原則禁止でも例外がある? 有給休暇の買い取りは可能?

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なかなか消化できずに溜まった有給休暇。いっそ、会社に買い取ってもらえないかと考えている方も多いでしょう。

この記事では、有給休暇の買い取りは可能なのかから、具体的な交渉方法や、有給買い取りに関する法律までをご紹介します。

有給休暇は会社に買い取ってもらえる?

まずは、「使えなかった有給を会社に買い取ってもらうことはできないか?」という疑問に詳しくお答えします。

有給の買い取りは原則禁止。ただし例外あり

有給休暇の買い取りは、3つの例外を除き、労働基準法で禁止されています

そもそも有給休暇とは、一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労回復を促しゆとりある生活を保障するために付与される休暇です。

しかし、会社が有給休暇を買い取ることを法的に認めると「相応の料金を支払えば有給休暇は与えなくても良い」と解釈される恐れがあります。それでは本来の目的が損なわれるため、買い取りは違法とされているのです。

買い取り可能な例外の3パターン

「有給休暇の買い取り」が例外的に認められるのは、以下の3パターンです。

  • 法律で決められた以上の有給休暇
  • 時効の2年を過ぎ消滅した有給休暇
  • 退職時に残っている有給休暇

それぞれ詳しく見ていきましょう。

【例外1】法律で決められた以上の有給休暇

法律で決められた以上の有給休暇が与えられている場合、その日数については買い取りが認められる場合があります。

「勤続6ヶ月以上で年間10日」など、有給休暇の日数は労働基準法によって定められています。しかし、会社によっては「勤続6ヶ月で15日」など、福利厚生などで定められた日数より多く有給休暇を付与することも。

この場合、規定の日数を超えた「5日分」は有給休暇を会社が買い取っても違法にはならないとされています。

法律で決められた有給休暇の付与日数について詳しくは後述の「有給休暇の基本ルール」をご確認ください。

【例外2】時効の2年を過ぎ消滅した有給休暇

時効によって消滅した有給休暇は、消化できない扱いとなるため会社が買い取りをしても違法にはなりません。

有給休暇は付与された後、2年以内に消化されなければ時効となり自動的に消滅扱いとなります。

例えば2015年10月1日に付与された有給休暇を5日分消化しきれなかった場合、2年たった2017年10月1日以降、その5日間の有給休暇については、会社が認めれば買い取り可能になります。

【例外3】退職時に残っている有給休暇

退職後は当然ながら有給休暇を消化できないため、退職時に残っている有給休暇を会社が買い取りをしても違法にはなりません。

基本的に退職日までに有給休暇を消化することが前提ですが、引き継ぎの都合などで難しい場合は例外として買い取りが認められます。

有給休暇を買い取り交渉する方法とは

例外的に有給休暇の買い取りが認められる場合、買い取り交渉はどのように行えば良いのでしょうか。

ここでは、会社への買い取り申請の方法や、買い取り金額の交渉についてご説明します。

判断は使用者側に委ねられる

例外に該当する場合でも、有給休暇を「買い取る」「買い取らない」は会社が判断します。労働者から会社に買い取りを申請しても、その申請に会社が応じる義務はありません。

そのため、買い取りを希望する場合は会社側と上手に交渉することが不可欠になります。

買い取り交渉の進め方

有給休暇を買い取る場合の法律や決まったガイドラインはありません。会社によって買い取りの申請方法などは異なるので、まずは就業規則を確認しましょう。

ここでは一例として、申請から金額交渉までの流れをご紹介します。

有給買い取り交渉の流れ

1交渉用の資料を用意する

交渉では、会社に「有給を消化できない」理由を説明して合意を得る必要があります。会社に納得してもらえるよう、申請前に業務日誌やタスク管理票など、根拠となる資料を準備しておくことが重要です。

2上長や人事労務担当への申し入れ

有給休暇を買い取ってもらえるよう、上長や人事労務担当へ相談を持ち掛けてみましょう。

買い取りの制度がない場合、「そもそも認められない」と突っぱねられるケースも。その場合は後述する会社側のメリットを説明しつつ、根気強く交渉を進めることが重要です。

もし会社に有給休暇の買い取りに関する取り決めがあり、申請方法が決まっている場合は、それにのっとって申し入れましょう。

3買い取り金額の調整

有給休暇の買い取りが決まったら、買い取り金額をいくらにするか交渉します。有給休暇の買い取り金額が就業規則などで決まっている場合は、それに従うことになるでしょう。規定がない場合は、金額は交渉によって決まります。

買い取り金額は会社による

有給休暇の買い取り金額に一定の相場はなく「会社による」としかいえません。

ここでは、買い取り金額のポピュラーな計算方法として、有給休暇期間の賃金を基準とするケースを紹介します。その計算式は、以下の3通りです。

<有給休暇1日あたりの買い取り金額>

  • 東京都在住
  • 月給25万円(手当は含まない)
  • 有給休暇の買い取りは7月

(1)通常勤務と同等の給料

25万円÷20日(月平均の労働日数)=1万2,500円

(2)労働基準法で定める平均賃金(※)

