手続き方法・挨拶・お菓子など… 派遣の退職Q&A

「契約期間中に退職できる?」「退職金はもらえる?」など、派遣社員の退職(派遣元の会社を退職する場合)に関する8つの疑問をQ&A形式で解説。

退職の相談先や退職挨拶の必要性、社会保険手続きの疑問にもお答えします。

Q.退職したい場合、誰に相談すればいい?

退職したい場合は、派遣会社に相談しましょう。

派遣社員で退職したい場合は、まず派遣会社(派遣元)の担当者に相談しましょう。

相談は一般的に、退職の約1ヶ月前までに行うのがいいとされています。面談日や契約更新の説明時に相談するほか、電話・メールで随時相談しても構いません。

退職の相談をする際は、下記のように話を切り出すといいでしょう。

(派遣先)様との契約更新の件で、ご連絡させていただきました。

大変申し訳ありませんが、契約の更新は行わず、そのまま退職させていただければと考えております。

退職理由は、正直に伝えるべき?

基本的に、退職理由は正直に伝えるべきですが、内容によっては派遣会社から引き止められやすいものもあります

給与・待遇の低さや人間関係の悩み、業務内容のミスマッチといった不満は、一般的に引き止められやすい理由と言われています。次のような退職理由は理解を得られやすいため、該当するものがあるなら言い換えてもいいでしょう。

〈納得を得られやすい退職理由〉

  • 体調不良で業務に支障が出ている
  • 家族の介護が必要
  • 引っ越しすることになった
  • 結婚することになった
  • 正社員として働きたくなった ……など

Q.契約期間中でも退職できる?

原則、契約期間中には退職できません。

派遣社員は原則、契約期間中に退職できません。そのため一般的には、契約期間の更新タイミングで派遣会社に契約を更新しない旨を伝え、契約期間の満了とともに退職することになります。

ただし、やむを得ない事由がある場合に限って、契約期間中でも退職が可能です(民法628条)。

やむを得ない事由とは、主に本人の病気や家族の介護などが当てはまるとされています。法律で具体的に定められている訳ではないので、退職可能かどうかは直接派遣元に確認しましょう。

〈やむを得ない事由に当てはまるもの(一例)〉

  • 家族の介護をすることになった
  • 家族が転勤することになった
  • 転居しなければならなくなった
  • うつ病などで勤務が困難になった

退職相談の切り出し方

契約期間中に退職したい場合は、退職せざるを得ない状況が明らかになり次第、なるべく早く派遣会社の担当者へ相談しましょう。面談のタイミングに相談するほか、メールで随時相談しても構いません。

次のように、やむを得ない事由があることを丁寧に伝えるのがおすすめです。

この度は、契約終了のお願いでご連絡させていただきました。

私事で大変申し上げにくいのですが、(体調不良などの理由があり)、業務に支障が出てしまう状況が発生してしまいました。

つきましては、契約期間中のところ大変申し訳ございませんが、現在の職場での勤務を終了させていただければと考えております。

Q.派遣社員でも、退職届は必要?

派遣社員の場合、基本的に退職届は不要です。ただし、必要なケースもあります。

派遣社員が退職するとき、契約期間の満了とともに退職する場合には、退職届は不要です。

一方、契約期間の途中で退職する場合は、退職届が必要になることがあります。派遣会社から指示されたり、フォーマットが用意されたりしている場合は、記入して派遣元の企業へ提出しましょう。

実際に働いている派遣先の企業に提出する必要はありません。

くわしくは下記の記事で紹介しています。

Q.派遣先への挨拶や、お菓子は必要?

派遣先への挨拶やお菓子は、求められない限り不要です。

派遣会社や派遣先から求められない限り、派遣先で退職(契約終了)の挨拶をする必要はありません

ですが、業務でお世話になった人には声をかけておくと、丁寧な印象を残せます。最終出社日の夕方頃に、直接話したりメールを送ったりして、感謝の気持ちを伝えましょう。

退職(契約終了)時の挨拶の例文【スピーチ・メール】

退職(契約終了)時の挨拶内容に困ったら、下記の例文を参考にしてみましょう。

スピーチの例文

◯月◯日より勤務していました白洲です。

本日を最終出社日として勤務を終了することになりました。短い間ではございましたが、株式会社□□の皆様にはたくさんのことを教えていただきました。皆様よりご指導いただいたこと、□□で学んだことを今後の人生で生かしていきたいと思います。

今まで本当にありがとうございました。

メールの例文

件名:最終出社のご挨拶

皆様

この度、一身上の都合により株式会社□□での勤務を終了することになりました。本日◯月◯日(△)が最終出社になります。

本来であれば直接ご挨拶をすべき所、メールにて失礼致します。

短い間ではございますが、皆様には貴重なお時間を割いて頂き、たくさんのことをご指導頂きました。□□で学んだことを今後の人生で生かしていきたいと思います。

今まで本当にありがとうございました。

最後になりますが、皆様の更なるご活躍を心からお祈り申し上げます。

白洲 太郎

お菓子などは、あくまでお礼の気持ちとして渡す

退職(契約終了)時のお菓子はあくまで気持ち。用意しなければならないという決まりはありませんが、業務でお世話になった人には渡しておくと、印象よく契約を終了することができます。

お菓子を用意する場合は、下記のポイントを押さえるといいでしょう。

〈退職(契約終了)時のお菓子のポイント〉

  • 個包装で、日持ちのするお菓子を選ぶ。
  • 最終出社日に持参する。
  • 退職の挨拶や、メールの中で、お菓子を用意した旨を伝える。
  • 特にお世話になった人には、一人ひとり手渡しする。

退職時のお菓子選びのポイントなどは、下記の記事も参考にしてください。

Q.派遣社員でも、退職金はもらえる?

