比較方法・複数内定の場合も解説 後悔しない転職先選びの決め手とは?
転職活動で内定をもらったとき「他の会社からも内定が出たけれど、何を決め手に選んだらいいの?」「現職と比べて良いところも悪いところもあって決めきれない」と悩む人も多いでしょう。
この記事では、転職先を選ぶ決め手となる8つの判断軸と、後悔しない転職先を選ぶための5つのステップを紹介します。
転職先を選ぶ決め手となる8つの判断軸
転職先の企業を選ぶときの「決め手」になりえるものは、大きく下記の8つの判断軸に分けられます。
その転職先に入社するかどうかを決める前に、それぞれの軸で転職先および現職の企業を評価し、比較しましょう。
8つの判断軸について、一つずつくわしく見ていきましょう。
仕事内容・やりがい
仕事内容ややりがいは働く意欲につながり、長期的なキャリア形成を考える上でとても大切な項目です。
給与やワークライフバランスなどが希望通りでも、仕事にやりがいを感じなければモチベーションが低下し、十分な成果を出せず、将来的には評価されなくなる可能性もあります。
どんなことにやりがいを感じるのかは人によってさまざまです。「どんな仕事をするのか」だけでなく、「新しいことにチャレンジすること」「成長を実感できること」「他者に貢献すること」「会社に評価されること」などにやりがいを感じる人もいます。
転職先の仕事や働き方に、自分なりのやりがいを感じられるかどうか考えてみましょう。
給与・待遇
転職先の企業で安定した収入を得られることは、生活レベルの維持や向上、プライベートの充実につながります。成果に応じたインセンティブ、資格・役職に応じた手当などは、仕事やスキルアップのモチベーションにもつながるでしょう。
転職時点の月給や年収だけでなく、年齢や役職に応じた給与テーブルも、今後の人生プランを考えていく上で大切なポイントです。
入社前に正確な給与テーブルを知ることは難しいものの、転職先やその業界の年代別平均年収や、求人票に書かれている「入社後3年目は●●●万円、7年目は●●●万円…」などの情報が参考になるでしょう。
一方で、給与が高くてもそれ以上に労働時間が増えるといったこともあるため、給与額だけで判断するのではなく、労働時間や求められる成果についてもあわせて確認するとよいでしょう。
自身の経験・スキルとのマッチ度
これまでの自分の経験やスキルが活かせる職場では、入社後に活躍しやすく、評価や昇給にもつながりやすくなります。また、業務を通じて経験できることや身につけられるスキルが、目指しているキャリアとマッチしていることも大切です。
求人票の「業務内容」「必要な経験・知識・技能等」などを見れば、入社後にできることや期待されていることがわかるため、それらが自分の経験・スキルや将来像とマッチしているか、よく確認しましょう。
また、企業の採用ページなどにある「在職中の社員の事例」といった情報からは、求められる経験・スキルや、入社後のキャリアステップについてより具体的にイメージできるでしょう。
人間関係・社風
良好な人間関係や働きやすい社風も、長く働くうえで大切です。仕事で成果を出すためには、一緒に働く人との相性や助け合える風土なども重要になるでしょう。
ただ、人間関係や社風は入社するまで把握しにくいのも事実。不安な場合は、内定後に職場見学や一緒に働く上司、同僚との面談を設定してもらえないか、お願いしてみるのも一つの手です。
ワークライフバランス
「プライベートの時間を確保できる」「ライフステージの変化があっても働き続けられる」など、ワークライフバランスを保てるかどうかも、転職を考える上で重要です。
休日数、残業時間、通勤時間などをもとに、現職と見比べてどのような変化がありそうかを想像しておくと、入社してからギャップを感じずに済むでしょう。大きな変化がある場合は、今の会社で数日だけ「あえて遅くまで残業してみる」など、入社後の働き方を疑似体験しておくことも有効です。
また、結婚、出産、介護など、ライフステージの変化に応じた制度を確認しておくことも重要です。内定後、採用担当者に就業規則や制度、その活用実績について質問してみるとよいでしょう。
勤務地・通勤手段
勤務地や転勤・出張の有無は、生活の拠点や家庭の事情に大きく影響するため、転職を決断する上で重要な判断軸です。それに関連して、通勤手段や通勤にかかる時間を確認しておくことも大切です。
