5種の例文を紹介 経理の志望動機の書き方
経理の転職で、企業に評価される説得力ある志望動機をまとめるにはどうしたらいいのでしょうか。
経理の志望動機の書き方のほか、すぐに使える例文などを紹介します。
経理の転職で志望動機はどれだけ重要?
書類では見られないが、面接ではよく聞かれる
経理の転職において、志望動機は、書類選考では合否の決め手にならないものの、面接では一般的な質問であり、答え方によっては合否に影響することもあるでしょう。
経理の書類選考で最も重視されるのは、あくまで「実務経験」。経理の業務範囲は企業ごとに異なるからこそ、採用担当者は職務経歴書を中心に応募者の実務経験を細かくチェックし、その内容やレベル感が「自社の募集ポジションや業務内容にマッチするか」を精査しているのです。
そのため志望動機については、履歴書や職務経歴書に無理に記載しなくても問題ないでしょう。
一方の面接では、志望動機はよく聞かれる質問の一つ。企業としては、自社について十分理解した上で、「この会社でこんな仕事をしたい」という明確な意思を持った人を採用したいと考えるのは当然のことだからです。
内定を勝ち取るために、「なぜその会社に魅力を感じているのか」「なぜその会社で働きたいと思っているのか」、説得力ある志望動機を伝えられるように準備しておきましょう。
経理の志望動機を書くために必要な2つのこと
経理の転職において企業に評価される志望動機を作るためには、次の2つを整理しておくことが大切です。
そもそも志望動機は、その企業に応募した理由に加えて、入社後はどのように貢献したいと考えているかを伝えるもの。「1)転職を考えたきっかけ・転職で叶えたいこと」は、前者の「その企業に応募した理由」につながります。また、「2)活かせる経験/スキル」は後者の「入社後の貢献イメージ」を裏付ける根拠となります。
そのため、この2点をあらかじめ言語化しておくことで、説得力ある志望動機をスムーズに組み立てることができるのです。
1)転職を考えたきっかけ・転職で叶えたいこと
「現職では叶えられないこと」は何か
まずは、今までの業務経験を振り返り「転職を考えたきっかけ」を洗い出しましょう。その際、“業務やキャリア上の”「現職では叶えられないこと」を起点に考えるのがポイント。
例えば「現職は企業規模が小さく連結決算の経験が積めずスキルアップが難しい」「現職の組織体制では、管理会計に携わるまで5年以上かかってしまう」といった状況に対して、「だから自分はどうしたいのか」、つまり、転職で叶えたいことを考えてみましょう。
(例)経理の転職のきっかけ→叶えたいこと
- (経験者)経理として業務範囲を広げてスキルアップしたいが、現職は企業規模が小さく連結決算の業務が経験できない→子会社を持つ規模の大きな企業で、連結決算の経験を積みたい
- (未経験)営業部の経費精算や記帳をするなかで経理の仕事に興味を持ったが、現職では経理職への異動はできない→経理のポジションでキャリアを積みたい
…など
キャリア
アドバイザー
給料や残業がきっかけの場合は?
転職を考えたきっかけとして、「給料が低い」「残業が多い」といった待遇面への不満を伝えるのが絶対NGというわけではありません。
ただし、下記の例のように、採用担当者が「それなら転職を考えるのも無理はない」と納得できるような状況説明をする必要があります。
- 給料:「業績悪化による賞与カットで、年収が大幅に下がった」
- 給料:「ここ数年年収が上がらず、子どもも生まれたため、将来的な年収アップも視野に入れ、新しい環境にチャレンジしたい」
- 残業:「人手不足で恒常的に残業が多く、月80~100時間の残業が続いている」
応募先企業なら希望が叶うと考えた理由は?
