書いてもいい3つの理由 履歴書の退職理由は必ず「一身上の都合」?
履歴書に退職理由を書くべきか、書くとしたらどのように書いたらいいのか…。
一般的に、退職理由を書くのは住所の下の職歴欄ですが、どこまでの内容を書けば良いのかは悩みもの。
ここではそんな履歴書の職歴欄に退職理由を記す際の書き方をご紹介。さらに、志望動機欄や一部の履歴書に設けられている退職理由欄で退職理由に言及する場合の書き方も、合わせて解説していきます。
履歴書の職歴欄に退職理由を書く場合の注意点
履歴書に書く退職理由は「一身上の都合により…」等の一言でOK
具体的に退職理由を書かないと不利になるような場合を除いて、履歴書の職歴覧には「一身上の都合により退職」「契約満了のため退職」「会社都合により退職」といった決まり文句を書くだけで構いません。履歴書の職歴欄はあくまでキャリアの概略を書くための欄。スペースが限られているからです。
具体的な退職理由は職務経歴書や面接で伝えれば問題ありません。
自己都合退職(退職願(届)を出して辞めた人)は「一身上の都合により」
上司に退職したい旨を伝え、自ら会社を辞めた人は、下記見本のように、退職年月とともに「一身上の都合により退職」と書けばOKです。
2012年4月 ◯◯◯◯株式会社 入社
2015年7月 一身上の都合により退職
期間契約で働く人が契約満了で退職の場合…「契約期間満了につき」
派遣社員や契約社員など、あらかじめ「○月○日まで」と契約期間が決まっている人が、その契約期間満了の日を迎えて退職した場合は、「契約期間満了につき退職」と書きましょう。
2012年4月 ◯◯◯◯株式会社 入社
2015年7月 契約期間満了により退職
契約期間の節目で辞めたことが「契約期間満了」の条件ですから、契約延長の話を断って辞めた場合も、それが契約満了日の退職であれば、「契約期間満了」にあたります。
なお、契約期間よりも前に退職した場合は、自ら辞めたことになるため、「一身上の都合につき」と書きましょう。
会社側から労働契約を解約されて退職した場合…「会社都合により」
リストラや倒産など…会社側からの求めに応じて退職した場合は、会社都合退職にあたります。
下記のように「会社都合により退職」と書きましょう。
2012年4月 ◯◯◯◯株式会社 入社
2015年7月 会社都合により退職
会社都合退職にあたる条件
次のうちいずれかの条件で会社を辞めた場合のみ、会社都合に該当します。
(1)倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者
(2)事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
(3)事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
(4)解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
(5)事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)※
※(5)の退職勧奨は、会社側からの求めに対して承諾してしまうと自分から退職したと見なされ、自己都合(一身上の都合)退職扱いにされてしまう場合があります。
詳しくは…
参考:「会社都合退職にまつわる正しい知識(長所・短所~条件など)」
会社都合退職になるケースは、最後まで自分の意志で辞めようとしなかったかどうか
「倒産」や「経営不振による人員削減」で仕方なく退職した場合は会社都合になりますが、「経営が傾いてきた」「倒産しそう」と自己判断して退職した場合は、自己都合退職と見なされます。
一般的な正社員で最も多いのは『一身上の都合により』
上記のように、会社都合退職となるケースはごく一部。期間契約の場合を除き、正社員で働いている人に最も多い退職理由は、「一身上の都合により」となります。
退職理由を偽ることはできない
本当は自己都合で辞めたにもかかわらず、「会社都合より退職」と書いたり、逆にリストラにあったのに「一身上の都合により」と書くのは、履歴書に虚偽の内容を記載したとして、経歴詐称にあたります。
もしも不利になりそうだ…と思うような場合は、次でご紹介するように、職歴欄に具体的な退職理由を明記すると良いでしょう。
職歴欄に退職理由を具体的に書いた方が良いケース
前述のように、履歴書の職歴欄に退職理由を書く際は、「一身上の都合により…」などの最低限の一言で構いません。ですが、「一身上の都合」や「会社都合」といった一言では、退職にまつわるこちらの事情を伝えることはできません。
特に次にご紹介するようなケースでは、退職理由をはっきり説明しないと不利になってしまう場合が考えられます。そのような場合には、「一身上の都合により…」等の代わりに、具体的な退職理由を一言記載しておくのも手です。
職歴欄に退職理由を具体的に書いた方が良いケース
(1)転職回数が多い
例えば、短期間で仕事を転々としていたり、20代で4~5回以上も転職をしている場合。
(2)職歴に一貫性がない
SE→販売員→事務職→営業職など…これまでの経験職種や業種がバラバラの場合。
(3)職歴に長期間ブランクがある
仕事を辞めてから概ね半年以上のブランクがある場合。
順番に書き方とポイントを見ていきましょう。
転職回数が多い場合
転職回数が多い履歴書は、採用担当者に「採用してもすぐ辞めてしまうのでは…?」という懸念を与えてしまいがちです。納得のいく退職理由を伝えておくことで、少しでもその可能性を払拭しましょう。
例.
