リスクと対処法を紹介 次の仕事決まってないけど辞めるのはアリ?
転職は次の仕事が決まってから退職するのが一般的ですが、どうしてもすぐに辞めたい事情がある場合「次の仕事決まってないけど辞める」のはアリなのでしょうか。
次の仕事を決めずに辞めるメリットとデメリット、やるべきことをまとめて解説します。
「次の仕事決まってないけど辞める」はアリ?
問題ないが、メリット・デメリットをよく理解して計画的に
「次の仕事決まってないけど辞める」こと自体に問題はありません。
ただし、一時的な感情で衝動的に辞めることはおすすめできません。
社会通念上は次の仕事を決めてから辞めることが一般的であり、離職期間がどのくらい続くかわからないリスクもあるからです。
「とにかく会社を辞めたい!」と思っても、退職前に以下のようなメリット・デメリットをよく理解した上で、計画的に行動しましょう。
<辞めてから転職活動をするメリット>
- 自己分析・情報収集に専念できる
- 選考スケジュールに柔軟に合わせられる
- 資格の勉強などの時間が十分に取れる
<辞めてから転職活動をするデメリット>
- 離職期間があると社会保険の移行手続きが面倒
- 収入が途絶えるため長引くと金銭的に不安
- 焦って希望条件を妥協する可能性も
- 前の会社の良さに気づいても戻れない
詳しくは「次の仕事が決まってないけど辞めるメリット・デメリット」で解説します。
パワハラや過労で心身が辛いなら辞めるのもあり
次の仕事が決まっていなくても、すぐに辞めるべきタイミングがあるとすれば、パワハラや過重労働で心身ともに追い詰められているときです。
不眠や無気力など鬱の傾向がある場合は仕事を休み、すぐに病院にかかりましょう。
休職や異動など、今の職場を辞めずに解決できればベストですが、物事がそううまく運ぶとは限りません。劣悪な職場環境を脱することは「無謀」でも「逃げ」でもありません。
しばらく休養期間をおき、心身ともに健康な状態になってから、落ち着いて次の仕事を探すことをおすすめします。
また、退職は労働者の権利として守られており、退職届を提出して2週間がたつと、法的に退職が成立します。
万が一、会社が退職届を受け取ってくれない場合には「配達証明付き内容証明郵便」で退職届を送付するという最終手段もあります。
次を決めずに辞めていい3つのケースとは?
上で説明したケース以外にも、たとえば会社の経営状態が悪く給料の未払いが続いているなど、すぐにでも辞めたほうがよい場合があります。
下記の記事では、転職支援のプロに聞いた転職先を決めずに辞めていい3つのケースを紹介しています。すぐにでも会社を辞めたい事情がある人は、自分が3つのケースに該当するか確認してみてください。
コラム:4人に1人は次の仕事が決まってないまま辞めている
厚生労働省の調査によると、在職中に転職活動を行わなかった人は25.8%。
この調査では在職中に転職先が決まったかどうかはわからないことから、この数字が「=次の仕事が決まってないまま辞めた人」と考えるのは難しいものの、ひとつの参考にはなるでしょう。
※出典:厚生労働省「転職者実態調査の概況 平成27年」より作成
また、前の職場を辞めてから次の職場で働き始めるまでの期間(離職期間)は「1ヶ月未満」という回答が最も多く、全体の約3割を占めます。
「離職期間なし」という回答を含め、約8割の人が離職後から半年以内に再就職しています。
※出典:厚生労働省「転職者実態調査の概況 平成27年」より作成
離職期間が長くなると選考に悪影響を与えることもあるため、なるべく早期に再就職できるよう、転職活動は計画的に行いましょう。
次の仕事が決まってないけど辞めるメリット・デメリット
辞めてから転職活動をするメリット
「次の仕事決まってないけど辞める」ことのメリットは、転職に向けて時間を自由に使えることです。具体的には以下の3つが挙げられます。
- 自己分析・情報収集に専念できる
- 選考スケジュールに柔軟に合わせられる
- 資格の勉強などの時間が十分に取れる
自己分析・情報収集に専念できる
会社を辞めてから転職活動をする場合、自己分析や情報収集のために必要な時間を確保することができます。
求人情報の収集から企業研究、自己分析、応募書類作成など、転職活動中にはやらなければならないことがたくさんあります。
仕事を続けながらこれらの作業をこなすのは大変ですが、仕事を辞めてからなら思う存分取り組むことができます。
同時に複数企業の選考が進んでいる場合も、1社1社しっかり準備できるでしょう。
選考スケジュールに柔軟に合わせられる
退職後の転職活動では、基本的に企業の指定した時間に面接を入れることができるため、選考をスムーズに進めることができます。
内定をもらった後も、在職中の場合は退職交渉や業務引き継ぎのため入社まで最低1ヶ月以上かかります。しかし、離職後なら即日で入社もできることから「すぐに入社してほしい」という企業の場合、選考で有利になる可能性があります。
