5つの例文を紹介 人事(採用・労務)の志望動機の書き方
人事(採用・労務)の転職で、企業に評価される説得力ある志望動機をまとめるにはどうしたらいいのでしょうか。
人事の志望動機の書き方のほか、すぐに使える例文などを紹介します。
人事の転職で志望動機はどれだけ重要?
書類では見られないが、面接ではよく聞かれる
人事(採用・労務)の転職において、志望動機は書類選考ではあまり重視されませんが、面接ではよく聞かれる質問の一つで、答え方によっては合否に影響することもあります。
人事の書類選考で最も重視されるのは、あくまで「実務経験」。組織の規模感(採用人数や管理する社員数など)や業務範囲は企業によって異なるからこそ、採用担当者は職務経歴書から応募者の実務経験をくまなくチェックし、「自社で今まさに必要な人事業務を担える人材かどうか」を精査しているのです。
そのため志望動機については、無理に履歴書や職務経歴書に記載しなくても問題ないでしょう。
一方、面接ではよく聞かれるので対策必須
一方、人事の面接において、志望動機は一般的な質問の一つ。
人事は企業の「顔」であり、また経営資源の一つである「ヒト」を司る立場です。組織に対する影響範囲も大きいため、面接官は自社について深い理解があり、「この会社でこんな仕事をしたい」という明確な意思を持った人を採用したいと考えているのです。
内定を勝ち取るために、「なぜその会社に魅力を感じているのか」「なぜその会社で働きたいと思っているのか」、説得力ある志望動機を伝えられるように準備しておくことが大切です。
人事の志望動機を書くために必要な2つのこと
人事の転職において企業に評価される志望動機を作るためには、次の2つを整理しておくことが大切です。
そもそも志望動機は、その企業に応募した理由に加えて、入社後はどのように貢献したいと考えているかを伝えるもの。「1)転職を考えたきっかけ・転職で叶えたいこと」は、前者の「その企業に応募した理由」につながり、「2)活かせる経験/スキル」は後者の「入社後の貢献イメージ」を裏付ける根拠となります。
そのため、この2点をあらかじめ言語化しておくことで、説得力ある志望動機をスムーズに組み立てることができるのです。
1)転職を考えたきっかけ・転職で叶えたいこと
「現職では叶えられないこと」は何か
まずは、今までの業務経験を振り返り「転職を考えたきっかけ」を洗い出しましょう。その際、“業務やキャリア上の”「現職では叶えられないこと」を起点に考えるのがポイント。
例えば、「採用説明会への登壇や窓口業務がメインで、マンネリ化している」「給与計算や勤怠管理ばかりで、企画系の業務にチャレンジできない」といった状況に対して、「だから自分はどうしたいのか」、つまり、転職で叶えたいことを考えてみましょう。
(例)人事の転職のきっかけ→叶えたいこと
- (経験者)採用説明会への登壇や窓口業務がメインで、マンネリ化している→採用戦略の立案や「求める人物像」の言語化といった上流工程に携わりたい
- (未経験)現職で同僚からキャリアの相談など受けるうちに人事の仕事に興味を持ったが、現職では異動が難しい→人事としてのキャリアが積める環境で働きたい
…など

キャリア
アドバイザー
給料や残業がきっかけの場合は?
転職を考えたきっかけとして、「給料が低い」「残業が多い」といった待遇面への不満を伝えるのが絶対NGというわけではありません。
ただしその際は、例えば下記のように、採用担当者が「それなら転職を考えるのも無理はない」と納得できるような状況説明をする必要があります。
- 給料:「業績悪化による賞与カットで、年収が大幅に下がった」
- 給料:「ここ数年年収が上がらず、子どもも生まれたため、将来的な年収アップも視野に入れ、新しい環境にチャレンジしたい」
- 残業:「人手不足で恒常的に残業が多く、月80~100時間の残業が続いている」
応募先企業なら希望が叶うと考えた理由は?
