収の半分までに収めるのが無理のない範囲。

年収600万円の人は最高で300万円の車が購入可能でしょう。これくらいの予算があれば国産コンパクトカーの新車から中古の輸入車まで、好みに応じて幅広く選べるのではないでしょうか。

貯金…毎月6万円程度で余裕があればそれ以上

将来を考えた理想の貯金額は月の収入の約2割。とすると毎月6万円ほどを積み立てていけます。単身者は既婚者に比べると生活費を調整しやすいこともあるので、がんばればもう少し多めに貯金に回すこともできるでしょう。

食費…外食でほどほどにプチ贅沢

単身世帯の食費の目安はひと月あたり2~5万円。光熱費などを差し引いても毎月10万円ほどは自由になるお金がある年収600万円の単身者は、月の食費にかけられるお金にも多少ゆとりがあります。外でのランチや仲間との会食などプチ贅沢を楽しむこともできるでしょう。

年収600万円のリアルな生活2~既婚・子どもアリの場合

既婚・年収600万円で子持ちサラリーマンの場合の生活費

独身の場合は年収600万円でゆとりのある生活が送れるようでしたが、既婚者で子どもがいる場合は少し様子が変わってきます。

住まい…住宅ローンの返済額は月々12~13万円

子どもがいれば持ち家願望も高まるもの。住宅金融支援機構フラット35利用者調査によれば、マンションを購入した世帯の年収は600万円以上が50%を超えています。なかでも600~800万円台は約24%です。

住宅ローンを組む場合、返済額の平均的な割合は年収の21~23%。年収600万円の世帯で無理なく返済できる月々の額は10~13万円程度となります。ただし返済期間や金利のタイプ、頭金の額によっても変わってくるので、将来のマネープランを見通し、無理のない計画を立てることが大事です。

車…250万円前後のミニバンが人気

ファミリーカーとして人気が高く、年収に見合うのはだいたい250万円前後の燃費の良いミニバンになります。エコカーやコンパクトカーに乗って維持費を削減している人も多いでしょう。しかし、年収600万円の子どもがいる家庭では一括購入できるほどの余裕はなく、ローンを組む人も多数。最近は車にかかるお金がもったいないと考える人も増え、都市部では“持たない派”や“手放す派”も少なくありません

貯金…家計に無理なく毎月約4万円

家族が多ければ多いほど日々の生活費が増え、子どもがいれば教育費もかかってくるため、単身者のように月収の2割を貯金に回すと家計は圧迫されます。実際には多くの人の平均貯金額とされる手取り10~15%を目標に、毎月4万円前後を貯蓄していければよいところ。不安を感じる分はボーナスから多めに補てんしている家庭もあるようです。

食費…1ヵ月約74,000円とやや高め

総務省の調査によると、年収600万円以上700万円未満の食費は、77,936万円と家計で食費の占める割合は高いと言えます。たまの休日には家族そろって外食に出かけることもできそうですし、それほど切り詰めた食生活を送らなくてもよさそうです。

※参照→家計調査報告(家計収支編)令和元年(2019年)平均速報結果の概要(Ⅱ.世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯))/総務省統計局

年収600万円は税金を安く収め、手取りを増やすのに好都合

年収600万円を税金の面から見るとどうでしょうか。所得税などの税金は、年収が高いほど税率が高くなります。家族の人数などによって控除に差が出るものの、年収600万では所得税率が10%になる人が多いようです。

所得税の金額は、単純に「年収×税率」で計算されるわけではありません。年収から給与所得控除や基礎控除などが引かれたものを「課税所得金額」と呼び、「課税所得金額×税率=所得税額」となります。

額面で年収600万円の場合、もろもろの控除額を引いて課税所得金額を算出すると301万円になり、税率は10%で控除額は97,500円になります。実は年収600万円は税率10%で抑えられるギリギリのライン。下の表を見てわかる通り、その額が330万円を超えてしまうと税率が大幅に上がってしまいます。年収600万円は税金を安く納め、手取り額を多くするのに都合の良い額でもあるのです。

