5つの状況別に解説 退職にともなう年金の手続きガイド

20歳以上60歳未満の人は必ず、国民年金か厚生年金に加入しなければなりません

勤めていた会社を退職したときの年金の切り替え方法や手続きについて、状況別にくわしく解説します。

退職にともなう年金の手続き3パターン

会社員や公務員を退職すると、それまで加入していた厚生年金保険から自動的に脱退することになります。自分の状況に合わせて、3つのうちいずれかの方法で年金の切り替え手続きを行いましょう。

退職後の状況別年金の切り替え手続き3パターンの図。①すぐには転職せず1日以上の離職期間がある場合(転職先が決まっておらずしばらく失業する。月の途中に退職し、翌月1日に入社する(A)。月末に退職し、翌月の途中で入社する(B)。):退職後14日以内に自分で国民年金に切り替え手続き。②配偶者の扶養に入る場合:配偶者が会社で手続き。③退職日の翌日に次の会社に入社する場合:厚生年金が継続されるので何もしなくてOK。

1|すぐには転職せず、1日以上の離職期間がある

退職後、働かずに失業期間ができる場合や、次の勤め先に入社するまで1日以上の離職期間がある場合は、国民年金への切り替え手続きが必要です。2023年度の保険料は月額1万6,520円です。

国民年金への切り替え方法は、以下のとおりです。

誰が 自分、または世帯主
どこで 居住地の役所の国民年金窓口
いつまでに 退職の翌日から14日以内
必要なもの
  • 年金手帳、または基礎年金番号通知書
  • 退職日が証明できるもの(離職票、健康保険資格喪失証明書、退職証明書など)
  • マイナンバーカード(なければ、運転免許証などの身分を証明できるもの)
  • 印鑑
  • 通帳や、クレジットカード(口座振替やクレジットカード払いを希望する場合)

※離職票が届かない場合→離職票が届かない…対処方法まとめ

1日でも離職する場合、必ず厚生年金から国民年金への「受給資格」の切り替え手続きが必要になります。

ただし、次の転職先が決まっている場合、退職するタイミングによって、国民年金の支払いが必要なケースと不要なケースに分かれます。年金を厚生年金と国民年金のどちらで納めるかは、その月の末日に会社に属しているかどうかで決まるためです。

2つのパターンに分けてくわしく解説します。

  • A…月の途中に退職して、翌月1日に入社する場合
  • B…月末に退職して、翌月の途中で入社する場合

A:月の途中退職→翌月の1日入社の場合

月の途中に退職して翌月1日に入社する場合、退職した月は自分で国民年金を納める必要があります

月の途中に退職し、翌月1日に入社する場合の国民年金に切り替わるタイミングの図。

例えば、月の途中である7月25日付で退職し、8月1日に入社する場合、8月分は転職先の会社を通して厚生年金が天引きされますが、末日に会社に属していない7月分については、自分で国民年金の支払いをしなければなりません。

B:月末退職→翌月の途中入社の場合

月末に退職し、翌月の途中に入社する場合、退職する月は末日まで会社に所属しているので、これまで通り厚生年金が給料から天引きされます。加えて、翌月の月末には転職先の会社に属しているため、転職先を通して厚生年金が天引きされます。

月末に退職し、翌月の途中で入社する場合の国民年金に切り替わるタイミングの図。

例えば7月31日付で退職する場合、8月中に新しい会社に入社していれば、7月分は前職の会社、8月分は転職先の会社を通して厚生年金が天引きされます。

この場合、一見すると切り替え手続きは不要に思えますが、年金制度上、退職後14日以内に一旦「居住地の役所の国民年金窓口」で国民年金の被保険者資格への切り替えが必要になるので注意しましょう。

2|配偶者の扶養に入る

退職後1年間の見込み年収が130万円未満であれば、厚生年金に加入している配偶者(第2号被保険者)の扶養に入ることができます。この場合、保険料を支払う必要はなく、第3号被保険者として扱われます

▼被保険者の3分類

  • 第1号被保険者……国民年金保険料を自分で払う加入者。自営業やフリーターなど。
  • 第2号被保険者……会社員や公務員。
  • 第3号被保険者……第2号被保険者の扶養に入っている人。国民年金保険料の支払いは必要ない

配偶者の扶養に入る手続き方法は、以下のとおりです。

誰が 扶養する家族
どこで 扶養する家族の勤める会社
いつまでに 退職の翌日から14日以内
必要な書類
  • 自分の年金手帳、または基礎年金番号通知書
  • 被保険者の戸籍謄(抄)本(被保険者との続柄がわかるもの、または住民票の写し(被保険者が世帯主で、被扶養者と同一世帯である場合に限る)
  • 退職証明書または離職票の写し

年金番号さえ分かれば、基本的には配偶者の会社で手続きを行ってくれますが、場合によっては「非課税証明書」などが必要になることがあります。発行方法は自治体のホームページで確認してください。

※第2号被保険者である扶養者が退職した場合→「Q.扶養者が退職した場合はどうなる?

