もらうための3つの条件 就業促進定着手当とは?計算式や申請方法

「せっかく再就職したけれど給与が離職前より減ってしまった……」そんなときは就業促進定着手当が受け取れるかもしれません。

就業促進定着手当の支給条件と計算式、申請方法について解説します。

就業促進定着手当とは?

雇用保険の一種である就業促進定着手当の概要について解説します。

再就職により賃金が下がった時に支給される手当

就業促進定着手当とは、「再就職手当」の支給を受けた人のうち、再就職先で半年以上働いたものの、その半年間に支払われた賃金が離職前より少なくなった場合に支給される給付金のことです。

「再就職手当」とは、原則として失業保険の給付期間の1/3以上を残した状態で再就職が決まった場合に支給される手当。

就業促進定着手当は再就職手当を支給された上で、さらに賃金が減ってしまった人のみに支給される、かなり対象者が絞られる手当と言えます。

就業促進定着手当が支給される人の具体例

転職活動をしないまま前の会社を自己都合で退職。失業保険(基本給付)の給付期間が90日間あったが、受給開始後1カ月ほどで早期に再就職をした。

再就職後は、給付期間の残りの60日分の再就職手当を受給しつつ、同じ会社で半年間働いた。しかし、再就職先は離職前の職場よりも月給が少なく、半年の中で給料が上がった月もなかった。

そのため、再就職先での半年間の賃金は、離職前よりも少なくなってしまった。

雇用保険の主な給付(1)基本手当:失業状態にあるときにもらえる。(2)再就職手当:早期に就職が決まったときにもらえる。(3)就業促進定着手当:再就職後の賃金が離職前より減ったときにもらえる。

▼再就職手当についてくわしく

▼基本手当についてくわしく

就業促進定着手当支給の3つの条件

就業促進定着手当を受給するためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

再就職手当の支給を受けていること

就業促進定着手当を受給するには、再就職手当を受給している必要があります。離職期間が長いといった理由で再就職手当を受給していない場合、就業促進定着手当も支給されません。

就業促進定着手当の支給申請書は再就職手当の支給決定通知書と一緒に送られてくるため、紛失しないように保管しておきましょう。

再就職後、同じ職場で半年以上働き、かつ雇用保険に加入していること

就業促進定着手当を受給するためには、再就職の日から同じ職場に半年以上勤務しており、かつ雇用保険に加入している必要があります。

半年が経過する前に出向などによって勤務先が変わってしまうと、たとえそれが事業主の都合であっても就業促進定着手当が支給されなくなる可能性があります。

再就職後の賃金が離職前より低いこと

就業促進定着手当を受給するためには、再就職後半年の間に支払われた賃金の1日分の額(賃金日額)が、離職前の賃金日額より低いことも条件のひとつです。

注意すべきポイントは、比較するのが半年間に支払われた賃金の「総額ではなく日額である」という点。賃金日額の計算方法は次の章で解説します。

就業促進定着手当支給額の計算方法

就業促進定着手当の支給額の計算方法について解説します。実際どのくらい支給を受けられるのでしょうか。

就業促進定着手当=賃金日額の差額×支払い基礎日数

就業促進定着手当で支給される金額は、離職前と再就職後の賃金日額の差額に、再就職後の賃金の支払い基礎となった日数を掛けて算出できます。

ただし、就業促進定着手当の金額には上限があるため、この計算式で算出した額が満額支給されるとは限りません。「差額が大きいほど就業促進定着手当も多く支給される」わけではないので、注意しましょう。

 就業促進定着手当の支給計算式:(離職前の賃金日額-再就職後の6カ月間の賃金日額)×再就職後6カ月間の賃金の支払い基礎日数

就業促進定着手当で支給される金額について、月給27万円から月給25万円になった場合、月給27万円から時給1,200円になった場合の2つの例を紹介します。

〈離職前・再就職時の条件〉

  • 離職時の年齢:28歳
  • 再就職日:2019年4月1日
  • 離職前の月給:27万円/賃金日額:9,000円
  • 基本手当日額:5,699円
  • 失業保険支給残日数:60日
  • 再就職手当の受給率:70%

月給27万円から月給25万円になったとき…102,582円

就業促進定着手当は102,582円支給されます。

再就職先と離職前の職場の賃金の差額は122,061円となるものの、上限額を超えているため結果的に支給される金額は上限の102,582円となります。

月給27万円から時給1,200円になったとき…102,582円

再就職先と離職前の職場の賃金の差額は494,000円となりますが、上限額を超えているため、この場合も結果的に支給される金額は上限の102,582円となります。

※再就職先では週5日、6時間勤務、4/1~9/30までの26週働いた場合を想定

▼計算式についてくわしく

コラム:パートだと就業促進定着手当が支給されない?