資格の勉強などの時間が十分に取れる
退職後の転職活動では、キャリアアップのために資格を取得したり、キャリアスクールに通ったりする時間を確保できます。
離職期間が多少長くなっても、資格取得や短期留学、職業訓練など、キャリアを見据えた活動に充てていたことが説明できれば、応募先担当者の心象を悪くすることもありません。
退職前に一度、自分が本当にやりたいことや、そのために必要なスキル・経験について考えてみましょう。
辞めてから転職活動をするデメリット
「次の仕事決まってないけど辞める」ことのデメリットは、経済的・精神的に困窮するリスクがあることです。具体的には以下の4つが挙げられます。
- 離職期間があると社会保険の移行手続きが面倒
- 収入が途絶えるため長引くと金銭的に不安
- 焦って希望条件を妥協する可能性も
- 前の会社の良さに気づいても戻れない
離職期間があると社会保険の移行手続きが面倒
退職してから次の会社で働き始めるまで離職期間がある場合、健康保険・厚生年金の切り替え手続きが必要になります。
会社員の場合は勤め先の健康保険(協会けんぽ、健康保険組合、共済組合など)や厚生年金保険に加入していますが、一時的とはいえ無職になると、それぞれの加入資格がなくなるためです。
こうした社会保険の切り替え手続きは面倒な上、会社員の場合、社会保険料は会社が半分負担してくれますが、離職期間は以前より保険料の負担額が高くなることがあります。
それぞれ詳しい手続きの方法については「次の仕事を決めずに辞める場合にやるべきこととコツ」で解説します。
収入が途絶えるため長引くと金銭的に不安
収入がない中で離職期間が長引くと、経済的にも精神的にも苦しくなってきます。
自己都合退職の場合、失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取るには7日間の待機期間に加え、2ヶ月間の給付制限があり、その間の収入はゼロとなります。
貯金残高を気にしながら転職活動を行うのは大きなプレッシャーを伴います。
焦って希望条件を妥協する可能性も
退職後の転職活動で思うように選考が進まない場合、経済的・精神的に追い詰められ、「どこでもいいから早く就職先を決めなければ」という焦りから、誤った判断を下しかねません。
絶対譲れなかったはずの条件すら妥協してしまい、前の仕事と似たような条件で再就職。結局長く続かず、早期離職してしまうケースも珍しくありません。
また、キャリアアップに時間を充てず、ただ離職期間だけが長くなると、面接官からの心象が悪くなるうえ、当人の就労意欲も減退してますます選考に通りにくくなる……という悪循環に陥る可能性もあります。
前の会社の良さに気づいても戻れない
転職活動をする過程で前の会社の良さに気がついても、辞めてしまっていてはもはや後戻りすることはできません。
近年では「アルムナイ」と呼ばれる「一度会社を離れたOB・OG」を積極的に再雇用する動きも見られますが、それも離職後に別の会社・職種で経験を積んでいることが前提となります。
衝動的に退職する前に、よく見極める必要があります。
※出戻り転職について詳しくは→出戻り転職は失敗する?恥ずかしくない志望動機の伝え方
メリット・デメリットを考えて慎重な判断を
転職先を決めずに退職するかどうかは、ここで紹介したメリット・デメリットを理解した上で慎重に判断してください。
とはいえ、転職先を決めずに辞めても本当に問題ないか、不安に思うのは当然です。
少しでも迷いがあるなら、決断する前にまず、ご自身が「転職先を決めずに辞めていいケース」に当てはまるかどうか、下記の記事で確認してみてください。
次の仕事を決めずに辞める場合にやるべきこととコツ
次の仕事を決めずに辞める場合にやるべきことと、転職活動を有利に進めるためのコツについて解説します。
在職中~再就職までにやるべきこと5つ
まず、在職中から再就職までにすべきことは下記のとおりです。
一つずつ順を追って解説します。
転職活動の準備をしておく
退職後すぐに転職活動のスタートダッシュを切るために、在職中にできる範囲で転職活動の準備をしておきましょう。
まずは自分の希望に合致する求人情報を検索し、リストアップすることをおすすめします。
求人情報には必ず「必須条件」や「希望条件」が掲載されているので、自身のスキル・経験でどんな会社・職種に転職できそうか、相場観を身に付けておきましょう。
もし希望する求人の必須条件と自身のスキルにギャップがある場合は、それを埋める方法について対策を考える必要があります。
例えば「実務経験3年以上」といった必要条件を満たせるように退職時期を調整する、資格を取得する、職業訓練を受けるといった対策が考えられます。
退職後の生活設計をする
退職後、転職活動に使える時間は「貯金が底をつくまで」。在職中に退職後の生活設計をしておきましょう。