3|退職日の翌日に次の会社に入社する

退職日の翌日に転職先に入社する場合は、国民年金への切り替え手続きをする必要はありません。厚生年金を継続することになるため、国民年金に加入する期間は発生しません。

コラム:退職に伴う手続きは他にもある|雇用保険・健康保険・税金

離職期間があるときは、年金の切り替えの他にもやるべき手続きがあります。

失業保険の受給申請(雇用保険)

失業した場合、再就職するまでの間「雇用保険の基本手当(いわゆる失業保険)」を受け取ることができます。以下の持ち物を持って、居住地を管轄するハローワークで受給手続きを行いましょう。

  • 雇用保険被保険者証 ※会社から受け取る
  • 離職票1・2 ※会社から受け取る
  • マイナンバーを証明するもの(なければ運転免許証やパスポートなど)
  • 印鑑証明写真2枚(直近3カ月以内・縦3.0cm×横2.5cm)
  • 本人名義の普通預金通帳(ゆうちょ銀行でも可)

※くわしくは→失業保険のもらい方 自己都合会社都合

健康保険の切り替え手続き

退職後の健康保険の切り替えには、以下の3つの選択肢があります

  1. これまでの健康保険を任意継続する
  2. 国民健康保険に加入する
  3. 家族の社会保険の扶養に入る

(1)は、退職するまでに会社の担当者に聞いたり、加入していた健康保険の公式HPを確認しましょう。(2)は居住地の市区町村の健康保険窓口で申し出ればOKです。(3)は家族の会社で手続きをしてもらいましょう。

※健康保険についてくわしくは→健康保険切り替え手続き

住民税の納付

住民税は1~12月の所得にかかる税金を、翌年の6月~翌々年の5月の給料から分割して納める仕組みになっています。そのため、退職する前に会社に一括で天引きしてもらうか、自ら納付書を使って納めるかのどちらかになります。

※くわしくは→転職後、住民税はどうなる?

所得税の納付

所得税は、年内に再就職したかどうかで手続き方法が異なります

12月31日時点で無職の場合は、翌年2月頃に自分で確定申告をしなければなりません。年内に再就職した場合は、新しい転職先の指示に従って年末調整を行います。

※確定申告についてくわしくは→退職後の確定申告のポイントまとめ

※年末調整についてくわしくは→転職したときの年末調整ガイド

国民年金保険料で知っておくと役立つ2つのこと

国民年金は、

  • 支払い方法は3種類から選べる
  • 保険料を前納すると割引される

といった特徴があります。以下でくわしく解説します。

支払い方法は5種類から選べる

国民年金保険料の支払い方法は、以下の3つから選択できます。

  • 納付書
  • 口座振替
  • クレジットカード
  • スマートフォンアプリ
  • ねんきんネットを活用した納付書によらない納付

※国民年金保険料納付書が手元にない場合でも、ねんきんネットの画面上に表示される納付書情報(収納機関番号、納付番号、確認番号)を利用してPay-easy(ペイジー)納付ができるようになりました。

「納付書」の場合

「納付書」の場合、市区町村役所・役場の国民年金窓口のほか、全国の銀行・郵便局、農協、漁協、信用組合、信用金庫、労働金庫やコンビニエンスストアにて現金で納めることができます。また電子納付(Pay-easy)や、スマートフォンアプリでの納付も可能です。

※令和5年2月より、納付書のバーコードをスマートフォンアプリで読み取ることによって、電子決済が可能になりました。
※参考:国民年金保険料の簡単な納付方法 | Pay-easy(ペイジー)

「口座振替」や「クレジットカード」の場合

「口座振替」や「クレジットカード」での支払いであれば、納め忘れを防げます。利用する場合は、年金事務所の窓口で手続きをするか、国民年金機構のホームページから申出書をプリントアウトして郵送で申し込みをしてください。

※参考:
国民年金保険料_3.国民年金保険料の納付方法|日本年金機構(更新:2024年4月1日)

「スマートフォン」の場合

スマホ決済の利用には納付書と対応する決算アプリが必要です。

保険料を前納すると割引される

国民年金の保険料をまとめて前払いすると、支払う期間に応じて保険料が割引されます。納付期間は「2年度分」「1年度分」「6カ月分」の3つから選択が可能です。

「口座振替」の場合は最大で1万6,590円割引されるので、保険料を節約したい人は前納を活用しましょう。

【国民年金の口座振替割引率】<前納の種類/2年前納/1年前納/6カ月前納/当月末振替(早割)/毎月納付>1回あたりの納付額/納付書払い/クレジット払い/398,590円/200,140円/101,050円	/―/16,980円|口座振替/397,290円/199,490円/100,720円/16,920円/16,980円|割引額/納付書払い/クレジット払い/15,290円/3,620円/830円/―/ー|口座振替/16,590円/4,270円	/1,160円/60円/ー

※参考:
国民年金前納割引制度(口座振替 前納)|日本年金機構(更新:2024年4月1日、参照:2024年4月10日)

Q.離職すると年金が免除になるって本当?