長時間の通勤や満員電車・交通渋滞などは、疲労の原因となるだけでなく「仕事の生産性の低下」にもつながります。転職前に通勤ルートを確認し、通勤時間帯に企業まで実際に行ってみましょう。実際の通勤時間や疲労感を擬似体験することができます。
近年はリモートワークやフレックスタイム制を導入する企業も増えていますが、その企業に制度があるかどうかによっても働き方は大きく変わってきます。会社として制度を導入していても、職種によって活用実績に違いがある場合も多いので、自分の職種の活用状況も確認しておきましょう。
福利厚生
福利厚生は、従業員とその家族が働きやすく生活しやすい環境を整えるために企業が独自に設定するものです。通勤や住宅、健康、育児、介護、自己啓発、財産形成などについて、企業ごとに様々な制度があります。
通勤手当、出張手当、退職金や個人年金の費用補助などは、可処分所得(手取り)を増やす上で大切です。一般的に年収額には含まれていないため、給与を比較する際はこれらの項目も含めて検討するとよいでしょう。
このほかにも、人間ドックや運動施設の割引といった健康の増進を図る制度、子育て支援や介護休暇などのライフステージの変化に合わせて利用できる制度、資格の取得や語学の習得などのキャリアアップを支援する制度もあります。
福利厚生としてどのような制度や支援ががあるのか、事前によく確認しておきましょう。
企業の規模・成長性
企業の規模や成長性も、その企業に転職するかどうかを決めるうえで大事な項目です。
特に転職により会社の規模が大きく変わる場合は、大企業とベンチャー企業どちらの環境で働きたいか、またそれぞれのメリットとデメリットをしっかり比較した上で決断しましょう。
大企業の場合(例)
メリット
- 社会的な信用が得られる
- リストラや減給などの心配をすることなく、中長期的に安定して働き続けることができる
デメリット
- 分業体制のため裁量が小さく、仕事で経験できることが少ない
- 部門間での人間関係が希薄で連携が取りにくい
- 一人ひとりの成果が評価に反映されにくい
ベンチャー企業の場合(例)
メリット
- 社員数が少なく発展途上のため裁量が大きい
- 幅広い仕事を経験できる
- 経営層や上司との距離が近い
- 自分の考えを提案しやすく、実力を発揮するチャンスが多い
デメリット
- 大企業に比べて給与が低くなりやすい
- 業績が安定せず、ボーナスが変動しやすい
- 人員に限りがあるため、労働時間が長くなってしまう可能性がある
後悔しない転職先を選ぶ5つのステップ
転職した後に後悔しないために、転職先を選ぶときにやるべきことを5つのステップで紹介します。
Step 1
転職理由に立ち返って考える
後悔しない転職先を選ぶために、まずはそもそもの転職理由に立ち返って考えてみましょう。
転職活動を始めた当初は、仕事内容が面白くスキルアップができそうな応募先を選んでいたとしても、いつしか年収や勤務地(転勤の有無)などのほかの条件がいい応募先に惹かれてしまい、本来の転職理由を見失ってしまうことも。
しかし、今の会社で不満に思っていることが改善できる会社に転職しないと、転職後も同じ不満を抱えて、再び転職を検討することになりかねません。内定した企業では転職のきっかけになった不満が解決できるのか、しっかりと見極めるようにしましょう。
キャリアアドバイザーからのアドバイス
転職を考える際は「年収が低い」「仕事にやりがいを感じられない」といった漠然とした不満だけでなく、なぜそのような不満を感じるのかを具体的に掘り下げて考えることが大切です。
たとえば一口に年収を上げたいといっても「生活が苦しい」「労働時間に見合った収入がほしい」「成果を収入にもっと反映してほしい」といった具体的な不満が明らかになれば、転職先選びの視点や選択肢も変わってくるでしょう。
Step 2
決め手に優先順位をつけて比較する
次に「転職先を選ぶ決め手となる8つの判断軸」の中から「絶対に譲れない判断軸」を決め、優先順位をつけましょう。
この軸は多くても2〜4個以内に絞ることが大切です。というのも、判断軸が多くなると比較が難しくなるだけでなく、すべての希望を満たす会社が見つけられず、いつまでも決断できなくなることもあるためです。
少なくとも「絶対に譲れない判断軸」を満たす企業を選ぶことが、転職を成功させる秘訣です。そこが満たせないのであれば、転職しないのも一つの選択肢になるでしょう。
キャリアアドバイザーからのアドバイス
残念ながら、すべての希望を満たす完璧な転職先はまず存在しません。
