6つの例文を紹介 法務の志望動機の書き方・例文
法務の転職で、企業に評価される説得力ある志望動機をまとめるにはどうしたらいいのでしょうか。
法務の志望動機の書き方のほか、すぐに使える例文などを紹介します。
法務の転職で志望動機はどれだけ重要?
書類では見られないが、面接ではよく聞かれる
法務の転職において、志望動機は書類選考ではあまり重視されませんが、面接ではよく聞かれる質問の一つで、答え方によっては合否に影響することもあります。
法務の書類選考で最も重視されるのは、あくまで「実務経験」。法務の業務範囲は企業によって異なるからこそ、採用担当者は職務経歴書から応募者の実務経験をくまなくチェックし、「自社で今まさに必要な法務業務を担える人材かどうか」を精査しているのです。
そのため志望動機については、無理に履歴書や職務経歴書に記載しなくても問題ないでしょう。
一方の面接において、志望動機は一般的な質問の一つ。面接官は自社について深い理解があり、「この会社でこんな仕事をしたい」という明確な意思を持った人を採用したいと考えているからです。
内定を勝ち取るために、「なぜその会社に魅力を感じているのか」「なぜその会社で働きたいと思っているのか」、説得力ある志望動機を伝えられるように準備しておくことが大切です。
法務の志望動機を書くために必要な2つのこと
法務の転職において企業に評価される志望動機を作るためには、次の2つを整理しておくことが大切です。
そもそも志望動機は、その企業に応募した理由に加えて、入社後はどのように貢献したいと考えているかを伝えるもの。「1)転職を考えたきっかけ・転職で叶えたいこと」は、前者の「その企業に応募した理由」につながります。また、「2)活かせる経験/スキル」は後者の「入社後の貢献イメージ」を裏付ける根拠となります。
そのため、この2点をあらかじめ言語化しておくことで、説得力ある志望動機をスムーズに組み立てることができるのです。
1)転職を考えたきっかけ・転職で叶えたいこと
「現職では叶えられないこと」は何か
まずは、今までの業務経験を振り返り「転職を考えたきっかけ」を洗い出しましょう。その際、“業務やキャリア上の”「現職では叶えられないこと」を起点に考えるのがポイント。
例えば、「総務と兼任していて、法務の仕事を極められない」「契約書の審査や他部署からの相談対応ばかりで、業務がマンネリ化している」といった状況に対して、「だから自分はどうしたいのか」、つまり、転職で叶えたいことを考えてみましょう。
(例)法務の転職のきっかけ→叶えたいこと
- (経験者)契約書の審査や他部署からの相談対応ばかりで、業務がマンネリ化している→戦略法務の業務にチャレンジできる環境で働きたい
- (未経験)一般事務として新規事業立ち上げに向けたサポート業務をするなかで法務に興味を持ったが、現職では異動が難しい→法務としてのキャリアが積める環境で働きたい
…など
キャリア
アドバイザー
給料や残業がきっかけの場合は?
転職を考えたきっかけとして、「給料が低い」「残業が多い」といった待遇面への不満を伝えるのが絶対NGというわけではありません。
ただしその際は、例えば下記のように、採用担当者が「それなら転職を考えるのも無理はない」と納得できるような状況説明をする必要があります。
- 給料:「業績悪化による賞与カットで、年収が大幅に下がった」
- 給料:「ここ数年年収が上がらず、子どもも生まれたため、将来的な年収アップも視野に入れ、新しい環境にチャレンジしたい」
- 残業:「人手不足で恒常的に残業が多く、月80~100時間の残業が続いている」
応募先企業なら希望が叶うと考えた理由は?