2015年7月 親の介護に伴い退職
2015年7月 結婚に伴い退職
2015年7月 出産のため退職
2015年7月 海外移住に伴い退職
後ろ向きな理由で辞めてしまった場合も、新しい仕事に挑戦する積極性や、キャリアアップを目指しているという熱意をアピールすると良いでしょう。
例.
2015年7月 キャリアアップのため退職
2015年7月 他業界へ挑戦するため退職
職歴に一貫性がない場合
業種や職種に一貫性が見えない履歴書は、採用担当者に「知識やスキル、経験の形成が中途半端ではないか」という懸念を与える可能性があります。
もしも目に見えない一貫性があっての転職ならば、詳しい説明は職務経歴書でするとしても、誤解を与えないよう履歴書上でその旨を匂わせておくと良いでしょう。
例.
2010年4月 株式会社●● 入社
第3営業部配属にてシステム営業に従事
2015年7月 プログラマ転身のため退職
職歴に長期間のブランクがある場合
退職日からだいぶ時間が経っている人や、職歴に空白がある場合は、その間に何をしていたのかとても気にされます。
退職後に転職活動をしていたとしても、通常、転職先が決まるまでの期間は長くても2~3ヶ月程度。半年以上ブランクがある場合は、その間何をしていたか、具体的な説明が必要に。
また、長い期間、会社勤めから離れていた人は、「社会人復帰できるだろうか」という懸念を与えてしまう場合もあります。状況に応じて、退職理由を書き添えましょう。
例.資格の習得のためにブランクが空いていた場合
2012年4月 ◯◯◯◯株式会社 入社
2015年1月 資格取得のため退職
例.病気の療養でブランクが空いていた場合
2012年4月 ◯◯◯◯株式会社 入社
2015年1月 病気治療のため退職(7月31日現在、完治)
※必ず完治した旨も記載すること。完治してから転職活動を行うこと。
例.ブランク中、フリーランスで活動していた場合
2012年4月 ◯◯◯◯株式会社 入社
2015年3月 一身上の都合により退職。以後フリーランスにて活動
履歴書の職歴欄に書けるのは、あくまで簡単な一言のみより詳しい説明やアピールは、志望動機欄や職務経歴書、面接等で行いましょう。
*参考:「転職回数が3回以上でも不利にならない、転職対策決定版」
職歴欄以外に退職理由を記入する場合
基本的に、退職理由は職歴欄に記入すれば良いですが、購入した履歴書に退職理由欄があったり、志望動機欄で退職理由に触れようと考えている方もいるでしょう。
ここでは、それぞれのケースに分けて解説します。
履歴書に退職理由欄が付いている場合
退職理由欄付きの履歴書を活用する場合、退職理由欄には、直近の前職を辞めた理由を書けばOKです。
まだ会社を退職していない、現職中の場合は書くことがなく空欄になってしまいますから、退職理由欄のない履歴書を使いましょう。
わかりやすく簡潔に。愚痴や不平不満はNG
職歴欄には書ききれなかった、具体的な退職理由を記載します。
読んだ採用担当者が、「なるほど、それで退職を決意したのか」と納得できる内容が第一。わかりやすく簡潔な文章を心がけましょう。
ただし、どんなに納得できそうなものであっても、ネガティブな理由はNG。パワハラや上司との軋轢、人間関係のトラブルなど…どんなに前職に対して不満が溜まっていたとしても、絶対に退職理由欄には書かないこと。
「自分のキャリアを伸ばしたい」「スキルアップ」をしたいという前向きな理由で相手を納得させられるようにしましょう。ただし、病気や出産など止むを得ない退職理由の場合は、そのことをそのまま伝えればOKです。