転職で叶えたいことが整理できたら、なぜ応募先の企業なら希望が叶いそうだと考えたのか、応募先の特徴や惹かれた部分を整理してみましょう。
「転職のきっかけ(現職では叶えられないこと)」と「応募先企業を選んだ理由」に関連性や一貫性を持たせることで、説得力ある志望動機を作ることができます。
(例)人事の転職で叶えたいこと→応募先の特徴
- (経験者)採用戦略の立案や「求める人物像」の言語化といった上流工程に携わりたい→各事業部と連携した人材要件の定義のほか、将来的にはHRBPとして人事企画の業務にもチャレンジできる
- (未経験)人事としてのキャリアが積める環境で働きたい→労務管理のオペレーション業務から始まり、ゆくゆくは採用や育成などの経験も幅広く積んでいける
2)活かせる経験/スキル
次に、入社後に「活かせそうな経験/スキル・資格」を整理しましょう。職務経歴書とは違い、志望動機では経験や資格そのものの有無を問われるわけではありません。
これまでの業務経験や身につけたスキル・資格と、入社後に叶えたいことに一貫性があるか、経験やスキルを踏まえた活躍イメージを具体的に描けているかどうかが評価ポイントとなります。
そのため、志望動機の冒頭で「これまで◯◯や△△の業務を経験するなかで~」などと転職のきっかけにつなげる形で触れたり、締めの部分で「○○の経験/スキルを活かして貢献したい」といった形で貢献意欲をアピールしたりできれば、「入社後に活躍してくれそうだ」と評価される可能性が高まるでしょう。
(例)人事で活かせる経験
- 書類選考~クロージングまでの一連の採用業務の経験
- 採用戦略/計画の立案
- 新人研修や階層別研修の企画・運営
- 給与計算や勤怠管理などの労務管理
- 評価・報酬制度などの人事制度の設計・見直し
- 人事評価・組織配置やタレントマネジメント
…など
(例)人事で活かせるスキル・資格
- 候補者や他部署との関係構築力(巻き込み力・調整力)
- (採用目標人数など)目標達成に向けた行動力・課題解決能力
- 社会保険労務士
- 第一種/第二種衛生管理者
…など
応募先の採用ニーズに合った貢献イメージを
入社後に「活かせそうな経験/スキル・資格」を判断するには、応募先企業の業務内容や、そこで求められる経験・スキルへの理解が欠かせません。
求人の「具体的な仕事内容」「必須/歓迎要件」などをよく確認して、企業の採用ニーズに合う経験・スキルをふまえた貢献意欲・活躍イメージをアピールしましょう。
コラム:企業理解も深めておくと◎
人事は経営資源の一つである「ヒト」を司る立場上、深い企業理解が求められるため、面接官から「(叶えたいことにマッチする企業のなかでも)どうして当社を志望されたのですか?」「当社のどんな部分に魅力を感じているのですか?」といった質問をされることがあります。
その際に迷わず「◯◯なところに惹かれています」と答えられるよう、下記のような方法で応募先の事業や経営状況、社風などについても理解を深めておくのが得策です。
〈企業研究の一例〉
- 求人で「事業内容」「採用背景」などの項目を確認する
- ホームページや企業紹介サイトなどで事業内容や企業・経営理念のページを読む
- IR情報などから事業・経営状況や今後の展望について確認し、考える
- 応募先企業やその業界にまつわるニュースをチェックする
- 応募先企業で働いている知人がいれば、話を聞く
- (利用している場合)転職エージェントから内部情報を聞き出す
- (面接予定がある場合)面接官に逆質問する
一次面接フェーズでは求人やホームページにざっと目を通しておくレベルで問題ありませんが、最終面接のフェーズではさらに企業理解を深め、より志望度の高さが伝わる志望動機を用意する必要があります。
最終面接で伝える志望動機の作り方は、下記の記事で解説しています。
人事の志望動機の書き方
ここでは、人事の志望動機の書き方を解説します。
まず、人事の志望動機の基本構成と、その構成にしたがって作成した例文を確認してみましょう。
〈人事(経験者)の志望動機の例文〉
- 採用業務の上流工程に携われる環境に惹かれ、志望いたしました。
- 現職では5年間、人事部採用課にて中途採用領域における求人作成や窓口業務などを担当してまいりましたが、採用戦略や計画・予算の策定・立案や人材要件定義といった上流工程の業務に携われる環境にチャレンジしたく、転職を検討しております。求人にて、貴社の採用担当ポジションは各事業部と連携した人材要件の定義のほか、将来的にはHRBPとして人事企画の業務にもチャレンジできると拝見し、大変魅力に感じております。
