パートとの違い・待遇など 嘱託社員とは?わかりやすく解説
嘱託社員とはどんな働き方なのか、意外と知らない方も多いのでは?
ここでは、嘱託社員の定義やパートタイマー・派遣社員との違い、嘱託社員になった場合の待遇などをわかりやすく解説します。
嘱託社員とは?
まずは嘱託社員の定義、派遣やパートとの違いを説明します。
嘱託社員とは非正規雇用のひとつ
嘱託社員は非正規雇用・短時間労働者を指す言葉として使われています。
嘱託社員に法律上の明確な定義はないため、嘱託社員の定義は会社によって異なります。
「嘱託」には、もともと仕事を頼んで任せるという意味があります。
銀行員や公務員の場合は、子育て世代の方が時短勤務のような形で嘱託社員として働いている場合もありますが、通常、嘱託社員としてよくあるケースは以下の2つです。
定年退職後の再雇用契約で働く
嘱託社員という言葉は多くの場合、定年後に再雇用された人のことを指しています。
総務省の調査によると2018年の嘱託社員数は約120万人です。嘱託社員数は増加の傾向にあり、年金の受給が60歳から65歳に引き上げられた2013年から5万人増加しています。
業務委託された専門家として働く
医師や看護師など専門的な知識・技術を持つ人のうち、企業などから業務を請け負っている人を嘱託社員と呼ぶことがあります。
医師の場合は、民間の企業や工場に産業医として勤めることがあり、産業医の多くは嘱託という雇用形態を取っています。
パートや派遣との違いは?
パートタイマーとは呼び方が異なるだけですが、派遣社員とは雇用契約先に違いがあります。
パートとの違いは呼び方のみ
嘱託社員とパートタイマーは呼び方が異なるだけで、法律上はどちらも短時間労働者(パートタイム労働者)にあたります。
短時間労働者とは、正社員・正職員と比べて1週間の所定労働時間が短い労働者のことです。どういう呼び方を使うかはそれぞれの会社・組織に任されています。
派遣との違いは雇用契約先
嘱託社員と派遣社員は雇用契約の相手が異なります。
嘱託社員は本人が実際に働く企業と雇用契約を結んでいますが、派遣社員の雇用契約先は勤務先を紹介した人材派遣会社です。
※派遣社員について詳しくは→派遣社員とは?わかりやすく解説
コラム:定年から嘱託社員退職までの流れ
定年後に嘱託社員として働くことになった場合、退職までどんな流れになるのでしょうか。
60歳定年制の会社で働く営業部マネージャー、Aさんの場合を見てみましょう。
59歳 | 年金受給が始まる65歳まで働きたいと考え、会社に打診して嘱託社員として再雇用されることが決まる |
60歳 | 定年のため一旦退職し、マネージャー職を外れて嘱託社員として再び働き始める |
60~64歳 | 嘱託社員として勤務を続ける |
65歳 | 年金受給が始まるため、退職する |
Aさんは定年後も働くことを希望していたため、正社員から嘱託社員になることを選び、年金受給までの5年間を嘱託社員として過ごしました。
嘱託社員として雇用される際に執行役員などの役職が外れるケースは珍しくなく、会社内での役割は正社員時代から変化する可能性があります。
嘱託社員となってマネージャー職を降りることになったAさんですが、労働政策研究・研修機構の調査によると、Aさんと同じように定年に際して継続雇用された人のうち約4割が、再雇用後に責任の重さや業務内容が一部変わったと感じたようです。
通常、嘱託社員を含む有期雇用労働者は働き始めてから5年で無期雇用に転換されますが、定年後の再雇用では例外とされています。
Aさんの場合は、年金受給が始まる65歳で退職しましたが、もしも定年から5年経った後も働き続ける場合は、その都度契約を更新する必要があります。
嘱託社員の待遇や福利厚生は?
ここでは、嘱託社員になった場合の給与、退職金やボーナスの有無、社会保険や有給休暇について解説します。
給与は正社員より低い場合が多い
勤務時間・日数が少ないことや仕事内容の違いにより、嘱託社員の給与は正社員に比べて低くなることが多いです。
総務省の調査によると、嘱託社員は年収200~299万円の層が最も多い一方、正規労働者で最も多い層は300~399万円で、100万円単位の差があります。
※参考→平成30年(2018年)平均結果統計表 第3表より作成|総務省統計局
また、労働政策研究・研修機構によると、定年後の再雇用契約の場合は正社員時より2~5割賃金が減少するようです。
ただし、業務委託された専門家の場合など、能力を買われて嘱託社員となった場合は正社員より低いとは限りません。
退職金をもらえるかは雇用契約内容による
退職金があるかどうかは、雇用契約書や就業規則の内容次第です。契約を結ぶ段階で退職金に関する項目を確認しましょう。
定年後再雇用の場合は、主に2つのケースに分かれます。
【嘱託の退職金があるケース】
定年時に正社員分の退職金をもらい、最終退職時にさらに嘱託社員分の退職金をもらう
【嘱託の退職金がないケース】
定年時に正社員分の退職金をもらい、最終退職時は特別何も支払われない
(就業規則に、「再雇用を行った場合は、最終退職時にまとめて支給する」などの規則がある場合は例外)
ボーナスがあるかどうかも勤める会社次第
会社の雇用契約書や就業規則で嘱託社員もボーナスの対象になると定められていれば、もらうことができます。
ボーナスは法律によって支払いが義務づけられているものではないため、ボーナスがない場合も違法ではありません。
社会保険は条件を満たすと入れる
嘱託社員でも社会保険(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)に加入できます。
ただし労災保険以外は一定の条件を満たす必要があるため、事前に確認しておきましょう。
【雇用保険】
- 31日以上雇用される見込みがある
- 週20時間以上勤務する見込みがある
- 学生ではない(例外あり)
【健康保険・厚生年金保険】A、Bいずれかに当てはまれば加入できる
(A)
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 賃金月額が月8.8万円以上
- 1年以上の勤務が見込まれる
- 従業員数501名以上(厚生年金の被保険者数)
- 学生でない
(B)
- 「1週の所定労働時間」および「1ヶ月の所定労働日数」が正社員の4分の3以上
- 雇用契約期間が2ヶ月を超える見込みがある
※社会保険について詳しくは→「社保完備」ってどういう意味?
嘱託社員も有給を取れる
以下2つの条件を満たせば雇用形態に関わらず有給休暇が付与されます。
- 働き始めた日から6ヶ月経過していること
- その期間の全労働日の8割以上出勤したこと
もしも同じ会社で正社員から嘱託社員に契約形態が変わった場合は、継続雇用にあたるため6ヶ月を経過せずとも有給の付与対象になります。
ただし、有給が何日間もらえるかは労働時間・日数によって異なります。
※有給休暇について詳しくは→年次有給休暇にまつわる知識のすべて
コラム:嘱託社員から正社員になれる?
採用時に合意した内容次第では、嘱託社員から正社員になれる場合があります。
嘱託社員から正社員になりたいと考えている場合は、雇用契約を結ぶ段階で内容を確認しましょう。
また、もともとの契約内容にかかわらず、契約が更新されて通算5年を超えると無期労働契約に転換することができます。
まとめ
正社員より給与は少ないものの、会社によっては正社員に近い待遇や福利厚生が望める嘱託社員。
今後のキャリアとして選択肢の一つにしてはどうでしょうか。