退職後は会社からの給料がゼロになるため、これまでの貯金に退職金、失業手当を加えた金額から、生活費などの必要経費をすべてまかなわなくてはなりません。
退職金や失業手当はいくら受け取れるのか、資格取得のためにいくらかかるのか、生活費をどこまで切り詰めるべきか、など退職後の収支をシミュレーションし、いつまでに転職先を決める必要があるのか、デッドラインを決めましょう。
また、「貯金が底をつくまで」といっても、最低限2~3ヶ月分の生活費は確保しておきたいところです。
給与の支払いサイクルを「月末締め、翌月25日払い」としている会社が多く、転職先が決まっても、働き始めてから給与を受け取れるまで約2ヶ月あるためです。
貯蓄が少なくなったら、一時的にアルバイトで食いつなぐことも可能ですが、肝心の転職活動がおろそかになる可能性もあるので、あまりおすすめできません。
思うように転職活動が進まない場合は、希望条件を見直し、応募先の選択肢を広げてみましょう。
健康保険の切り替え手続きを行う
退職から14日以内に、各市区町村の窓口に以下の必要書類を持参して、健康保険の切り替え手続きを行ってください(国民健康保険に加入する場合)。
国民健康保険の加入手続きに必要な書類
- 健康保険資格喪失証明書
- マイナンバーカード、または通知カード
- 本人確認ができるもの(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
- 保険料口座振替用のキャッシュカード、または通帳と届出印
今の健康保険証は退職時に会社に返却しなくてはならないため、退職後はなるべく早く他の健康保険への加入手続きを行いましょう。
保険証を持たずに医療機関を受診すると、かかった医療費は全額自己負担となってしまいます。
また、1ヶ月、2ヶ月を経過してから手続きを行っても、加入日はあくまで以前の健康保険から脱退した翌日(退職日の翌日)のため、その日までさかのぼって保険料を納めることになります。
なお、国民健康保険に加入するほかに、家族の加入している健康保険の扶養に入ったり、以前の勤務先の健康保険に引き続き加入する任意継続制度を利用したりすることも可能です。
※健康保険の切り替え手続きについて詳しくは→完全マニュアル 退職するときの健康保険切り替え手続き
年金の切り替え手続きを行う
退職から14日以内に、各市区町村の窓口に以下の必要書類を持参して、国民年金の加入手続きを行ってください。
年金の切り替え手続きに必要な書類
- 退職日が分かる証明書(雇用保険被保険者離職票、雇用保険受給資格者証、社会保険資格喪失証明書、退職証明書、退職辞令書など)
- 基礎年金番号が分かるもの(年金手帳・基礎年金番号通知書など)
- 本人確認ができるもの(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
失業中は所定の手続きを行うことで保険料の支払いが免除されます。
保険料の支払いが免除された期間は年金の受給資格期間(年金を受け取るために必要な保険料を納めた期間、免除・猶予された期間などの合計)に含まれますが、将来受け取る年金はその分だけ減額されてしまいます。
免除された保険料は10年以内であれば追納できますので、再就職して経済的に余裕ができたら追納することをおすすめします。
※国民年金への切り替え手続きについて詳しくは→「【3分でわかる】退職にともなう年金の切り替え・手続きガイド」
ハローワークで失業保険の手続きをする
自ら退職を申し出た場合、一般的に「自己都合退職」となりますが、その場合、以下の3つの条件を満たせば失業保険を受け取ることができます(ただし2ヶ月間の給付制限あり)。
失業保険は離職期間中の生活費の足しになるので、ハローワークで必ず手続きを行いましょう。
自己都合退職で失業保険を受け取るための条件
- 退職する前の2年間に雇用保険に加入していた期間が12ヶ月以上ある
- 失業状態(休職活動をしているのに職に就けない状態)である
- 再就職する意志があり、求職活動を行っている
退職から2~3週間で会社から離職票が届いたら、それをハローワークに持参して求職の申込みを行います。
手続きから失業手当を受け取るまでの流れは以下のようになります。
なお、下記に該当する場合は「特定受給資格者」や「特定理由離職者」といった所謂「会社都合退職」とみなされ、2ヶ月の給付制限期間がありません。
■「特定受給資格者」に該当する場合
- 会社の倒産により離職した場合
- 会社の業績悪化などにより解雇された場合
- 労働契約の内容と現実に大きな差があった、妊娠や出産を理由に不当な扱いを受けた(マタハラ)など、会社が責めを負うべき理由で離職した場合
など
■「特定理由離職者」に該当する場合
- 有期雇用期間が満了し、雇用契約が更新されなかった場合
- うつ病など健康上の理由で離職した場合
- 親族の病気など家庭の事情で離職した場合
など
※会社都合退職について詳しくは→メリット・デメリットも紹介 会社都合退職とは?
