退職理由・経験談も 新卒1年目で退職したらどうなるのか
新卒1年目で退職を考え始めると「もう少し我慢したほうがいいのか」「退職したとしても次の就職先は見つかるのだろうか」など、悩みがたくさん出てきますよね。
そうした悩みが少しでも解消されるよう、新卒1年目で退職する人の割合やその理由、実際に入社1年目で退職した人の経験談などを紹介します。
そもそも新卒1年目で退職ってアリ?
まずは、新卒1年目で退職した人の割合や、退職した理由を紹介します。
10人に1人は新卒1年目で退職する
新卒1年目での退職はそれほど珍しくありません。厚生労働省によると、2018年度の大卒者で入社1年目に退職した人の割合は11.6%。約10人に1人は新卒1年目で退職しています。ほかの年度も、新卒1年目の離職率は10%前後で推移しています。
ちなみに、株式会社UZUZが行った調査によると、新卒3年目までを指す第二新卒のうち、約半数が入社半年で退職しているという結果も出ています。
これらのデータから、新卒1年目で退職することは、まったくありえない選択肢とは言い切れないことがわかります。「とりあえず3年は働くべき」という意見もよく耳にしますが、この考え方がすべての人に当てはまるわけではありません。退職するかしないかは、あくまで個々人の問題として捉えましょう。
※出典
→新規学校卒業就職者の在職期間別離職状況|厚生労働省
→【2018年度版】第二新卒・既卒・フリーターの20代若手人材向け就職活動実態調査/退職が多い職種は「営業」、業種は「IT」「建設」という結果に | UZUZ
新卒1年目の退職理由ランキングTOP10
厚生労働省の若者雇用実態調査(2013年)の結果を元に、入社して1年目に会社を辞めた新卒の退職理由をランキングにすると、以下になります。自分の退職理由を考える参考にしてみてください。
※出典→資料シリーズNo.171「若年者のキャリアと企業による雇用管理の現状」|労働政策研究・研修機構
※出典元には、上記の退職理由以外に、「無回答」や「その他」を含む9つの退職理由が掲載されています
※ランキングは2013年の調査結果を元に労働政策研究・研修機構が作成したデータを参考にしています
この調査結果から、新卒1年目は「労働時間・休日・休暇の条件が良くなかった」「人間関係が良くなかった」など労働条件・環境への不満や、「仕事が自分に合わない」「ノルマや責任が重すぎた」など仕事の価値観とのギャップに関する悩みを抱えたことで退職に至ったとわかります。
新卒1年目で退職…その後はどうなる?
ここでは、新卒1年目で退職した人がその後どうなるのか、転職後も正社員になれたかどうかの割合やその背景、実際に新卒1年目で会社を辞めた人の経験談を紹介します。
退職後1年以内に正社員になれた人は3~4割
労働政策研究・研修機構の調査によると、初めて正社員として働いた会社を新卒1年目で退職した人のうち、1年以内に正社員に転職できた人は3~4割(男性39.1%、女性32.1%)。
一方、契約社員など、正社員以外の働き方をした人の割合は4~5割(男性46.2%、女性54.6%)でした。
転職後、正社員以外の働き方になる背景は男女によって少し異なり、男性の場合は正社員採用の希望が叶わず非正規雇用になるケースが多い一方、女性は自分に合う働き方や仕事内容を選んだ結果として非正規雇用になる傾向があります。
同調査によると、退職後1年間で正社員以外の働き方をした人のうち、その理由を「正社員として採用されなかったため」と回答した男性は41.4%いましたが、女性は13.7%にとどまりました。男女でこのような違いが出るのは、家族の稼ぎ手は男性であるという日本の伝統的な考え方の影響で、女性より男性のほうが正社員へのこだわりを強く持っているためと考えられます。
新卒2~3年目で退職した人の方が正社員になる割合が高い
新卒1年目で会社を辞めた場合は、新卒2~3年目で退職した場合と比べると退職後に正社員として働く人の割合が小さくなっています。
※図は出典元の図表7-1-3を参考に作成
入社して1年目に退職を考えている人は、こういった厳しい現状があることも頭の片隅に置いておきましょう。正社員として働き続けたい場合は、新卒1年目での退職を控えたり、転職活動を進めて正社員採用が決まった後に退職したりするなど、計画的に行動しましょう。
※出典→若年者の離職状況と離職後のキャリア形成Ⅱ|労働政策研究・研修機構
あえて正社員以外の働き方を選ぶ人もいる
上記の通り、退職後に正社員以外の雇用形態で働いた人の中には、自分に合った仕事や働き方をするために、あえて正社員にならなかった人もいます。
先程の労働政策研究・研修機構の調査によると、新卒1年目で退職後に正社員ではない働き方を選んだ理由として、男性の約2割、女性の約3割が「仕事の内容が希望に合っている」「自分の都合のよい時間に働ける」と回答しました。
退職を考えているこの機会に、正社員以外の働き方も含めて自分にはどういう働き方が合っているのか考えてみるのも良いでしょう。どういった雇用形態で仕事をするにしても、メリット・デメリットがあります。
※正社員のメリット・デメリットについて詳しくは→「正社員にメリットはない」と言われるワケ|実態を徹底検証
※正社員以外の雇用形態について詳しくは→非正規雇用とは|正規雇用と給料や労働条件で格差はある?
