ゆとりある生活は可能? 月収70万円はすごい?手取り・年収を公開

会社員で「月収70万円」になると、手取りはどれくらいで、どのような生活を送ることができるのでしょうか。

今回は、月収70万円の人の手取り額や生活レベルについて、くわしく解説します。

月収70万円の手取り・年収はいくら?

ここでは、月収70万円の手取り額税金・保険料の天引き率年収額などを紹介します。

※「月収」は、ボーナスや残業代を含む年間の総収入を12カ月で等分した金額です。基本給と各種手当など、毎月固定で支払われる「月給」とは異なります。

月収70万円の手取りは52万円前後

毎月の総支給額が70万円である場合、税金や保険料を差し引いた手取り月収は52万円前後になります。手取りとして、手元に総支給額のおよそ75%が残るイメージです。

ただし、具体的な手取り額は養っている家族の人数や、支払っている保険料などによって変わります。

モデルケースとして「既婚・子ども1人」と「独身」の2世帯の手取り額と、税金・保険料の天引き額を計算しました。

【月収70万円の手取り月収の例】▼東京都・50歳・既婚・15歳以下の子ども1人の場合/手取り額:52万6,704円/天引き額:17万3,296円(天引き率:24.8%)/健康保険料:3万5,500円/介護保険料:6,461円/厚生年金保険料:5万9,475円/雇用保険料:4,200円/所得税:3万3,060円/住民税:3万4,600円【▼東京都・35歳・独身の場合】手取り額:51万3,025円/天引き額:18万6,975円(天引き率:26.7%)/健康保険料:3万5,500円/厚生年金保険料:5万9,475円/雇用保険料:4,200円/所得税:4万7,100円/住民税:4万700円|※利用ツール:ZEIMO「給与手取り額計算ツール」

月収70万円は税金・保険料で総支給額の約4分の1が天引きされると考えておけば良いでしょう。

妻や子どもなど扶養家族がいる人は、配偶者控除や扶養控除が受けられるため、独身の人に比べると天引き率はやや下がります。

給料の手取りの計算についてくわしく

月収70万円の手取り年収は約620万円

月収70万円の場合、額面年収は840万円(月収70万×12カ月)です。

毎月の手取りは約52万円であることから、手取りの年収は624万円前後になります。

〈月収70万円の場合〉

額面年収
=毎月の額面月収70万円×12カ月
=840万円

手取り年収
=毎月の手取り月収およそ52万円×12カ月
=およそ624万円

月収70万円の人の割合は?どれくらいいる?

月収70万円と聞くと「高収入」「すごい」というイメージを抱くかもしれませんが、実際どれくらいの人がいるのでしょうか。

月収70万円(年収800万円)台の人はおおよそ3%

国税庁の調査によると、月収70万円台の人の多くが該当する「年収800万円超~900万円以下」の人は全体の約2.9%しかいません。

給与階級別のくわしい割合は、以下のとおりです。

給与所得者の構成比(%)/~100万円、8.1~/200万円、13.3/~300万円、14.8/~400万円 17.4/~500万円、15/~600万円、10.5/~700万円、6.7/~800万円、4.6/~900万円(801~900万円)、2.9/~1,000万円、1.9/1,000万円~、4.9

年収800万円超の人は合計しても約9.7%で、全体の1割にも満たない結果となっています。

※国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査

男性では全体の4.4%弱、女性では1%以下

国税庁の調査結果を男女別に見てみると、男性で年収が800万円超〜900万円以下である人は全体の6.8%でした。

また、年収が800万円を超えている男性の割合は15%でした。およそ7人に1人です。

一方で、女性で年収800万円超~900万円以下である人は全体のわずか0.8%でした。年収800万円を超えている女性の割合をすべて合わせても2.4%で、50人に1人程度しかいない計算になります。

男女別給与所得者の構成比(%)/~100万円 3.5/~200万円、6.7/~300万円、10.5/~400万円、16.9/~500万円、17.5/~600万円、13.8/~700万円、9.4/~800万円、6.8/~900万円(801~900万円)、4.4/~1,000万円、3/1,000万円~、7.6

最も割合が高い給与階級は、男性で400万円超500万円以下、女性で100万円超200万円以下です。年収800万円以上の人は給与面において、男女問わず日本のトップクラスに入ると言えるでしょう。

※出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査

月収70万円台の半数以上が50代

厚生労働省の調査を見ると、月収70万円台の人のうち半数以上(53.7%)が50代でした。

20~30代は合計しても10%しかいないのに対し、40~50代だけで全体の80%以上を占めています。

【月収70万円台の年代別割合】20代:1.3%/30代:9.3%/40代:26.9%/50代:53.7%/60代:8.1%/70代:0.6%

月収70万円台に40~50代が多い背景としては、日本でいまだに根強い年功序列制度により勤続年数に比例して基本給が上がっていく影響や、管理職などを任せられて役職手当が支給されることが考えられます。

20代・30代の若手で月収70万円を達成するには、圧倒的な成果を出してスピード出世をするなど、相当な努力や工夫が必要になるでしょう。

※出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 学歴、年齢階級、所定内給与額階級別労働者数及び所定内給与額の分布特性値 産業計」

月収70万円の生活レベルとは?

