働く人目線で解説 Q&Aでわかる試用期間のすべて

試用期間という言葉から「能力不足だと思われたらすぐに解雇されてしまうの?」と不安になる人や、逆に「合わなければ簡単に退職できる?」と思う人も多いはず。

この記事では、試用期間にまつわるすべての疑問に、働く人目線でお答えします。

Q.試用期間とは?

本採用を前提とした見極め期間

Q.試用期間とは? A.本採用を前提とした見極め期間(企業が、選考ではわからなかった応募者の能力や適性を、実際の働きぶりを通して見極める)

試用期間とは、いわゆる「本採用を前提とした見極め期間」のこと。企業が、選考ではわからなかった応募者の能力や適性を、実際の働きぶりを通して見極めるために設けられています。

法律的には、試用期間のある労働契約は「解約権留保付労働契約」と称されます。試用期間満了時まで、企業によって解約権行使が留保(=労働契約を解消する権利を一時的に保持)されているため、そのように称されます。

また、解約権留保付労働契約という名称のとおり「試用」であっても労働契約であることには変わりないため、労働契約法・労働基準法が適用されます

なお、試用期間を設ける場合、企業は就業規則を示したり、労働条件通知書に試用期間の長さや条件を記載したりするなどし、労働者の合意を得るのが前提です。労働基準法には試用期間に関する規定がないため、試用期間について企業ごとで、あるいは契約内容で、決まりを明確に定めておく必要があります。

期間は3ヶ月か6ヶ月が一般的

試用期間の長さは3ヶ月か6ヶ月が一般的ですが、会社によって異なります

短い場合は2週間や1ヶ月、最長でも1年が限度で、それ以上は適性を見極めるには長すぎるとして、ふさわしくないとされています。

Q.試用期間だと、簡単に解雇されてしまう?

正当な理由がない限り、解雇されない

Q.試用期間だと、簡単に解雇されてしまう?A.正当な理由がない限り、解雇されない

試用期間=実際の働きぶりを通して見極める期間だからといって、簡単に解雇されるわけではありません

企業が労働者を解雇するには、客観的に合理的な理由があって社会通念上相当なものという、端的に言えば「正当な理由」が必要とされています(労働契約法16条)。試用期間付であっても労働契約に変わりはないことから、基本的には正当な理由が必要であることが最高裁判例によって示されています。

ただ、解雇するための正当な理由に当たる範囲は本採用後に比べて広く「試用期間中」であるという状況も踏まえた上で判断されます

試用期間である以上、解約権の行使は通常の場合よりも広い範囲で認められますが、試用期間の趣旨・目的に照らし、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当とされる場合にのみ許されます。

※参照→
「試用期間」に関する具体的な裁判例の骨子と基本的な方向性|厚生労働省

入社14日以降の解雇は通知が必要

入社14日以降に解雇される場合、解雇になる日の30日前までに「解雇する予定である」と通知されます(労働基準法第20条、21条)。もし「明日から来なくていい」などと即日解雇を言い渡された場合は、30日分以上の平均賃金が必ず支給されます。これを解雇予告手当といいます。

ただ実態としては、労働基準法20条、21条を利用して、試用期間を2週間と設定した上で解雇予告手当が必要ない14日以内に解雇したり、試用期間の終了とともに退職を促したりする企業もあります。

しかし、労働基準法20条、21条は、14日以内の雇用の場合には解雇予告手当が不要としているだけであり、解雇の際に正当な理由が必要であることは変わりありません。試用期間に関する条件については、お互いの同意がない限りは認められず、そもそも解雇理由が正当ではないケースも多くあります

解雇されそうになった場合、まずは就業規則や労働条件通知書にそのような記載があるのか確認してください。その上で不当解雇だと感じる場合には、労働センターや弁護士などの専門家に相談しましょう

▼試用期間中の解雇についてくわしくは…

Q.試用期間中ならすぐに退職できる?