転職で叶えたいことが整理できたら、なぜ応募先の企業なら希望が叶いそうだと考えたのか、応募先の特徴や惹かれた部分を整理してみましょう。
「転職のきっかけ(現職では叶えられないこと)」と「応募先企業を選んだ理由」に、関連性や一貫性を持たせることで、説得力ある志望動機を作ることができます。
(例)法務の転職で叶えたいこと→応募先の特徴
- (経験者)戦略法務の業務にチャレンジできる環境で働きたい→新規事業による事業拡大に積極的で、経営層との距離感も近いため、契約交渉時の法的アドバイスといった戦略法務の経験を積める
- (未経験)法務としてのキャリアが積める環境で働きたい→まずは法務に関する簡単なサポート業務から始まり、ゆくゆくは法務の主担当も担っていける
2)活かせる経験/スキル
次に、入社後に「活かせそうな経験/スキル・資格」を整理しましょう。職務経歴書とは違い、志望動機では経験や資格そのものの有無を問われるわけではありません。
これまでの業務経験や身につけたスキル・資格と、入社後に叶えたいことに一貫性があるか、経験やスキルを踏まえた活躍イメージを具体的に描けているかどうかが評価ポイントとなります。
そのため、志望動機の冒頭で「これまで◯◯や△△の業務を経験するなかで~」などと転職のきっかけにつなげる形で触れたり、締めの部分で「○○の経験/スキルを活かして貢献したい」といった形で貢献意欲をアピールしたりできれば、「入社後に活躍してくれそうだ」と評価される可能性が高まります。
(例)法務で活かせる経験
- 各種契約書(和文・英文)の作成・審査(レビュー)
- 経営層や他部署からの法律相談対応
- 訴訟・紛争対応
- コンプライアンス対応(社員研修の企画・実施)
- 法改正にともなう社内規定の制定・改定
- 新規事業立ち上げやM&Aにともなう法的リスクの評価・提言
- 知的財産管理(特許・商標など)
- 弁護士対応
…など
(例)法務で活かせるスキル・資格
- 社内外の多くの関係者と関わる上での調整力・説明力
- 相談やトラブルに迅速かつ的確に対応するための情報収集/分析力
- 弁護士資格
- 英語力(TOEICなど)
…など
応募先の採用ニーズに合った貢献イメージを
入社後に「活かせそうな経験/スキル・資格」を判断するには、応募先企業の業務内容や、そこで求められる経験・スキルへの理解が欠かせません。
求人の「具体的な仕事内容」「必須/歓迎要件」などをよく確認して、企業の採用ニーズに合う経験・スキルをふまえた貢献意欲・活躍イメージをアピールしましょう。
コラム:企業理解も深めておくと◎
「”業務やキャリア上”叶えたいこと」にマッチする求人は一つとは限らないため、場合によっては面接官から「(叶えたいことにマッチする企業のなかでも)どうして当社を志望されたのですか?」「当社のどんな部分に魅力を感じているのですか?」といった質問をされることがあります。
その際に迷わず「◯◯なところに惹かれています」と答えられるよう、下記のような方法で応募先の事業や経営状況、社風などについても理解を深めておくのが得策です。
〈企業研究の一例〉
- 求人で「事業内容」「採用背景」などの項目を確認する
- ホームページや企業紹介サイトなどで事業内容や企業・経営理念のページを読む
- IR情報などから事業・経営状況や今後の展望について確認し、考える
- 応募先企業やその業界にまつわるニュースをチェックする
- 応募先企業で働いている知人がいれば、話を聞く
- (利用している場合)転職エージェントから内部情報を聞き出す
- (面接予定がある場合)面接官に逆質問する
一次面接フェーズでは求人やホームページにざっと目を通しておくレベルで問題ありませんが、最終面接のフェーズではさらに企業理解を深め、より志望度の高さが伝わる志望動機を用意する必要があります。
最終面接で伝える志望動機の作り方は、下記の記事で解説しています。
法務の志望動機の書き方
ここでは、法務の志望動機の書き方を解説します。
まず、法務の志望動機の基本構成と、その構成にしたがって作成した例文を確認してみましょう。
〈法務(経験者)の志望動機の例文〉
- 経営層に近い立場で戦略法務の経験を積める環境に惹かれ、志望いたしました。
- 現職では5年間、法務として契約書のレビューや事業部からの法律相談対応などを担当してまいりましたが、国内市場がメインで業績も悪化していることから業務範囲が固定化されており、スキルアップに向けて転職を検討しております。求人にて、貴社は既存事業とIT分野のかけ合わせで新規事業の創出に積極的に取り組まれており、経営層との距離も近いことから、事業立ち上げにともなう法的リスクの評価や解決策の提示といった戦略法務の経験も積めると拝見し、大変魅力に感じております。