退職金は、正社員と同じ仕事をしていれば受け取れる可能性もあります。

2020年4月に改正労働者派遣法が施行された結果、同一労働同一賃金の視点から、正社員と同じ仕事をしている場合は派遣社員も同等の退職金を受け取れる可能性が高まりました

退職金の支払い方法は4パターンあり、どれになるかは派遣会社によって異なります。

退職金の支払いパターン4種

  1. 派遣先の規定にしたがって、派遣先の正社員と同等の額を、退職時にもらう
  2. 派遣元から、会社が定めている金額を退職時にもらう
  3. 「給与×6%」が給料に上乗せされた額を毎月もらう
  4. 「給与×6%×契約期間」の額を退職時に一括でもらう

※支払い方法について、くわしくは……【働く人目線で解説】同一労働同一賃金で派遣社員はどう変わる?

Q.退職前に、有休消化はできる?

原則、退職前に有休消化可能です。

原則、派遣社員が派遣会社を退職する場合でも、退職前の有給消化は可能です。

ただし、有給休暇を消化できるのは、派遣先と契約を結んでいる業務期間中のみ。たとえば、契約期間の満了後から派遣会社を退職するまでに期間があったとしても、その間は有給休暇を取得できないケースもあります。

派遣契約期間中であれば、有休消化することができます。

また、契約期間中であっても、繁忙期などの影響で有給を取得できないことがあります。有給消化したい場合は、派遣会社へ早めに相談しましょう。

有給休暇を買い取ってもらえるケースも

通常、有給休暇の買い取りは労働基準法で禁止されていますが、退職時のみ例外的に認められています

買い取りの可否も派遣会社の制度次第なので、退職相談時に確認してみましょう。

有給休暇の買い取りができるケースや、その手続きについては、下記の記事にまとめています。

Q.派遣社員でも、失業給付はもらえる?

失業給付は、雇用保険に加入していれば受け取り可能です。

派遣社員でも、一定期間以上雇用保険に入っていれば、失業給付(雇用保険の基本手当)をもらえます。退職後に離職票を持ってハローワークに行き、手続きしましょう。自己都合退職であれば、手続きの約2ヵ月後から失業給付がスタートします。

ただし、退職日からさかのぼって2年間のうち、雇用保険に加入していた期間が12ヶ月以上ないと、失業給付を受け取れないので注意してください。

※失業保険の受け取り方について、くわしくは…Q&Aでわかる|自己都合退職でも失業保険を損せずもらう方法

雇用保険に加入しているかどうか調べるには?

雇用保険に加入しているかどうかは、給与明細で調べられます。加入していれば、雇用保険の引き落としがあるはずです。

給与明細が手元にない場合は、加入条件を満たしているかどうかセルフチェックしましょう。下記の2つの条件を満たしている場合、原則雇用保険に加入しているはずです。

  1. 31日以上継続して雇用されている
  2. 1週間の所定労働時間が20時間以上

Q.退職後の社会保険の手続き方法は?

退職後の社会保険の手続きは、転職先が決まっているかどうかで変わります。転職先が決まっていれば転職先が対応してくれますが、決まっていなければ自分で手続きする必要があります。

退職後に必要な社会保険の手続きは、転職先が決まっている(=退職日の翌日に転職先に入社する)かどうかで異なります。自分にあてはまる方を読んで、手続き内容を確認しましょう。

転職先が「決まっている」場合

転職先が決まっており、退職日の翌日に転職先に入社する場合は、転職先の会社が社会保険の切り替え手続きを行ってくれます

入社時に、下記の必要書類を提出しましょう。

〈手続きに必要な書類〉

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳
  • マイナンバーカード
  • 健康保険資格喪失証明書
  • 健康保険被扶養者異動届(扶養家族がいる場合)
  • 源泉徴収票(提出を求められたタイミングで提出)

※健康保険資格喪失証明書、源泉徴収票の発行は退職後になるため、入社日には提出できない場合があります。受け取り次第、あらためて提出しましょう。

転職先が「決まっていない」場合

次の職場が決まっていない場合(再就職まで期間がある場合や、再就職しない場合も含む)は、自分で社会保険の切り替え手続きをする必要があります。

厚生年金・健康保険それぞれ、切り替えの手続きを行いましょう。なお、手続きには期限があるので注意してください。

厚生年金の切り替え手続き

厚生年金の切り替え先の候補は2種類

国民年金に加入するか、家族の扶養に入るかを選択して、手続きを行います。

手続き場所
1. 国民年金に加入する
退職後14日以内に手続き)
住んでいる市区町村の役所の国民年金窓口で手続き
2. 配偶者の扶養に入る
(できるだけ早く)
配偶者の勤める会社を通して手続き

健康保険の切り替え手続き

健康保険の切り替え先の候補は3種類

国民健康保険に加入する・家族の扶養に入る・退職前の健康保険を任意継続する……という選択肢の中から選んで、手続きを行います。

手続き場所
1. 国民健康保険に加入する
退職後14日以内に手続き)
住んでいる市区町村の役所の国民年金窓口で手続き
2. 家族の扶養に入る
(できるだけ早く)
家族の勤める会社を通して手続き
3. 退職前に派遣会社で加入していた健康保険を任意継続する
退職後20日以内に手続き)
勤めていた派遣会社や、健康保険組合で手続き(郵送手続きも可)

保険の切り替えについて、くわしくは下記の記事にまとめています。

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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