労働契約を結んでいるため、即日退職はできない

Q.試用期間中ならすぐに退職できる?A. 労働契約を結んでいるため、即日退職はできない

試用期間中も退職することはできますが、法律上は労働契約が結ばれているため、即日退職できる訳ではありません

有期労働契約、無期労働契約のいずれにおいても、企業への労働契約の解約の申し入れ(=退職したいという意思表示)は、原則として2週間前までに行う必要があります(民法626条、627条)。

試用期間はあくまで「企業が労働者を」見極める期間です。円満退職するためにも「退職は退職希望日の1ヶ月前までに申し出ること」など、就業規則や雇用契約書に書かれている決まりに沿って対応するのが誠実でしょう。

退職の切り出し方についてはこちら

ただ、中には「業務内容が聞いていた条件と異なる」「入社早々、パワハラされている」など、明らかに企業側に問題があり辞めたいと思っていても、企業がそれを認めず、スムーズに退職できないこともあるでしょう。

そのような場合は、少なくとも退職届を提出すれば2週間後に退職が成立しますし(民法第627条1項)、過度なパワハラなどの法律上も「やむを得ない事由」があると考えられるときは即時の退職も認められるので(民法628条)、安心してください。

▼試用期間中の退職についてくわしくは…

Q.試用期間中は給料が低い?ボーナス・残業代は出ない?

Q.試用期間中は給料・ボーナス・残業代は?A.給料…本採用時より低いことも。ボーナス…もらえないor満額に満たないこともある。残業代…支払われないのは違法。

給料…本採用時より低いこともある

試用期間中の給料は、本採用時より低いことがあります

ただし、求人票や労働条件通知書に記載がない場合や、合意していない場合は違法なので、まずは確認してみましょう。

ボーナス…もらえないor満額に満たないことはある

試用期間中のボーナスはもらえない、もしくは満額に満たないことがあります

そもそも法律上、企業にボーナスの支払い義務はありません。そのため、ボーナスの有無や支払い基準は企業に委ねられており、それは試用期間中でも本採用後でも同じです。

残業代…支払われないのは違法

試用期間中であることを理由に残業代が支払われないのは違法です。

企業には、法定労働時間を超える労働に対する賃金の支払いが義務付けられています(労働基準法第32条)。これは試用期間中でも本採用時でも変わりません。

企業には、時間外手当のみならず、深夜残業の割増手当や休日出勤手当についても、本採用時と同様に割増賃金(残業代)を支払う義務があります。残業代が支払われていない場合は、就業規定の残業に関する部分を確認した上で、担当者に相談するようにしましょう。

▼試用期間中の給与についてくわしくは…

Q.試用期間中の社会保険はどうなる?

社会保険は入社初日から加入する

Q.試用期間中の社会保険はどうなる?A.社会保険は入社初日から加入する

試用期間でも、入社初日から社会保険(雇用保険、健康保険、労災保険、厚生年金保険)の加入対象になります

※40歳以上は介護保険も含む

ただし、これはフルタイムの正社員の場合に限ります。健康保険と厚生年金保険については、「1週間の所定労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3未満」の人は、条件によっては対象外になり、加入しないこともあります。

▼試用期間中の社会保険についてくわしくは…

Q.試用期間を延長された!違法?

延長=違法とは言い切れない

Q.試用期間を延長された!違法?A.延長=違法とは言い切れない

試用期間の延長を制限する法律はないため、試用期間の延長=違法とは言い切れません

以下3つの条件を満たしていれば、その延長は正当だと認められる可能性が高いでしょう。

  1. 合理的な理由・特段の事情がある
  2. 就業規則で試用期間の延長について規定されている
  3. 労働者への事前通知・合意がある

(1)の具体例としては「無断欠勤や欠席が多い」「勤務態度が悪く注意や指導したのにも関わらず改善されない」などが挙げられます。延長によって改善が見られる可能性があることから、延長を認める条件の1つとなっています。

(2)(3)は、労働契約時の前提となる部分です。事前に通知・合意があったかを意味します。

試用期間の延長が違法かどうかは、個別の事情でケースバイケースと言えます。試用期間を延長されて不安を感じた方は、労働センターや弁護士などの専門家に相談してみましょう。

▼試用期間中の延長についてくわしくは…

この記事の監修者

弁護士

南 陽輔

一歩法律事務所

大阪市出身。大阪大学法学部卒業、関西大学法科大学院卒業。2008年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。その後、大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立。誰もが利用しやすい弁護士サービスを心掛け、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行う。

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