※給与の手取り計算方法について詳しくは→「給料の手取り計算方法&平均給与の実態

所得金額と税控除の表。

※控除額は、1,000円未満を四捨五入した金額です。

※参照:
国税庁公式サイト「所得税の税率」

転職して年収600万を目指すには

今の年収に不満を持っている人は、年収アップを目指せるところに早めに転職するのが得策です。どうすれば思い通りの転職が叶うのか探っていきましょう。

転職で年収600万円を目指すなら「年収の高い同業種の会社へ」「職種は変えず、年収の高い他業種へ」

年収ベースの高い同業種の会社を狙う

同じ業界であっても業績の良い会社は社員の年収ベースが違います。転職するなら今働いている業界トップの会社に狙いを定めるのも一案。もともと基本給が高くボーナスも良い大手商社やメーカー、マスコミ関係、外資系企業などは若手社員の平均年収が600万円を超えるところもあります。高年収を誇る企業の最新ランキングは次の通りです。

参照→平均年収「全国トップ500社」最新ランキング/東洋経済オンライン

しかしこのような優良会社は新卒採用が優先であることが多く、転職者にとっては狭き門。自力で求人情報を探すより、大手企業に強いパイプを持つ転職エージェントを活用し、プロの力を借りるのもおすすめです。

職種はそのままにキャリアを生かし、年収が良い他業種に的を絞る

現職である程度実績を積んだなら、転職でキャリアを手放すのはもったいないこと。経験やスキルを活かし、年収アップが見込める他業種に飛び込んでみるのもいいでしょう。

営業職にやりがいを感じている人は、今のキャリアに専門的な知識をプラスして活躍できるMR(製薬会社の営業)や証券会社の営業としてが高収入を目指すのもおすすめです。外資系企業であれば能力に応じた報酬も期待できるかもしれません。また、ITエンジニア系の技術職は現在採用ニーズが高い分野。アプリ開発の会社やモノづくりメーカー、メディア関係など引く手あまたです。

一方で事務職は基本的にどこも年収が低い傾向にあり、転職しても年収アップが見込めるとは限らない職種です。よほどの大手企業の特別なポジションでなければ、年収600万円のラインは超えられないと思ったほうがよいでしょう。

年収600万円超えの職業は技術士、公認会計士、税理士など

まずは厚生労働省の調査から、平均年収が600万円台の職業をピックアップしてみました。

<平均年収600万円台の職種>

  • 自然科学系研究者 :681万円(平均年齢 39歳)
  • 技術士      :667万円(平均年齢 46.1歳)
  • 公認会計士、税理士:684万円(平均年齢 42.7歳)
  • 掘削・発破工   :617万円(平均年齢 51.3歳)
  • 電車運転士    :612万円(平均年齢 39.1歳)

※参照→「令和元年賃金構造基本統計調査(職種別第1表 職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計))」/e-Stat

これらはすべて特別な知識や技術、資格が必要な専門職で、難関資格と言われるものも少なくありません。それぞれの職に就くまでには勉強や試験にそれなりの投資が必要となります。しかし苦労をした分、駆け出しの頃から安定して稼げるのがこれらの職業の特徴でもあります。

現在まったく違う仕事をしている人は、いきなりキャリアチェンジして技術士や公認会計士になるのは難しいでしょう。しかし自分のキャリアの先にある資格や専門職を見据えて転職を考えてみるのもいいかもしれません。

まとめ

年収600万円ある人の日常は決して派手なものではなく、家族を養いながらではシビアな現実も見えました。今後の経済状況の雲行きがあやしい現在、年収がたとえ600万円以上あったとしても将来の安泰が約束されるわけではありません。

年収の高さが必ずしも幸せに直結するとも限らず、高望みはせず身の丈に合った生活を送り、安定した老後に備えることが賢明かもしれません。

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