- これまでの採用活動における一連のオペレーション業務の経験や、そこで培った関係構築力や目標達成に向けた行動力を活かし、貴社の組織拡大に貢献していく所存ですので、どうぞ面接の機会をいただけますと幸いです。
(328文字)
人事の志望動機は、上記のように(1)応募した理由(結論)、(2)その背景やエピソード、(3)入社後の意気込み、の3要素で構成するのが基本です。
この基本構成にしたがって、志望動機の作り方を具体的に見ていきましょう。
1.応募した理由(結論)
志望動機の書き出しではまず、応募した理由を結論として一言で述べます。
書き出しの表現に明確なルールはありませんが、応募先に惹かれたポイントなどを端的に示すのがオススメです。
書き出しの表現に迷う場合は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
2.その背景やエピソード
次に、1)で述べた「応募した理由(結論)」に至った背景やエピソードを説明します。
具体的には、転職しようと思ったきっかけや経緯を伝えます。なぜわざわざ転職しようと思ったのかについて、前の章で整理した「現職(前職)では叶えられなかったものの、応募先でチャレンジしたいと思っていること」を具体的に伝えましょう。
続けて、その思いや希望が「応募先なら叶えられる」と感じた理由やポイントに触れます。前述したように、説得力ある志望動機を作るには、「転職のきっかけ」から「応募先で自分の希望が叶えられると考えた理由」まで、一貫性を持たせることが重要です。
あわせて、応募先の採用ニーズとマッチする業務経験と身につけたスキルを記載することで、入社後の活躍イメージを抱いてもらうことができるでしょう。
3.入社後の意気込み
最後に、入社後の意気込みを語って締めます。現職(前職)での経験を活かしていきたいという姿勢などをアピールするとよいでしょう。
締めくくりの表現に迷う場合は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
人事の志望動機の例文5選
ここでは人事の志望動機の例文を、5つのパターンに分けて紹介します。
【採用】より大きな組織で働きたい(経験者)
〈例文〉
- より規模の大きな組織で採用担当者として成長できる環境に魅力を感じ、志望いたしました。
- 現職では人事総務課にて5年間、採用業務から労務管理まで幅広く担当しており、今後は採用担当者としてキャリアアップしていきたいという思いがありますが、業績悪化の影響から採用活動が鈍化しており、実務経験を積むのが難しい状況のため、転職を決意しました。貴社は現在、営業エリアの拡大にともない積極的な採用活動に取り組まれていると伺い、採用担当者としてより多くの経験を積める大変魅力的な環境だと感じております。
- これまでの採用人数は多くはありませんが、確実な内定承諾・入社に向けた部門長や社員、候補者との細やかなコミュニケーションや関係構築力を、貴社の採用業務でも発揮していく所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
(346文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 応募先のどんな部分に魅力を感じているのか、具体的に言及する
- 応募先でも活かせる能力や経験について触れる
【労務管理】企画系の業務に挑戦したい(経験者)
〈例文〉
- 人事企画業務にもチャレンジできる環境に魅力を感じ、志望いたしました。
- 現職では5年間、労務担当者として給与計算や勤怠チェック、健康診断の企画・実施といったオペレーション業務を担当してまいりましたが、より若いうちから企画業務の経験を積んでキャリアアップしたく、転職を決意しました。求人にて、この度応募いたしましたポジションは労務管理のほか、人事評価制度の設計・見直しやキャリア面談、研修の企画・実施などにも挑戦できると拝見し、大変魅力に感じております。
- 企画業務は未経験ですが、対応工数削減に向けてツール導入をしたり運用フローを見直したりといった業務改善に取り組んできた経験を活かし、社員のみなさまがより働きやすく・成長できる環境づくりに貢献できればと思いますので、どうか面接の機会をいただけますと幸いです。
