金額に関するQ&A付 基本給とは?手取りや手当との関係も解説

求人票や給与明細で目にする「基本給」。名前は知っていても、くわしく知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。

この記事では、基本給の特徴や種類、基本給に関する疑問などを解説します。

基本給とは?

基本給とは、一体どのような賃金なのでしょうか。意味や仕組みについて説明します。

基本給は手当などを含まない基本賃金

一般的に、基本給とは給与のうち手当の金額を除いた基本賃金のことを意味する場合が多いです。月給制の場合、毎月決まった額が支払われ、給与明細にも記載されています。

給与明細上での基本給イメージ

毎年春になると、基本給の底上げとなるベースアップ(ベア)を巡り、労働組合と会社が交渉をする「春闘」が繰り広げられます。ベアとは、基本給の賃金カーブそのものを上昇させることを指します。

残業代・賞与・退職金の計算に使用される

基本給は、残業代や、賞与(ボーナス)、退職金などの金額計算にも利用されます

残業代を計算する際には、基本給を基に算出した「1時間あたりの賃金」を基準として計算します。また、賞与や退職金の計算についても、多くの場合は基本給をもとにします。

そのため基本給が高ければ、その分残業代や賞与も高くなります

残業代の算定式の例

残業代(法定時間外労働の場合)の計算方法は、その割増率の最低限度が労働基準法で定められています。

1時間あたりの基礎賃金(時給)×1.25(割増率)×残業時間

※1時間あたりの基礎賃金

月給(基本給、地域手当・役職手当・資格手当など)÷(1日の所定労働時間×1ヶ月の勤務日数)

※残業代についてくわしくは→正しい残業代の計算方法

賞与や退職金の算定式の例

賞与や退職金は、会社によって計算方法が違います。詳しい計算方法については勤務先の就業規則をチェックしましょう。

たとえば以下のような例があります。

〈賞与(ボーナス)〉

基本給(算定基礎額)×賞与倍率+調整額

基本給を算定基礎額として用いる場合、査定時点と支給時点のどちらを基準とするかは企業によって異なります。

※ボーナスについてくわしくは→ボーナスの平均と実態|民間企業・公務員

〈退職金〉

退職時の基本給(算定基礎額)×勤続年数ごとの係数×退職事由別の支給率

※退職金についてはこちら→退職金はいくらもらえる?相場は?

基本給と混同されやすい用語

基本給と混同されやすい「給与」と「手取り」について説明します。

給与

給与とは、基本給以外の手当も含めた会社から払われるお金の総額(額面給与、総支給額)です。

額面給与の内訳には「基準内給与」と「基準外給与」があり、基本給は「基準内給与」にあたります。

基準内給与

基本給や職務手当など、毎月一定の金額が支払われる項目

基準外給与

残業手当、休日出勤手当など毎月変動する項目

基本給と基準内給与・基準外給与のイメージ。基準内給与は、毎月同じ額が支給される「基本給」や通勤手当、職務手当、住宅手当など。基準外給与は、勤務時間などによって変化する休日勤務手当や出張手当など。

手取り

手取りとは、給与(額面給与)から所得税や住民税などの税金、年金や健康保険料などの社会保険料が引かれた(控除)あと、自分の手元に残るお金です。

手取り金額のイメージ

※手取りについてくわしくは→給料の手取り計算方法&平均給与の実態

基本給について就職・転職時に気をつけるべき点

基本給は残業代などの計算に影響するため、就職・転職活動においても気をつけてチェックしたいところです。

求人票の情報を確認するときの注意点を紹介します。

基本給の割合が低い求人は要注意

手当が多く、給与のなかで基本給の割合が低い場合、会社の方針や経営状態によっては、将来的に手当がなくなる可能性があるので注意が必要です。

また、基本給は残業代や賞与などの金額計算に利用されるため、一見同じ月給に見える人同士でも、基本給の割合に差があると、年収にも差が出る可能性があります。

求人票では職務手当や固定残業代を含む場合も

求人票に「基本給」と記載されている場合、会社によっては職務手当や固定残業代(みなし残業代)が含まれていることもあります。

そのほかにも、毎月一定の金額が支払われる賃金をまとめて「基本給」と記載している場合があるので、必ず内訳を確認しましょう。

また、手当がなく、基本給をそのまま月給としている会社もあります。

基本給の3種類の決め方

基本給の額の決め方は、以下の3つのパターンに分類されます。どのパターンを採用しているかは、会社によって異なります。

仕事給:仕事の能力や仕事の難易度など仕事に直接関係する要素を評価する。職能給・職務給が代表的。属人給:学歴、勤続年数、年齢など従業員個人の特性を評価する。総合決定給:年齢、勤続年数、学歴、職種、職務遂行能力など仕事給・属人給の要素全てを総合的に評価する。

仕事給

「職務・職種や仕事内容」「職務遂行能力」「業績・成果」など、仕事に直接関わる内容が基本給を決める要素となっています。

属人給

属人給では、「学歴」や「年齢・勤続年数」など社員の属性により基本給が決められます。

総合給

総合給は、仕事給と属人給両方の要素によって基本給を決める方法です。反対に、複数の項目が基本給の決定に関係していても、片方の要素が含まれなければ仕事給、または属人給のどちらかに分類されます。

基本給にまつわるQ&A

ここでは、基本給にまつわる疑問について解説していきます。

休みを取得すると基本給が下がる?