失業した場合に限り、退職した月の前月~翌々年の6月までは特例期間として、所得に関わらず国民年金の免除制度が利用できます。ただし、免除制度を利用すると、その分将来的にもらえる年金の額は少なくなります。なお、国民年金保険料の免除制度は通常、前年の所得が一定基準以下の場合に利用できる制度です。

免除制度を利用する場合、以下のものを持って、居住地の役所の国民年金窓口で手続きを行いましょう。

【必要なもの】

  • 年金手帳、または基礎年金番号通知書
  • 雇用保険受給資格証か離職票の写し
  • 印鑑

年金の免除額は前年の所得に応じて、段階的に「全額」「4分の3」「半額」「4分の1」となっています。仮に「全額」免除の場合、その分の将来もらえる年金額は全額納付したときの2分1になってしまいますが、「未納」で将来的にもらえる年金額が大幅に減るよりは、免除制度を利用するほうがいいでしょう。

なお、50歳未満で本人・配偶者の所得が一定基準以下であれば、申請により保険料支払いの猶予が認められるケースがあります(保険料納付猶予制度)。免除同様、猶予を受けた期間があると将来受け取れる年金は減ってしまいますが、過去10年分までであれば後から追徴金を支払うことで、受け取れる年金額を増やすことができます。

※参考:
国民年金前納割引制度(口座振替 前納)|日本年金機構(更新:2024年4月1日、参照:2024年4月10日)

Q.離職票が手元にないときどうする?

離職票が手元になくても、退職日が分かる「退職証明書」や「健康保険資格喪失証明書」があれば、国民年金への切り替え手続きは可能です。

「退職証明書」は、申請した場合のみ発行が義務付けられている書類のため、必要であれば前の会社に早めに申請するようにしましょう。「健康保険資格喪失証明書」は、基本的には退職する際に企業から渡されます

※くわしくは→退職証明証が必要なケースと手に入れる方法

Q.扶養者が退職した場合はどうする?

配偶者の扶養に入っていたのに、その配偶者(第2号被保険者)が会社を退職した場合は、夫婦両方とも第1号被保険者になり、以後それぞれが国民年金保険料を支払うことになります

妻が夫の扶養に入っている場合のフロー図。【夫の退職前】夫:第2号被保険者。妻:第3号被保険者(夫の扶養に入っているため)。【夫が退職する(無職や自営業になる)】夫:第1号被保険者。妻:第1号被保険者(扶養が外れるため)。配偶者の退職にともない、自動的に国民年金への加入手続きが済むわけではありません。通常の国民年金への切り替え手続き同様に、居住地の役所の国民年金窓口に申し出ましょう

この際の手続き方法はこちら

Q.退職後、手続きせずに14日が過ぎたら?

国民年金の切り替え手続きの期限は、退職翌日から14日以内となっていますが、万が一過ぎてしまっても手続きは可能です。まずは、居住地の役所の窓口に行きましょう。早いうちに行くほうが、未納があったとしても確認が取りやすく、さかのぼって支払う負担額も少なくなります。

国民年金への切り替え手続きをしなかった場合は、納付するまで以下のような流れで進みます。

国民年金保険料の納付書が届く

国民年金の切り替えをしなくても、退職後数カ月すると未納分の納付書(国民年金保険料納付案内書)が送られてきます。年金制度上、会社が厚生年金の喪失手続きをすれば強制的に国民年金に加入したことになるからです。

「切り替えの手続きをしていないから保険料を払わなくてもいい」というわけではありません。

納付書が届いたら期限内に保険料を払う

国民年金の納付書が届いたら、必ず期限内に保険料を支払ってください

期限内に納付しないと、未納扱いとなり将来の年金受給額に影響します。そのまま無視すれば、催告状や督促状が届いて延滞金が発生することもあります。最悪の場合、財産を差し押さえられてしまう可能性もあるので、すぐに支払うことが難しければ、免除制度や猶予制度も活用するといいでしょう

まとめ

公的年金や企業年金が、退職後・老後の主な生計費となる人も多いはず。普段は勤め先に任せっぱなしでも、退職後は未納期間が発生しないよう、早めに手続きをするのが大切です。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

山本 征太郎

山本社会保険労務士事務所東京オフィス

静岡県出身、早稲田大学社会科学部卒業。東京都の大手社会保険労務士事務所に約6年間勤務。退所後に板橋区で約3年開業し、2021年渋谷区代々木に移転。若手社労士ならではのレスポンスの早さと、相手の立場に立った分かりやすい説明が好評。様々な業種・規模の会社と顧問契約を結び、主に人事労務相談、給与計算、雇用保険助成金などの業務を行う。

山本社会保険労務士事務所東京オフィス 公式サイト

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