(351文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 企画業務を経験してキャリアアップしたいという思いを強調する
- その思いを叶えられると感じた理由について、応募先の特徴に触れる
労務管理→採用に業務を変えたい(経験者)
〈例文〉
- 採用業務にチャレンジできる環境に魅力を感じ、志望いたしました。
- 現職にて5年間、労務担当者として社員の労働時間や組織としてのパフォーマンス状況について集計・分析をするなかで、育成・キャリア開発以前の「採用」の重要性を強く感じるようになり、採用業務に興味を持ちましたが、社内での異動は難しく転職を決意しました。貴社はジョブローテーション制度を採用されていて、労務管理以外にも採用業務や人事制度、組織開発など、人事として幅広い経験を積んでキャリアアップできる環境と伺い、大変魅力を感じております。
- 労務管理を通じて培った社員との関係構築力や調整力、データの分析力や作業の正確性などを活かしながら、採用業務をはじめ人事として少しでも早く業務範囲を広げられるよう努めてまいりますので、どうか一度面接の機会をいただけますと幸いです。
(359文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 別の業務に興味を持ったきっかけや理由について言及する
- これまでの経験や知識のうち、応募先でも活かせるものがあれば、言及できるとなおよし
幅広い経験を積んで管理職を目指したい(経験者)
〈例文〉
- 幅広い人事業務の経験を積み、将来的には管理職にもチャレンジできる環境に魅力を感じ、志望いたしました。
- 現職では5年間、採用担当者として書類選考からクロージングまでの一連の採用オペレーション業務を担当しておりますが、ここ数年間は増員や配置転換がなく、業務範囲を広げることが難しい状況です。貴社はジョブローテーション制度を採用されていて、採用業務以外にも労務管理や人事制度、組織開発といった幅広い経験を積み、将来的には人事部門の管理職も目指せる環境だと伺い、大変魅力を感じております。
- 少しでも早くマネジメント業務を担えるよう、採用業務を通じて培った巻き込み力や調整力、目標達成に向けた行動力を活かして成果を出していく所存ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
(328文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 現職では管理職になることが難しい理由や背景について触れる
- 管理職経験者の場合はマネジメント経験をアピールし、未経験者の場合は活かせる能力や経験、意気込みをアピールする
未経験での転職
〈例文〉
- 貴社を志望したのは、人事として幅広い経験を積んでいける環境に魅力を感じたからです。
- 現職では営業職として5年間勤務しておりますが、成績が伸び悩んでいた同僚からキャリアについての相談を受ける機会が多くあり、社員や組織のパフォーマンス最大化には、適切な採用や人事配置、キャリア開発が不可欠だと強く感じるようになりました。現職では異動が難しいため、人事ポジションでの転職を検討しておりますが、貴社は未経験者でも労務管理から任せてもらえ、ゆくゆくは採用や育成などの経験も幅広く積んでいけると伺い、大変魅力に感じております。
- 人事の仕事は未経験ですが、営業職として培ったコミュニケーション能力や目標達成に向けた行動力を活かしながら、貴社のさらなる組織拡大に貢献できればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(351文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 人事の業務に興味を持ったきっかけや理由について触れる
- 未経験でもいち早く成長し、貢献していきたいという前向きな思いを伝える
- 現職での経験や知識のうち、応募先でも活かせるものがあれば、言及できるとなおよし
志望動機の不安を解消するには?
志望動機は面接での答え方によって、合否に影響することがあります。一度作り終えたからといって気を抜かず、採用担当者の印象に残る内容になっているか、時間を置いて読み直しましょう。
下記の記事では、志望動機を書く上での大切なポイントや、効果的なアピールにつなげるためのコツなどについて解説しています。
こちらもあわせてチェックしておきましょう。