休みをとっても基本給の額が変わるわけではありませんが、給与形態によっては休んだ分の金額が引かれ、手取りが減ることがあります

毎月決まった給料が支払われる月給制の場合、有給休暇を使わず欠勤したり、遅刻・早退をしたりすると、その分の基本給が引かれることが一般的です。また、一日ごとの給料が月1回まとめて支払われる日給月給制の場合、働いた分だけ支払われるので、休んだ分の給与(基本給や手当)は支払われません。

※月給制についてくわしくは→月給制ってどんな給与体系?

※日給月給制についてくわしくは→日給月給制とは?休むと減給!?

歩合制の場合、基本給はあるの?

歩合制の場合、固定給と歩合給が支払われますが、固定給のなかに基本給や毎月金額が変わらない手当(家族手当・住宅手当・通勤手当など)が含まれている場合もあります。

歩合制は主に不動産や保険の営業職に導入されているケースが多いですが、成果が出なかった時は給料が低くなってしまう可能性があるので注意が必要です。

このような職種に挑戦するときは、きちんと成果を出せるか、成績が良くないときの家計のやりくりはどうするか、検討しておいた方がいいでしょう。

基本給はどんなときに下がるの?

給与体系の変更や業績悪化などの理由で、基本給の減額を打診される場合があります

基本給が下がると、連動して残業代や賞与も下がる可能性が高いでしょう。基本給の減少分を調整手当などの名目で支給され、毎月の基準内給与は変わらない場合もあります。しかし、手当や賞与は「基本給」を基準にして計算される場合もあるため、その分年収は減る可能性があります。

ただし、労働条件をマイナスにする「不利益変更」を社員の同意なしに行うことは、労働契約法第8条により禁止されています。業績悪化などの事情があって人件費の削減を行うときは、減額の理解が得やすい手当などから手をつけていくことが一般的です。

基本給の減額を知らされたときは、そのまま鵜呑みにせず理由をしっかり確認し、同意するかどうかを判断しましょう。

基本給16万の場合、東京都の最低賃金を下回る?

厚生労働省が定める最低賃金は地域によって異なります。東京都の場合は月給が16万6,560円(1日8時間、月20日間労働と想定)を下回っていると、最低賃金法違反となります。

たとえば手当がなく、基本給15万円がそのまま月給となっている場合は、労働時間との兼ね合いで最低賃金より低くなっていないか調べてみましょう。

最低賃金は、事業所がある地域の金額が採用されます。また、手当があっても、臨時に支払われる賃金(結婚手当など)や、皆勤手当・通勤手当・家族手当は最低賃金の対象とならないので注意が必要です。

〈月給の最低賃金の調べ方〉

  • 年間所定労働日数 240日(年間休日125日)
  • 1日の所定労働時間が8時間
  • 東京都の最低賃金時間額(令和3年度)が1,041円

の場合

年間の所定労働時間数
=240日×8時間
=1,920時間

1ヶ月あたりの平均所定労働時間数
=1,920時間÷12ヶ月
160時間

月給の最低賃金
160時間×1,041円
16万6,560円(令和3年度)

まとめ

基本給とは、手当を除いた基本賃金で、月によって金額が変動することはありません。

基本給は残業代、賞与(ボーナス)、退職金などの金額計算に利用されるので、給与のなかで基本給の割合が低い場合や、基本給の減額を打診されたときは注意が必要です。

就職・転職活動中は、基本給にも注目して求人票を確認するようにしましょう。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の監修者

社会保険労務士

三角 達郎

三角社会保険労務士事務所

1972年福岡県生まれ。東京外国語大学卒業。総合電気メーカーにて海外営業、ベンチャー企業にて事業推進を経験後、外資系企業で採用・教育・制度企画・労務などを経験。人事責任者として「働きがいのある企業」(Great Place to Work)に5年連続ランクインさせる。
現在は社会保険労務士として、約20年の人事キャリアで培った経験を活かして、スタートアップ企業や外資系企業の人事課題の達成から労務管理面まで、きめ細やかにサポートを行っている。
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