離職前はフルタイムで働いていた人が、再就職後はパートやアルバイトなど日給制・時給制に変わった場合、就業促進定着手当が支給されないことがあります。

なぜなら、離職前よりも給料の総額は減ったものの、フルタイムだったと比べて働いた日数が少ないため、日割りの賃金日額は減っていないことがあるからです。

気になる方は半年間の賃金総額ではなく、賃金日額を計算してみると良いでしょう。

就業促進定着手当の申請方法と申請期間

就業促進定着手当の申請に必要な書類や申請期間について解説します。

4つの必要書類をハローワークに提出する

下記4点を再就職手当の支給を受けたハローワークへ提出します。窓口へ直接持参するか、郵送でも構いません。 

1就業促進定着手当支給申請書

就業促進定着手当支給申請書とは、「再就職手当」の支給決定通知書が送られてくる際に同封されている書類です。申請に必要な書類なので捨てずに手元に取っておきましょう。

就業促進定着手当は自分で記入する箇所の他に、再就職先の会社に記入してもらう箇所もあるので、注意が必要です。

▼記入方法についてくわしく

2雇用保険受給資格者証

雇用保険受給資格者証は、離職後にハローワークで所定の手続きを行い、雇用保険の受給資格確認後に渡される書類です。

万が一紛失してしまった場合は、ハローワークに本人確認書類(運転免許証など)と印鑑(本人が直接申請する場合は署名でも可)を持参すると再発行することができます。

3出勤簿またはタイムカードの写し

再就職先の会社に支給申請書の記入を依頼する際に、支給申請書に記載した期間(※注1)の勤務状況を証明する出勤簿またはタイムカードの写し(※注2の手配も併せて依頼しましょう。

4給与明細または賃金台帳の写し

出勤簿またはタイムカードの写しと同時に、支給申請書に記載した期間(※注1)の賃金を証明する給与明細または賃金台帳の写し(※注2の手配も再就職先の会社に併せて依頼しましょう。

※注1再就職の日から6カ月間。ただし再就職の日が賃金締切日の翌日ではない場合、再就職後最初の賃金締切日後の6カ月間

※注2:再就職先の会社から提供してもらう各資料の写しには原本証明が必要です。原本のコピーの余白に、以下の内容を会社に記入してもらいます。

  • 原本と相違ない旨を証明する文章
  • 証明する日付
  • 事業主の名称
  • 事業主の代表者の役職名
  • 事業主の代表者名
  • 事業主の代表者印

〈原本証明の書き方(例)〉

この写しは原本と相違ないことを証明します。

令和〇年〇月〇日
株式会社〇〇〇
代表取締役 〇〇 〇〇【印】

申請期間は再就職から6月後の翌日から2カ月以内

就業促進定着手当の支給申請ができるのは再就職から6月が経過した翌日から2月間となっています。

就業促進定着手当の申請には、再就職先に支給申請書の記入を依頼しなければならないだけでなく、出勤簿(またはタイムカード)の写しや、給与明細(または賃金台帳)の写しも手配しなければなりません。

再就職から6カ月経ってから準備を始めていては申請期間を過ぎてしまう可能性もあるため、賃金が減りそうな見込みがあれば、6カ月を経過する前に準備を開始するのがおすすめです。

申請期間を過ぎても2年以内なら大丈夫

万が一申請期間が過ぎてしまっても、2年の時効の期間内であれば申請が可能です。

就業促進定着手当の申請期間/・再就職後6カ月経過した翌日から2カ月間・申請期間を過ぎても2年以内なら申請できる

申請から何日くらいで振り込まれる?

自治体によって変動はありますが、就業促進定着手当の支給申請手続きが完了してから支給決定通知書が届くまでおおむね2週間~1カ月程度、振込は支給決定通知書が届いてから1週間以内です。

まとめ

就業促進定着手当を受給するためには「再就職手当を受給していること」「再就職後、同じ職場に半年以上勤めていること」「再就職後の賃金日額が離職前より減っていること」という3つの条件を満たす必要があります。

また、申請期間は再就職してから半年たったのち2カ月と短いため、申請に必要な書類は早めに準備しましょう。

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

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