実際に新卒1年目で退職した人の経験談
新卒1年目で退職した3人の経験談を紹介します。新卒1年目で退職した人の会社を辞めた理由や、退職して後悔したこと・良かったことなどを退職後のイメージの参考にしてください。
実力主義の雰囲気についていけず3ヶ月で退職したAさん
新卒で入社した会社は、とにかく実力主義でした。私は研修にまったくついていけず、段々と会社に居づらくなり…とにかく早く辞めたい一心で、入社3ヵ月目に退職しました。
しかし今は、勢いで辞めたことを後悔しています。退職後すぐに転職活動を始めましたが、やりたいことが明確になっていないため、書類選考も面接もうまく行きませんでした。今は正社員として再就職していますが、一時はフリーターになったこともあります。
退職する前に、世の中にどんな仕事があるかを調べたり、自己分析をして自分の強みや本当にやりたいことを整理したりすれば良かったです。
仕事にやりがいが感じられず半年で退職したBさん
新卒で入った会社を退職した理由は、仕事にやりがいを感じられなかったからです。入社当初は、周りの目を気にして「とりあえず3年は我慢しよう」と思っていました。しかし次第に「このままつまらない仕事を続けて不幸な人生を送りたくない」と考えるようになり、入社半年で退職を選びました。
退職にはかなり満足しています。転職活動を通して視野が広がり、自分に合う仕事がわかるようになりました。希望の会社に就職することもでき、今はやりがいを感じながら仕事に取り組めています。
仕事に向いていないと感じ1年で退職したCさん
私は、新卒1年目の同期の中で一番仕事ができませんでした。上司から叱責されてばかりで、自分はこの仕事に向いていないと感じるようになり、在籍中に転職活動を始めました。入社1年目の終わりに転職先が決まったため、退職しました。
希望の会社に転職できたので後悔はしていません。しかし、前の会社にはとても優秀な人たちがいたため、彼ら・彼女らともっと一緒に働いてみたかったと思っています。
新卒1年目で今すぐ退職したいと思ったら
新卒1年目の場合、会社を辞めたいと思っても、何から始めたらよいかわからない人も多いはず。そういうときは、以下の(1)~(3)を順に進めてみましょう。
(1)本当に今退職すべきかもう一度考える
まず、会社を辞めるタイミングは本当に今なのか、冷静に検討しましょう。勢いで退職すると後悔することもあります。会社を辞めたい理由を整理し、それらが今後解消される可能性はないか、現状を自分の思い込みだけで捉えていないか考えてみましょう。
退職したい理由別に、今辞めるべきかどうか決める上での考え方を載せましたので、参考にしてください。
会社を辞めたい理由 |
考え方の具体例 |
給与や休暇などの労働条件がよくない |
|
人間関係が良くない |
|
仕事が自分に合わない |
|
一人で考えるのが不安な場合は周りに相談
なぜ会社を辞めたいのか、本当に今辞めるべきなのか、一人ですべて考えるのが難しいときは、信頼できる先輩や同期に相談してみましょう。あなたの状況を客観的に判断し、適切なアドバイスをくれるかもしれません。
しかし、不必要に周囲に話してしまうと、社内に良くない噂話が広まってしまう可能性もゼロではありません。退職の話が漏れるのを避けたいという人は、別の会社に勤めている学生時代の友人などに相談してみるのも一つの手です。
(2)退職に向けて準備を始める
今退職すべきか冷静に考えた結果、会社を辞めると決めた場合は、退職に向けて情報収集や転職活動を始めましょう。
退職時期の決め方や健康保険の切り替え方法など、退職の流れや手続きを事前に理解しておくことが、スムーズに会社を辞める近道です。
※退職の流れや手続きについて詳しくは→退職のすべて~手続きから退職届、退職金、挨拶まで
転職活動は退職前から始めておくと、金銭的にも精神的にもラクです。退職してから転職活動を行う場合、生活費はこれまでの貯金を切り崩してまかなうことになります。これは「早く内定を決めなければならない」と焦る原因になり、結果としてよく考えないまま転職先を選んでしまいかねません。
また、内定が決まる前に退職する場合を考えて、数ヶ月分の生活費を貯金しておくと安心です。