例.退職理由欄(1)
前職では、◯◯という商品を担当し、△△という実績を上げました。この度、前職での経験を生かして、新しい分野に挑戦したいと考え、退職しました。
例.退職理由欄(2)
前職では、◯◯という業務を担当していましたが、病気治療のため退職をしました。現在は完治しており、業務にも支障がない状態に回復したため、これまでの経験・スキルを生かし、御社の◯◯職に挑戦したいと考えています。
退職理由欄は志望動機欄と対をなす
履歴書の退職理由欄は、志望動機にも繋がる内容です。職歴欄に書いた内容と矛盾しないことはもちろん、志望動機欄とのつながりも意識して書きましょう。
書くことが難しいな…と感じたら退職理由欄のない履歴書を
履歴書上でうまく説明するのは難しそうだな、と感じた人が、無理して退職理由欄を記入する必要はありません。そもそも、退職理由欄付きの履歴書は、数ある履歴書フォーマットの中でもごく一部。記入しづらい履歴書テンプレートを選ぶより、自分にあったもので少しでも有利になる履歴書を目指しましょう。
退職理由欄のない履歴書はこちら。
*参考:「履歴書テンプレートの無料ダウンロード全5種類(word・PDF)」
退職理由を志望動機欄に記入する場合のポイント
退職理由欄とは異なり、ほとんどの履歴書に備わっている志望動機欄。志望動機を説明することは、採用担当者に「なぜ応募してきたのかを納得させること」が最大の目的になります。
したがって、「これまでにどんな経験をし、何ができるのか」というスキル・経歴に触れるだけでなく、「今回なぜその道を辞めて転職しようと思ったのか」という退職理由、そして「企業のどんな部分に惹かれて応募したのか」という応募理由の3点を順序立てて説明する必要があります。
納得感のある志望動機の作成に、退職理由への言及は避けて通れません。
空欄を埋めるだけで完成。カンタン志望動機作成キット
時間がない場合や、履歴書をあまり重視しない企業向けに書く場合など…「これさえ抑えれば大丈夫」という最低限の志望動機はどう書くのか。
次の4つの「 」を埋めていけば、無難な志望動機が完成する、カンタン志望動機作成キットをご用意しました。(2)に退職理由が入ります。
(1)私は「 」の頃から「 」をしてきました。
(2)今回「 」という理由から、転職を決意しました。
(3)貴社の「 」に大変魅力を感じます。
(4)いち早く貴社に貢献できるよう頑張りますので、よろしくお願いします。
*参考:「すぐわかる履歴書 志望動機の基本的な書き方・受かる書き方」
さらに詳しい志望動機の書き方も、上記のページをご活用下さい。
面接で退職理由をアピールする際のポイントは…
選考が面接に進むと、履歴書に記入した退職理由について、必ず詳しく尋ねられるでしょう。
その際は、たとえネガティブな退職理由であっても、前向きな印象を持たれるようにアピールすることが大切です。
*参考:「みんなの本音の転職理由は?ハズさない転職理由の伝え方」
まとめ
履歴書に退職理由を記入する際のポイントは、下記の3点です。
(1)基本的には職歴欄に「一身上の都合」「会社都合」「契約期間満了」のいずれかを記入すれば良い
(2)採用担当者が不安になるようなケースでは、具体的な退職理由を記すのも手
(3)退職理由欄や志望理由欄に記入する場合は、直近の職歴について、具体的に退職理由を記入する(くれぐれもネガティブにならないように)
退職理由は面接で必ずといって良いほど質問される内容です。履歴書に書いただけで安心せず、面接時にしっかりと伝えられるよう、準備しておきましょう。