月収70万円の人は、実際にどのような生活を送っているのでしょうか?

50歳・既婚・15歳以下の子ども1人」と「35歳・独身」の2世帯を例に、1カ月の家計簿をシミュレーションしてみました。

【▼50歳・既婚・15歳以下の子ども1人の場合】月収70万、手取り52万円/・住宅ローン:15万円(東京都23区内、新築マンション、2LDK、5,000万円)/・光熱費:2万円/・通信費:2万円/・食費:8万円/・日用品・衣類:4万円/・自動車:3万円/・保険料:3万円/・交際・娯楽費:3万円/・教育費:6万円/・夫の小遣い:3万円/・妻の小遣い:3万円/・貯金:0円(ボーナスを貯金にまわす)

【▼35歳・独身の場合】月収70万、手取り51万円/・家賃:16万円(東京都心、新築マンション、1LDK)/・光熱費:2万円/・通信費:2万円/・食費:7万円(外食がメイン)/・日用品・衣類:5万円/・自動車:3万円/・保険料:3万円/・交際・娯楽費:5万円/・貯金:8万円

【住居】住宅ローンは4,200万円、家賃は約16万円前後

家やマンションを購入する場合、住宅ローンは年収の5倍程度で組むことが多いため、ため、月収70万円(年収840万円)なら4,200万円程度が目安です。

頭金ナシの場合、東京都なら板橋区や練馬区、江戸川区あたりで専有面積70平米程度の2LDKや3LDKの中古マンションを購入できるレベルです。足立区や葛飾区であれば、同程度の広さのマンションを3,000万円台で購入できます。

また、頭金を用意できる場合や、共働きで世帯収入が840万円より多い場合、5,000万円台の物件を購入することも十分可能でしょう。

一方で賃貸の場合は、一般的に家賃は手取り月収の3割が目安と考えられているため、15万6,000円程度を住居費にかけることができます。東京なら、都心のマンションの2LDKが借りられる程度の金額です。

ただ、独身の場合は既婚者に比べて、結婚生活の費用や子どもの教育費などがかからないため、ほかの支出を調整できれば、住居費に15~16万円以上かけても問題なく生活できるでしょう。

【貯金】月8万円以上が理想

貯金にまわす金額は手取りの15%前後が理想とされることが多く、月収70万円(手取り月収52万円)の場合は月8万円以上が目安となります。年間では100万円程度の貯金ができれば十分と言えます。

子どもを育てながら住宅ローンも返している人は、70万円程度の月収があっても養育費・教育費がかさんで毎月貯金することが難しい場合もあります。

ボーナスをすべて貯金にまわすなどの工夫が求められます。

【結婚】片働きでもゆとりある結婚生活が可能

月収70万円の場合、結婚して片働きになってもゆとりある生活を送ることができると考えられます。

総務省統計局の調査によると、月収70万円台の人が多く該当すると思われる「年収767万円~890万円」の階級において、2人以上の世帯の1カ月あたりの消費支出は平均34万1,340円で、年間にすると約410万円でした。

月収70万円の手取り年収は約620万円であるため、年間210万円程度を貯金に回したり臨時の支払いに充てたりできる計算になります。

ただし、上記の調査データは家賃の支払いがない世帯を含めた平均値を示しており、1世帯あたりの住居費が約2万3,000円と低くなっています。そのため、賃貸物件に住む場合や住宅ローンの返済がある場合は、平均の消費支出額よりもさらにプラスの支出がかかることで年間210万円ほどはゆとりがない状態になるしょう。

※出典:総務省統計局「2022年 家計調査 家計収支編 第2表 年間収入五分位・十分位階級別1世帯当たり1か月間の収入と支出(二人以上の世帯)

【子育て】オール私立なら生活費のゆとりは少ない

月収70万円(手取り年収620万円)で片働きで子どもを育てる場合、幼稚園から大学まで私立学校に通わせるなら生活のゆとりは想像以上に少なくなります

子どもを幼稚園から大学まで「オール私立」で通わせるとなると、養育費・教育費の総額は公立校と比較して1,400万円程度多くなります。大学卒業まで22年かかるとすると、出費が年間64万円増える計算です。

総務省統計局の調査結果から、月収70万円世帯の年間支出が養育費・教育費を含めて約410万円程度であるとすると、生活費のゆとり約210万円のうち3分の1がなくなってしまうことになります。

さらには年間100万円程度を貯金したり、臨時の支払いが発生したりすることを考慮すると、子どもを小さいうちから私立校に通わせるなら月収70万円であっても、暮らしの余裕は案外ありません。