転職で叶えたいことが整理できたら、なぜ応募先の企業なら希望が叶いそうだと考えたのか、応募先の特徴や惹かれた部分を整理してみましょう。
「転職のきっかけ(現職では叶えられないこと)」から、「応募先企業でなら自分の希望が叶えられると考えた理由」まで、一貫性を持たせることで、説得力ある志望動機を作ることができます。
(例)経理の転職で叶えたいこと→応募先の特徴
- (経験者)子会社を持つ規模の大きな企業で、連結決算の経験を積みたい→プライム市場上場で子会社が20社以上あり、連結決算業務(月次・四半期・年次)も経験できる
- (未経験)経理のポジションでキャリアを積みたい→経理職として日次業務からスタートし、ゆくゆくは月次・年次決算にもチャレンジできる
2)活かせる経験/スキル
次に、入社後に「活かせそうな経験/スキル・資格」を整理しましょう。職務経歴書とは違い、志望動機では経験や資格そのものの有無を問われるわけではありません。
これまでの業務経験や身につけたスキル・資格と、入社後に叶えたいことに一貫性があるか、経験やスキルを踏まえた活躍イメージを具体的に描けているかどうかが評価ポイントとなります。
そのため、志望動機の冒頭で「これまで◯◯や△△の業務を経験するなかで~」などと転職のきっかけにつなげる形で触れたり、締めの部分で「○○の経験/スキルを活かして貢献したい」といった形で貢献意欲をアピールできれば、「入社後に活躍してくれそうだ」と評価される可能性が高まります。
(例)経理で活かせる経験
- 月次/年次決算(試算表作成、財務諸表作成など)
- 子会社管理
- 税務申告書の作成(地方税/国税)
- 予実管理(予算差異分析など)
- 経営/財務分析
- 決算/管理会計システムの構築
- 監査法人対応
…など
(例)経理で活かせるスキル・資格
- 簿記1級・2級
- 税理士資格(科目合格含む)
- 公認会計士資格
- 英語(TOEICなど)
- 会計ソフトの操作スキル
…など
応募先の採用ニーズに合った貢献イメージを
入社後に「活かせそうな経験/スキル・資格」を判断するには、応募先企業の業務内容や、そこで求められる経験・スキルへの理解が欠かせません。
求人の「具体的な仕事内容」「必須/歓迎要件」などをよく確認して、企業の採用ニーズに合う経験・スキルをふまえた貢献意欲・活躍イメージをアピールしましょう。
コラム:企業理解も深めておくと◎
「”業務やキャリア上”叶えたいこと」にマッチする求人は一つとは限らないため、場合によっては面接官から「(叶えたいことにマッチする企業のなかでも)どうして当社を志望されたのですか?」「当社のどんな部分に魅力を感じているのですか?」といった質問をされることがあります。
その際に迷わず「◯◯なところに惹かれています」と答えられるよう、下記のような方法で応募先の事業や経営状況、社風などについても理解を深めておくのが得策です。
〈企業研究の一例〉
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一次面接フェーズでは求人やホームページにざっと目を通しておくレベルで問題ありませんが、最終面接のフェーズではさらに企業理解を深め、より志望度の高さが伝わる志望動機を用意する必要があります。
最終面接で伝える志望動機の作り方は、下記の記事で解説しています。
経理の志望動機の書き方
ここでは、経理の志望動機の書き方を解説します。
まず、経理の志望動機の基本構成と、その構成にしたがって作成した例文を確認してみましょう。
〈経理(経験者)の志望動機の例文〉
- 経理としてより規模が大きく、難易度の高い業務にチャレンジできる点に惹かれ、志望いたしました。
- 現職でも8年間、日常経理から年次決算まで幅広く経験してきましたが、小さな企業で業務範囲が限られているため、経理としてより難易度の高い業務に挑戦したいと考え、転職を決意しました。業界大手の貴社は20社以上の子会社があり、連結決算や監査法人対応などの業務にもチャレンジできるため、経理として確実なキャリアアップにつながると考え、大変魅力に感じております。
- これまでの決算関連業務を活かしながら、将来的には経営判断などの上流フェーズにも深く関わっていきたく存じます。
(295文字)
経理の志望動機は、上記のように(1)応募した理由(結論)、(2)その背景やエピソード、(3)入社後の意気込み、の3要素で構成するのが基本です。
この基本構成にしたがって、志望動機の作り方を具体的に見ていきましょう。
1.応募した理由(結論)
志望動機の書き出しではまず、応募した理由を結論として一言で述べます。
書き出しの表現に明確なルールはありませんが、応募先に惹かれたポイントなどを端的に示すのがオススメです。
書き出しの表現に迷う場合は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
2.その背景やエピソード
次に、1)で述べた「応募した理由(結論)」に至った背景やエピソードを説明します。
具体的には、転職しようと思ったきっかけや経緯を伝えます。なぜわざわざ転職しようと思ったのかについて、前の章で整理した「現職(前職)では叶えられなかったものの、応募先でチャレンジしたいと思っていること」を具体的に伝えましょう。
続けて、その思いや希望が「応募先なら叶えられる」と感じた理由やポイントに触れます。前述したように、説得力ある志望動機を作るには、「転職のきっかけ」から「応募先で自分の希望が叶えられると考えた理由」まで、一貫性を持たせることが重要です。
あわせて、応募先の採用ニーズとマッチする業務経験と身につけたスキルを記載することで、入社後の活躍イメージを抱いてもらうことができるでしょう。
3.入社後の意気込み
最後に、入社後の意気込みを語って締めます。現職(前職)での経験を活かしていきたいという姿勢などをアピールするとよいでしょう。
締めくくりの表現に迷う場合は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
経理の志望動機の例文5選
ここでは経理の志望動機の例文を、5つのパターンに分けて紹介します。
非上場企業→上場企業への転職(経験者)
〈例文〉
- 貴社を志望したのは、上場企業でより難易度の高い業務を経験し、経理としてステップアップしたいと考えたからです。
