面談の流れと拒否する方法 希望退職を打診されたときの対処法
「希望退職に応募してほしいと声をかけられた」「職場で希望退職の募集が始まるというウワサを耳にした」という方に向けて、希望退職への対処法を解説します。
希望退職の事例や退職金事情については、「早期退職にメリットはあるのか」を確認してください。
希望退職は拒否しても大丈夫?
希望退職とは、人員削減や事業改革を目的に企業が実施する人事施策のこと。
「希望退職の募集時には肩たたきが行われる」とのウワサもありますが、退職を拒否することはできるのでしょうか。
希望退職は、誰もが拒否できる
希望退職では企業による退職の強制が認められていないため、どのような状況でも拒否することが可能です。
希望退職はその名の通り、従業員本人の希望によって退職するかしないかを選べる制度。応募するよう会社から促されるケースもありますが、拒否すれば働き続けることができます。
「拒否すれば降格・異動」という脅しは無効
会社からの「希望退職を拒否するなら、降格させて基本給を減らす」「残ったとしても、地方に転勤させる」などという脅しは、基本的に無効です。
希望退職を拒否した結果、もし一方的に労働条件を下げられた場合は、損害賠償を請求できる可能性があります。このため、脅されたことを理由に希望退職を受け入れる必要はないでしょう。
ただし、「業務の都合により必要がある場合は、配置転換、職務の変更、転勤、出向その他人事上の異動を命じ、または担当業務以外の業務を行わせることがある」など就業規則に定められていたり、雇用契約書に書かれている場合は、こうした労働条件の変更が有効になることもあるので要注意。
あらかじめ規定に目を通し、脅しに根拠があるかどうかを判断できるようにしておきましょう。
コラム:希望退職の応募が認定されない場合もある
希望退職に応募したいと思っても、会社にとって必要な人材だと見なされてる場合、応募が認定(許可)されないこともあるので注意が必要です。
希望退職の対象外の場合は、事前に知らされることが一般的。もし通知より前に応募すると、その後気まずい思いをしてしまう可能性もあるため、希望退職の募集が始まってもしばらくは応募を控えておくのが無難でしょう。
希望退職の募集から面談までの流れ
希望退職は、1.公示→2.面談→3.残留 or 退職の流れで進むのが一般的です。
公示から退職日までの期間は2週間~1ヶ月程度のことが多く、応募人数が少なければ二次・三次と複数回の募集が行われる場合もあります。
1. 希望退職の募集が公示される
希望退職の募集が始まる時は、まず対象者と募集人数、退職の条件が公示されます。
退職の条件は通常の退職や解雇よりも高待遇となるのが基本で、退職金の上乗せや再就職の支援を受けられるケースが多いようです。
公示内容の例
- 対象者
◯◯部門に所属する◯歳以上の社員 - 募集人数
100名程度 - 条件
- 退職金の上乗せ
- 再就職の支援
2. 上司から面談を設定される
募集が公示されたら、上司から面談を設定されます。
主な面談の目的は、希望退職に応募するよう説得すること。面談前に希望退職に応じるか・応じないかを決めておかないと説き伏せられる可能性もあるので、きちんと考えたうえで臨むようにしましょう。
一方、会社にとって必要な人材だとみなされていれば、面談で「応募しないでほしい」と伝えられることもあります。
想定質問への答えを用意しておく
希望退職の面談は会話の型が決まっていることがほとんど。面談でよく聞かれる質問と希望退職を拒否する場合の回答例を紹介するので、参考にしてみてください。
質問 | 拒否したいときの回答例 |
希望退職を希望しますか? | 希望しません。 |
長期的なキャリア目標は何ですか? | 今後もこの会社に残り、自分のできる仕事をすることです。 |
会社から、自分はどのように評価されていると思いますか? | 私は日々真摯に自分の仕事に取り組んでいます。それが会社に伝わっていると思っています。 |
今後、どのように成果を出して行くつもりですか? | 会社の経営戦略に基づいた業務を行い成果を出せるよう、同じ課の人とともに考えてきます。 |