注意しておきたいのは、新卒1年目で会社を辞めた場合、雇用保険の加入期間が足りないため、退職後に失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取ることができない点です。それを前提に、計画的に退職準備を進めましょう。
(3)角が立たない伝え方で退職を切り出す
退職の準備ができたら、直属の上司に退職の意思を伝えましょう。退職の伝え方次第で去り際の印象は大きく変わります。
以下を参考にして、なるべく円満に退職できるようにしましょう。
<角の立たない退職の伝え方>
- 退職を切り出すタイミングは退職予定日の1.5~3ヶ月前。繁忙期・忙しい時間帯は避ける
- 直属の上司に対し、「今ちょっとよろしいですか?」と声がけをし、会議室などの個室に誘導する
- 個室に二人きりの状態になってから、「大変申し上げにくいのですが、実は退職を考えておりまして…」と語り出す。
- 会社の気持ちを配慮した上で退職理由を伝える
退職を切り出す際は「退職するかどうか」を相談するのではなく、「退職時期をいつにするか」を相談する姿勢で臨みましょう。
また、退職理由を上司から聞かれた場合、給与や残業などの労働条件を退職理由にするのは避けてください。労働条件を理由にすると、「労働条件を改善するから」と言われて退職を撤回する流れになりかねません。
※退職の伝え方について詳しくは→トラブらない退職の切り出し方|どんな言い方・伝え方?
退職を切り出しづらいときに考えたいこと
上司に退職したいと伝えるとき、特に新卒ならば「上司から怒られるのではないか」「引き止められて終わりなのではないか」と不安になることも当然です。本当は退職したいけれど、なかなか言い出せずに勤務を続けている人もいると思います。
しかし、退職の意思を伝えるのは、勤続年数の長さに関係なく誰でも緊張するもの。一生その会社に勤める予定がない限り、この緊張を乗り越えなければならないタイミングはいずれまた来ます。
言いづらい気持ちがあっても、次のステップに進むために、早めに退職の意思を伝えましょう。
▼「辞めたい」と思ったら読んでおきたい
新卒の退職にまつわるQ&A
ここでは、新卒が退職するときに気になる質問に答えます。
新卒でも退職金はもらえる?
新卒でも退職金を受け取れるかどうかは、会社によって異なります。まずは就業規則で退職金に関する規定を確認しましょう。一般的には、退職金の有無や受け取れる金額は勤続年数で決まります。
「約半数以上の会社が最低でも3年は勤めないと退職金を出さない」という調査結果もありますので、退職金をもらってから会社を辞めたい人は、退職のタイミングを考え直す必要があるかもしれません。
※退職金について詳しくは→退職金はいくらもらえる?相場は?|勤続年数&理由別一覧
退職の意志を伝えて引き止めにあったら?
引き止めにあった場合は、退職理由を考え直したり、退職の話をする相手を直属の上司からさらに上の上司に変えたりしましょう。
会社がまったく退職交渉に応じてくれない場合は、最終手段として内容証明郵便で退職届を出す方法もあります。内容証明郵便は公的な証拠とみなされるため、退職届が会社に到着した日の2週間後には退職が成立します。
<引き止めにあった場合の対処法>
- 事業内容や会社の規模に関する理由など、相手が引き止めにくい退職理由を考える
- 上司が話を聞いてくれない場合は、退職の話をする相手を変える
- 会社が一切退職交渉に応じてくれない場合は内容証明郵便で退職届を出す
※引き止めにあったときの対処方法について詳しくは→退職を引き止められたとき、穏便にすませるための上手な対処方法
新卒で退職代行サービスを使ってもいい?
パワハラを受けている、強い引き止めにあっているなど、どうしても退職交渉が進まない状況であれば、退職代行サービスを使ってもかまいません。
しかしそうでない場合は、なるべく自分の口から伝える努力をしましょう。
まとめ
新卒1年目で退職する人は10人に1人と、決して珍しいわけではありません。
ただし、退職後に正社員になった人は3~4割という実態もあるため、勢いで退職してしまうと後悔することにもなりかねません。会社を辞めたあとの働き方をじっくり考えた上で決断しましょう。
▼「もっと自分に合った仕事があるのでは?」と思ったら
▼「やりたいこと」を見つけてみる
▼辞めるべき?残るべき?