- 前職で培ったIT分野の法律・判例の知識や実務経験を活かし、貴社のさらなる事業拡大に貢献していく所存ですので、どうぞ面接の機会をいただけますと幸いです。
(337文字)
法務の志望動機は、上記のように(1)応募した理由(結論)、(2)その背景やエピソード、(3)入社後の意気込み、の3要素で構成するのが基本です。
この基本構成にしたがって、志望動機の作り方を具体的に見ていきましょう。
1.応募した理由(結論)
志望動機の書き出しではまず、応募した理由を結論として一言で述べます。
書き出しの表現に明確なルールはありませんが、応募先に惹かれたポイントなどを端的に示すのがオススメです。
書き出しの表現に迷う場合は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
2.その背景やエピソード
次に、1)で述べた「応募した理由(結論)」に至った背景やエピソードを説明します。
具体的には、転職しようと思ったきっかけや経緯を伝えます。なぜわざわざ転職しようと思ったのかについて、前の章で整理した「現職(前職)では叶えられなかったものの、応募先でチャレンジしたいと思っていること」を具体的に伝えましょう。
続けて、その思いや希望が「応募先なら叶えられる」と感じた理由やポイントに触れます。前述したように、説得力ある志望動機を作るには、「転職のきっかけ」から「応募先で自分の希望が叶えられると考えた理由」まで、一貫性を持たせることが重要です。
あわせて、応募先の採用ニーズとマッチする業務経験と身につけたスキルを記載することで、入社後の活躍イメージを抱いてもらうことができるでしょう。
3.入社後の意気込み
最後に、入社後の意気込みを語って締めます。現職(前職)での経験を活かしていきたいという姿勢などをアピールするとよいでしょう。
締めくくりの表現に迷う場合は、下記の記事もあわせてチェックしてみてください。
法務の志望動機の例文5選
ここでは法務の志望動機の例文を、5つのパターンに分けて紹介します。
法務の業務に専念したい(経験者)
〈例文〉
- 法務の業務に専念できる環境に魅力を感じ、志望いたしました。
- 現職では総務法務課にて5年間、契約書審査や相談対応のほか、備品・設備管理や社内行事の企画・運営などの総務業務も幅広く担当してまいりましたが、国際競争力向上に向け法務機能の強化が叫ばれるなか、改めて自身のキャリアを見つめ直した結果、訴訟対応や戦略法務も含め、より法務の経験を中心に積める環境で働きたいという思いが強まり、転職を決意しました。貴社は海外進出に積極的で、国際取引にともなう法的リスクの分析や解決策の提案なども経験できると伺い、大変魅力に感じております。
- 法務としての経験は限られていますが、国際取引に関するWebセミナー受講や英語学習を自主的に行っており、X月にはTOEICXXX点を達成しました。少しでも早いキャッチアップに努めますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(369文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- なぜ法務を極めたいと考えたのか、理由や背景に触れる
- スペシャリストを志望する上で、応募先のどんな部分に惹かれたのかについて言及する
管理職(法務部長など)を目指したい(経験者)
〈例文〉
- 幅広い法務業務の経験を積み、将来的には法務部のマネージャーを目指せる環境に魅力を感じ、志望いたしました。
- 現職では5年間、法務として契約書のレビューや法律相談対応などを担当してまいりましたが、少数精鋭で増員や配置転換がなく、業務範囲が固定化されていてマネジメント経験を積むことも難しい状況です。この度応募させていただいたポジションは、訴訟やコンプライアンス対応、戦略法務の業務も幅広く経験できスキルアップできることはもちろん、将来的には法務部長も目指せると伺い、大変魅力に感じております。
- 法務としてまだ不足している経験はありますが、少しでも早く対応可能範囲を広げ、貴社のさらなる事業拡大や組織力向上に貢献できればと思いますので、どうか面接の機会をいただけますと幸いです。
(334文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 現職では望むキャリアが描けない理由について、納得できる内容を伝える