あなたに任せる仕事がなくなると思います。 | 今目の前にある仕事に全力で取り組みます。 |
再就職の支援もあるので、一度話を聞いてみてほしいです。 | 退職する気はないので、再就職支援は必要ありません。 |
引き続き面談をしてもいいですか? | 退職する気はないので、面談は必要ありません。 |
回答時のポイントは、はっきりと「会社に残りたい」と伝えること。自信を持って答えられなければ、退職するよう説得されてしまう可能性があります。
また、回答が長くなるほど面談が長引き説得が続くリスクがあるため、簡潔に答えることも大切です。
しつこい面談は、証拠を残しておく
希望退職を拒否すると、何度も面談を設定されて退職を促され続けたり、「応じないと解雇する」などと脅しを受けたりする可能性があります。
退職を強く促されるほど拒否しづらくなってしまうかもしれませんが、こうした場合は悪質な退職勧奨として会社を訴えることが可能なので、必要以上に不安を感じる必要はありません。
証拠のあるなしが判決を左右するため、面談の音声やメールの文面などの記録をまとめたうえで、弁護士などの専門家に相談するようにしましょう。
▼悪質な退職勧奨の対処法
3. 拒否して残留 or 応募して退職
面談後は、拒否して残留するか、応募して退職するか結論を出す最終段階に入ります。
拒否して残留する場合でも、正当な理由があれば仕事内容が変わったり、基本給や手当・ボーナスが減額される可能性もあるため、「それでも会社に残って働く」という覚悟を固めておくのが大切です。
応募して退職する場合は、業務の引き継ぎや有給消化を行って退職日を迎えます。このとき、退職後も働き続けたい場合は在職中に転職活動をはじめるのが重要。
しばらくは退職金や失業給付で生活できますが、離職期間が長いほど再就職は難しくなり、最終的には収入がなくなってしまいます。
コラム:希望退職に応募したほうがいい人とは?
「希望退職を実施する」と聞けば誰もが身構えてしまうものですが、退職金の上乗せといった条件を鑑みると、人によっては応募しても問題ないと言えるでしょう。
希望退職に応募しても問題ないと言える人は主に2パターン。1つ目は、希望退職をステップに第ニの人生を歩める見通しが立っているケースです。次の条件にすべて当てはまるようなら、希望退職への応募を視野に入れてみるのもいいでしょう。
退職後の生活費が計算できており、それをまかなえる貯蓄がある
アーリーリタイアする場合、仕事以外にやりたいことがある
転職する場合、退職日までに転職先を決められる
家族が納得している
2つ目は、希望退職を拒否して会社に残るほうが、デメリットが大きくなってしまうケース。次の条件にひとつでも当てはまれば、希望退職に応募して次の職場探しをはじめるのが得策かもしれません。
残留後、望まない部署に異動させられたり、生活水準を保てないほど給料が減ったりする可能性が高い
希望退職を回避しても、将来的に解雇や倒産のリスクがある
希望退職を拒否すると、会社に居づらくなりそう
※これらに当てはまる場合でも、退職後早いうちに転職先が決まる見通しがなければ残留したほうがいい可能性が高い
希望退職に応募するにせよしないにせよ、その後の生活を具体的にイメージした上で現実的な判断をすることが何よりも大切。
希望退職に応募するメリットとデメリットは、「早期退職に応募するメリット・デメリット」で解説しています。
会社の先行きが不安なら、早めに資産形成を
希望退職に応募する場合でも、拒否する場合でも、老後の資金形成については早めに考えておきたいところ。参考になる記事を紹介します。
▼周りはどのくらいの退職金をもらってる?
▼今から始められる資産形成とは?
この記事の監修者
特定社会保険労務士
成澤 紀美
社会保険労務士法人スマイング
社会保険労務士法人スマイング、代表社員。IT業界に精通した社会保険労務士として、人事労務管理の支援を中心に活動。顧問先企業の約8割がIT関連企業。2018年より、クラウドサービスを活用した人事労務業務の効率化のサポートや、クラウドサービス導入時の悩み・疑問の解決を行う「教えて!クラウド先生!®(商標登録済み)」を展開。