ただ、共働きの正社員で安定した収入がある場合には、オール私立でも一定の生活のゆとりを確保できるでしょう。

※出典:文部科学省「令和3年度子供の学習費調査 調査結果の概要」「国公私立大学の授業料等の推移

【公立学校と私立学校の学費(総額)の目安】教育課程/公立の学費/私立の学費/私立と公立の差額/幼稚園/3歳/13万3,353円/30万9,170円/17万5,817円|4歳/14万838円/27万6,125円/13万5,287円|5歳/19万8,555円/33万9,341円/14万786円/小学校1年生/37万9,539円/213万6,449円/175万6,910円|2年生/28万3,211円/140万2,725円/111万9,514円/3年生/31万5,794円/151万9,595円/120万3,801円|4年生/32万9,198円/159万2,088円/126万2,890円|5年生/38万774円/168万3,972円/130万3,198円|6年生/42万3,506円/166万4,831円/124万1,325円|中学校/1年生/53万1,544円/180万6,991円/127万5,447円/2年生/44万3,848円/121万8,559円/77万4,711円|3年生/ 64万925円/127万8,255円/63万7,330円/高校(全日制)/1年生/62万9,459円/127万6,978円/64万7,519円|2年生/45万7,895円/94万1,873円/48万3,978円|3年生/45万5,762円/93万7,550円/48万1,788円/大学/4年制|253万6,757円/396万9,723円/143万2,966円|合計/828万958円/2,235万4,225円/1,407万3,267円|※大学は令和3年度の入学料+授業料(4年分)より算出

月収70万円を目指せる業界・職種の特徴

どのような仕事に就けば月収70万円以上稼ぐことができるのでしょうか。

ここでは、月収70万円以上を超えることがある業界や職種の特徴について紹介します。

【業界】インフラ・金融・保険・情報通信など

インフラ・金融・保険・情報通信などの業界で企業規模が大きい会社に入り、着実に成果を残して昇進すれば、40代後半~50代後半で月収70万円程度になる可能性が高くなると考えられます。

国税庁の調査によると、月収70万円以上の人が該当すると考えられる「年収800万円以上」の給与所得者の割合が特に高い業界は「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融業・保険業」「情報通信業」でした。

年収800万円以上の人の割合(業界別)

業界 割合
電気・ガス・熱供給:水道業 41.7%
金融業、保険業 27.6%
情報通信業 21.9%
学術研究、専門・技術サービス業、教育、学習支援業 16.4%
製造業 14.2%
建設業 12.6%
不動産業、物品賃貸業 10.3%
複合サービス事業(郵便局、協同組合) 8.2%
卸売業、小売業 6.8%
サービス業 5.7%
運輸業、郵便業 5.2%
医療、福祉 5.2%
農林水産・鉱業 3.9%
宿泊業、飲食サービス業 1.9%

また、上記の調査を企業の企業規模で見ると、年収800万円以上の給与所得者の割合が最も高いのは資本金10億円以上の企業でした。

【企業規模別/年収800万円超の社員】<企業規模(資本金)/割合>2,000万円未満/5.6%|2,000万円以上5,000万円未満/5.6%|5,000万円以上1億円未満/6.3%|1億円以上10億円未満/11.0%|10億円以上/24.4%

これは、企業の資本金が多くなるほど経営が安定していて、基本給が高かったり手当が充実していたりする傾向があるため、高収入の人の割合も多くなると考えられます。

※出典:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査結果

【職種】専門資格が必要で、独立も可能な職種

一般的な職業でも業績を上げたり役職に就いたりすれば、高月収を目指せる可能性が十分ありますが、専門性の高い資格を持っている人は、平均的に収入が高い傾向があります。

例えば司法書士や弁護士などの「士業」と呼ばれる職業は、平均年収が800万円前後(月収70万円程度)です。

厚生労働省が運営する職業情報提供サイト「jobtag」の各職業年収データによると、平均年収が800万円前後の士業職種は以下のとおりです。

士業と呼ばれる職業の平均年収

職種

平均年収

  • 弁護士
  • 司法書士
  • 弁理士
  • 土地家屋調査士

971.4万円

  • 中小企業診断士
  • 社会保険労務士

780.9万円

※出典:厚生労働省「jobtag

※令和4年賃金構造基本統計調査の結果を加工して作成

これらの仕事は、経験を積んでから個人事業主やフリーランスとして独立し、さらに年収を上げることも可能です。

なお「士業」に就くためには、資格を取得する必要があります。資格試験の難易度は高く合格率は低いため、試験に受かるためには学習時間を十分に確保して、念入りに準備する必要があります。

転職して年収アップを狙うには?

給料を上げる方法の一つとして「転職」という選択肢がありますが、必ずしも年収が上がるわけではないため、まず給与が上がる仕組みを理解することが大切です。

下記の記事では、年収を上げる方法給与が高い業界・会社に転職する方法を紹介しています。

この記事の執筆者

「転職Hacks」編集部

株式会社クイック

株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。

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