- 管理職経験者の場合はマネジメント内容を具体的に述べ、未経験の場合は前向きな意欲を述べる
法律事務所→事業会社への転職(経験者)
〈例文〉
- パラリーガルとしての経験を活かしながら、事業会社の一員として法務のキャリアを積んでいきたいと考え、志望いたしました。
- これまで5年間、◯◯法律事務所の事務職員として、訴状や申立書の作成サポートや法律・判例の調査などを行ってきましたが、企業様案件に関わるなかで、事業会社の一員として一つの商品・サービスに長く深く関わりたいという思いが強まり、転職を決意しました。貴社は業界でもトップシェアを獲得されていて、海外進出にも積極的だと伺い、国際取引を含め幅広い経験を積める点に魅力を感じております。
- 事業会社での実務経験は未経験ですが、契約書のレビューや相談、訴訟の対応、法律・判例の調査などの経験は、貴社の業務でも活かせると考えておりますので、どうか一度面接の機会をいただけますと幸いです。
(340文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- なぜ事業会社で働きたいと思ったのか、理由や背景について触れる
- なかでも応募先のどんな部分に惹かれているのかについても、言及する
- 現職と応募先で業態・職種が違っても、活かせる経験や知識があることを強調する
異業種からの転職(経験者)
〈例文〉
- 法務としての経験を活かしながら、日本の自動車産業の発展に貢献できる環境に魅力を感じ、志望いたしました。
- これまで5年間、主に魚介類を扱う食品加工メーカーにて、契約書のレビューや法律相談、訴訟対応などを担当してきましたが、内需の落ち着きや国際競争力の低迷が叫ばれるなか、国内の活気を取り戻すべく、日本の産業を支える自動車業界に挑戦したいという思いが強まり、転職を決意しました。貴社は昨今の車には欠かせない数多くの電装品で大きなシェアを獲得されており、自動車業界を牽引できる環境に大変魅力を感じております。
- 自動車業界は未経験ですが、同じものづくりに関わる者として、開発部門や製造部門など多くの技術職と連携し法的リスクの分析・解決に努めてきた経験を、貴社の法務ポジションでも活かしていければと思います。
(347文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 応募先の業界に興味を持ったきっかけについて触れる
- 現職と応募先が異業種でも、活かせる経験や知識があることを強調する
未経験での転職
〈例文〉
- 貴社の法務ポジションを志望したのは、法務部としてのモットーに共感したからです。
- 現職で一般事務として新規事業立ち上げに向けた書類作成や調査のサポートを行うなかで、法務部に相談する機会が多く、法律のプロとして助言を行う法務としてのキャリアを歩みたいと考えるようになりましたが、異動は難しく転職を決意しました。貴社の法務部は「攻めの法務で組織をドライブする」ことを掲げ、戦略法務の業務にも主体的に取り組まれていると伺い、大変魅力に感じております。
- 法務の仕事は未経験ですが、一般事務として培ったドキュメンテーション能力や、先回りして課題解決に取り組む姿勢や行動力を活かしながら、貴社の事業拡大や法務部の強化に貢献できればと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
(330文字)
〈おさえておきたいポイント〉
- 法務の業務に興味を持ったきっかけや理由について触れる
- 未経験でもいち早く成長し、貢献していきたいという前向きな思いを伝える
- 現職での経験や知識のうち、応募先でも活かせるものがあれば、言及できるとなおよし
志望動機の不安を解消するには?
志望動機は面接での答え方によって、合否に影響することがあります。一度作り終えたからといって気を抜かず、採用担当者の印象に残る内容になっているか、時間を置いて読み直しましょう。
下記の記事では、志望動機を書く上での大切なポイントや、効果的なアピールにつなげるためのコツなどについて解説しています。
こちらもあわせてチェックしておきましょう。
この記事の担当者
「転職Hacks」編集部
株式会社クイック
株式会社クイックが運営する、転職活動にまつわる情報サイト「転職Hacks」の編集部。履歴書・職務経歴書の書き方や面接対策などのノウハウ記事、キャリアの悩みを解消するインタビュー・コラムを掲載中。