- 現職でも日常経理や決算業務、税務申告など幅広く対応してまいりましたが、非上場企業のため、上場企業に転職して経理としての業務範囲を広げたいと考えるようになりました。東証プライム市場に上場されている貴社であれば、より数字的なインパクトが大きく、有価証券報告書作成などの開示関連業務にもチャレンジできるものと思い、大変惹かれております。
- 上場企業での経理業務は未経験ですが、現職で培った幅広い業務経験を活かしながら経理としてより成長し、貴社に貢献できればと思いますので、面接の機会をいただけますと幸いです。
(303文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 現職の非上場企業で培った経験・スキルを明示する
- その上で、上場企業でしかできない業務にチャレンジしたいという前向きな意思を強調する
異業界への転職(経験者)
〈例文〉
- 半導体業界で拡大期にある貴社で、より難易度の高い業務にチャレンジできる点に惹かれ、志望いたしました。
- 現職の家電メーカーで経理を経験するなかで、今や電化製品にはなくてはならない半導体により深く関わる形で社会に貢献したいという思いが強まり、半導体関連企業への転職を決意しました。さらなる半導体ニーズの高まりを受け、海外進出やM&Aなどにも積極的に投資されている貴社であれば、国際会計やPMIの経験を積み、経理としてさらなるステップアップができると考え、大変魅力に感じております。
- これまでの決算や税務関連業務、海外拠点スタッフとの協働経験などを活かしながら、貴社のさらなる事業拡大に貢献する所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
(315文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 「成長産業だから志望した」というミーハーな印象にならないよう、その業界に興味を持ったきっかけは説得力がある内容にする
- 応募先の事業内容・経営状況などもふまえ、自身のどんな経験・スキルをどのように活かせるのかを具体的に記載する
働き方改善で大手→中小への転職(経験者)
〈例文〉
- メーカー経理としての経験を活かしながら、地元の産業振興にも貢献できる点に惹かれ、志望いたしました。
- 関東エリアを拠点とする株式会社◯◯にて、4年前より経理課長を担当しておりましたが、父親の介護が必要になり、地元の◯◯県△△市エリアでの転職を検討しております。貴社の経理課長ポジションであれば、これまでのマネジメント経験を活かしながら、名産品である■■を通じた地元の産業振興にも貢献できるものと思い、大変魅力に感じております。
- 日常経理から年次決算、管理会計業務までのひととおりの経理経験を活かし、貴社の経理課の組織成長や事業のさらなる成長に貢献する所存ですので、何卒面接の機会をいただけますと幸いです。
(299文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 「勤務地限定」「残業なし」「フルリモート」といった条件で働かざるを得ない事情にきちんと触れる
- 応募先の事業内容・経営状況などもふまえ、自身のどんな経験・スキルをどのように活かせるのかを具体的に記載する
大手→ベンチャー(IPO準備)への転職(経験者)
〈例文〉
- 経理課長としての経験を活かしながら、経営により近いポジションで事業成長に貢献できる点に魅力を感じ、志望いたしました。
- 現職では経理課長として8年間、経理業務の統括やメンバーマネジメントを担ってきましたが、より早く、経営に近い立場で事業成長に貢献できる環境で働きたいと考え、転職を決意しました。IT関連サービスを主力事業としてIPO準備をされている貴社であれば、これまでの経験を活かしながら、新たに経営企画業務としてCEO・CFO直下での事業・企業価値の向上推進にチャレンジできると伺い、大変魅力に感じております。
- 経理としてのひととおりの業務経験を活かし、貴社の株式上場やさらなる事業拡大に貢献する所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
(320文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- あえて規模の小さな企業に転職する理由について、説得力のある内容を伝える
- ポジションや役割の変化を正しく理解し、自身の経験・スキルがどう活かせるのかを明示する
経理未経験での転職
〈例文〉
- 営業職としての折衝経験を活かし、経理職としてステップアップしたいと考え、志望いたしました。
- 現職にてデータ分析をふまえた営業戦略の立案や売上管理を行うなかで、経理として企業の財務健全性を支える役割に魅力を感じ、キャリアチェンジを検討しております。貴社の経理ポジションは各事業部や税理士、監査法人といった社内外との関わりに積極的だと伺い、営業職としての折衝経験を活かしつつ、経理としても幅広い業務を経験できる環境に大変魅力を感じております。
- 経理の業務は未経験ですが、半年前から簿記の勉強を始め、先日2級に合格しております。実務についても持ち前のバイタリティで少しでも早くキャッチアップできるよう努めてまいりますので、どうか面接の機会を賜りますよう、よろしくお願いいたします。
(335文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 経理の業務内容や役割を正しく理解し、どうして惹かれたのか、きっかけをくわしく説明する
- 別職種で培った経験・スキルのうち、何をどのように活かせるのか明示する
志望動機の不安を解消するには?
志望動機は面接での答え方によって、合否に影響することがあります。一度作り終えたからといって気を抜かず、採用担当者の印象に残る内容になっているか、時間を置いて読み直しましょう。
下記の記事では、志望動機を書く上での大切なポイントや、効果的なアピールにつなげるためのコツなどについて解説しています。
こちらもあわせてチェックしておきましょう。
この記事の担当者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。