自分の希望に合わない点はどうしても気になってしまうと思いますが、そのようなときは、それが自分の希望の中でどれくらい優先したいことなのかを考えましょう。もし、「絶対に譲れない判断軸」でないのであれば、妥協することも大切です。
また、「絶対に譲れない判断軸」が複数あって決められない場合は、それぞれ5点満点で数値化してみるのも一つの手です。
Step 3
両立が難しい希望条件を確認する
絶対に譲れない軸のなかに、両立が難しいものがないかを確認しましょう。給料が高い分、労働時間が長くなるなど、両立が難しい条件として以下のようなものがあります。
残念ながら、これらの両方の条件はトレードオフで、どちらも満たす企業はほとんど存在しません。優先度の高いどちらかの条件を選択しましょう。
キャリアアドバイザーからのアドバイス
両立が難しい希望条件を比べる際、極端な例で考えると自分の志向性が見えてきます。
例えば「給与が倍で労働時間も倍の会社」と「給与が半分で労働時間も半分の会社」があったとして、働きたいのはどちらの会社か自問自答してみましょう。前者を選んだ場合は給与アップ重視の志向性があり、後者を選んだ場合はワークライフバランス重視の志向性があると言えるでしょう。
Step 4
不安な点は転職先の採用担当者に相談する
入社するまで判断に迷うことがあれば、転職先の採用担当者に直接相談しましょう。
例えば「職場の人間関係は良好か」「理想のキャリアプランを実現できる環境はあるか」など、選考時に聞きにくいことは、内定後に質問しましょう。
また、実際に働いている人を紹介してもらい、面談で質問してみるのも一つの手です。「中途社員でも馴染めるか」「研修をしっかりしてくれるか」などに不安がある場合、メンバークラスで転職で入ってきた社員を紹介してもらうとよいでしょう。
一方で、キャリアステップや組織体制などに不安がある場合は、マネジメントなどを担当する役職者を紹介してもらう方がいいでしょう。
キャリアアドバイザーからのアドバイス
「給料や残業などについては面接で質問しないほうがいい」と聞いたことのある人もいるでしょう。しかし内定後は、一概にそうとは言えません。
なぜなら以下の3つの理由から、企業もあなたの不安を解消するために、内定後の面談を望んでいることが多いからです。不安な場合は積極的に相談してみるとよいでしょう。
- 面接の場だと聞けないこともあると採用担当者は理解している
- 入職予定の人に対して、できるだけ望んでいることを叶えたいと思っている
- 入社後のギャップによる短期離職はお互いにメリットはないと考えている
Step 5
回答期限を決める
仕事は人生の大部分を占める大切な要素。それゆえ、なかなか転職に踏み切れないのも仕方がないことですが、最後には思い切って自分の中で回答期限を定めることが決断につながります。
一般的に内定をもらった後、入社するかどうかを回答する期限の目安は3日~1週間以内といわれています。それまでに決断できるよう、明確な期限を設定してください。
他社の選考結果を待ってから判断したい場合は、内定先に保留の相談をしてみましょう。その際、内定を保留したい理由と回答期限を誠実に伝えることが大切です。
また、どうしても解消されない不安がある場合は、現職に留まることや転職活動を続けることも考えましょう。
キャリアアドバイザーからのアドバイス
転職の決断に悩む場合は、家族や親しい友人に相談してみるのもよいでしょう。一人で悩むより、第三者の視点から率直な意見がもらえるはずです。
また、パートナーや子供がいる場合は、自分の判断軸だけで決断した結果、のちのちトラブルになることも少なくありません。特に転勤や出張、残業時間など、生活環境に大きな変化を伴うことは、早めに相談しておきましょう。
▼意外と重要?!「嫁ブロック」とは
それでも転職先を選べないときは…
そもそも転職するかどうか、気持ちが揺らいできたら、転職を決断する前に「本当にやりたいこと」を改めて見つめ直すことも大切です。
下記の記事では、どうすれば「やりたいこと」が見つかるのかを解説しています。
また、年収は転職活動においても大切な判断軸ではありますが、年収だけで転職を決断することは要注意です。
転職時に年収をどれくらい優先すべきかに悩む場合は、下記の記事も読んでみてください。
(文:転職Hacks編集部)
この記事の話を聞いた人
キャリアアドバイザー
竹園 翔一
株式会社クイック
転職支援を行うキャリアアドバイザー。主に建設・不動産・