※平均賃金とは…平均賃金を算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に、その労働者に対し支払われた賃金の日別平均額(総額÷その期間の総日数)

75万円(25万円×3ヶ月)÷91日(4~6月の総日数)=8,242円

(3)健康保険法に定める標準報酬日額に相当する金額

26万円(平成30年度の月給25万円の標準報酬月額<東京都・20等級>)÷30=8,667円

上記の金額は、月の労働日数の計算方法、手当の有無などで大きく増減するため、あくまで目安として考えてください。

また、(1)~(3)のいずれの方法で支払われるかは、企業によってあらかじめ決められています。自社がどれを採用しているか知りたい場合は、就業規則などを確認してみましょう。

会社が有給休暇を買い取るメリット・デメリット

交渉を有利に進めるために、企業側が有給休暇を買い取るメリット・デメリットを把握しておきましょう。

労使双方にメリットがある場合は、有給休暇の買い取りが成功しやすくなります。

メリット

  • 有給消化期間の賃金より買い取り金額が低ければ、経費の負担が減る
  • 退職の場合、有給消化期間中の各種社会保険料の負担がなくなる
  • 退職の場合、有給消化期間中の労働者のトラブルの責任を回避できる

デメリット

  • 有給休暇取得推進の妨げにつながる
  • 就業規則の改定などを行わなければならない

有給の買い取り交渉に当たっては、有給休暇の買い取りによる会社側のメリットをうまくアピールすることが重要です。特に退職の場合は会社側のメリットも大きくなるため、交渉が成功する可能性も高まります。

コラム:買い取りのケースによって、所得税が変わる?

買い取りが認められる3パターンのうち、「退職時に残っている有給休暇」は「退職所得」として扱われるため、所得税の負担額が減り、手取りの金額が多くなります。

一方、「法律で決められた以上の有給休暇」「時効の2年を過ぎ消滅した有給休暇」の収入は普段の給与・賞与と同じく「給与所得」に分類されますので、所得税も同じ税率で差し引かれます。

給与所得と退職所得の分類表

有給買い取りのパターンと所得税の関係

所得税の税率は、「給与所得」や「退職所得」など、すべての所得を合計した総所得金額に応じて決まります。有給消化で給与所得を得るよりも、買い取りで退職所得を得た方が、所得税の負担は軽くなるかもしれません。

とはいえ、所得税の損得だけで有給休暇をお金に替えることはおすすめできません。転職の場合、有給休暇は次の職場への入社準備ができる大切な時間。必要なのはお金か時間か、自分の状況をよく考えてから行動しましょう。

有給休暇の基本ルール

買い取り交渉をする前におさらいしておくべき有給休暇の基本ルール、「付与日数」と「時効による消滅」についてご説明します。

※詳しくは→意外と知らない?年次有給休暇にまつわる知識のすべて

有給休暇の「付与日数」は勤続日数によって決まる

労働基準法で定められた有給休暇の付与日数は、勤続6ヶ月で10日。それ以降は、下の表の通りに増えていきます。

通常の労働者の有給休暇付与日数

働き始めた日からの勤続期間と有給付与日数一覧表。6ヶ月:10日。1年6ヶ月:11日。2年6ヶ月:12日。3年6ヶ月:14日。4年6ヶ月:16日。5年6ヶ月:18日。6年6ヶ月:20日。

なお、労働時間が少ないパートやアルバイトでも、1年間に48日以上の労働日数があれば有給休暇は取得できます。

ただし、週4日労働の場合「勤続6ヶ月で7日」など、付与日数は労働日数に応じて少なくなります。

労働時間が少ない労働者の有給休暇付与日数

労働時間が少ない労働者の有給休暇付与日数一覧表。週4日、年間169~216日働く場合は、6ヶ月で7日、1年6ヶ月で8日、2年6ヶ月で9日、3年6ヶ月で10日…と有給が増えていく。 週3日、年間121~168日日働く場合は、6ヶ月で5日、1年6ヶ月で6日、2年6ヶ月で6日、3年6ヶ月で8日…と有給が増えてはいくが、付与日数は労働日数が減ったため少ない。

有給休暇には時効がある

有給休暇は、発生の日から2年間で時効により消滅します。時効で消滅した有給休暇を消化することはできません。2年以内のものは翌年に繰り越しされます。

前述の通り、時効で消滅した有給休暇は企業が認めれば買い取ってもらえます。

年次有給休暇発生のタイミングと時効のイメージ図

まとめ

有給休暇の買い取りは基本的に違法ですが、例外の3ケースでのみ可能だとわかりました。

有給休暇は消化されることが前提ですが、3ケースに当てはまり、かつ「休みたくても休めない」事情がある方は、この記事を参考に買い取り交渉を考えてみてください。

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