※自己都合退職について詳しくは→会社都合退職との違いも解説 自己都合退職とは?
※自己都合退職での失業保険について→簡単にわかる!自己都合でも失業保険で損しないための3ポイント
【最新情報】自己都合退職の給付制限が2ヶ月に短縮されました(2020年10月1日更新)
自己都合退職の給付制限が、3ヶ月から2ヶ月に短縮されました。なお、期間短縮の対象者は2020年10月1日以降に退職した方です。ただし、最新の離職日からさかのぼって5年以内に3回以上自己都合退職をしている場合は、引き続き3ヶ月の給付制限がかかります。
転職活動を有利に進めるためのコツ
「次の仕事きまってないけど辞める」場合でも、転職活動を有利に進めるための3つのコツを解説します。
離職期間中にもスキルアップする
離職期間中もスキルアップを怠らないようにしましょう。
離職期間が長くなると、面接官から理由を尋ねられることがあります。
はっきり回答できないと就業意欲を疑われる可能性があります。
資格取得のための勉強をしたり、公的職業訓練(ハロートレーニング)を受けたりするのが一般的ですが、近年ではWebデザイナーやエンジニアなど、それぞれの領域に特化した民間のキャリアスクールも増えています。
転職サイトやエージェントをうまく活用する
ハローワーク以外にもさまざまな転職支援サービスがありますので、それぞれの特徴(若手の転職支援に強い、ハイキャリア転職に特化している、IT業界に特化しているなど)を見極めて、自分に合ったサービスを選びましょう。
転職エージェントを利用すると、自分に合った求人を紹介してくれたり、面接の日程調整をしてくれたり、自分のキャリアをどのように生かせるか客観的にアドバイスをもらえたりと、手厚いサポートを無料で受けられます。
自分の視野にはなかった業界・業種の求人に出会える可能性もあります。
国や自治体の就職支援サービスを利用する
中小企業を中心に豊富な求人情報を持っているハローワークなどの公的就職支援サービスも利用してみましょう。
無料で受講できる職業訓練があるのも公的サービスならではの魅力です。
自治体によって提供しているサービスが異なりますので、お住いの地域のハローワークではどのような支援を行っているか確認してみてください。
主な公的就職支援サービス
ハローワーク | 失業保険(雇用保険)の手続き、求人情報の検索など |
ハロートレーニング(公的職業訓練) | 有料または無料でさまざまな分野(機械、建築、電気、情報、ファッションなど)の職業訓練を受けられる |
サポステ(地域若者サポートステーション) | 15~49歳までの人を対象に、キャリアコンサルタントによるカウンセリングやコミュニケーション訓練、協力企業での職場体験など、就労に向けたさまざまな支援を受けられる |
ジョブカフェ(若年者のためのワンストップサービスセンター) | 各地域の特色を生かした就職セミナーや職場体験、職業紹介など行う |
トライアル雇用 | ハローワークの紹介により、正規雇用を前提に原則3ヶ月間お試し雇用(トライアル雇用)してもらう制度 |
有期実習型雇用 | 賃金を受け取りながら3ヶ月~6ヶ月間会社で実習を受け、その後正社員となる制度 |
まとめ
次の仕事を決めずに辞めることそのものに大きな問題はありません。むしろ、選考の準備に十分時間を注げることは大きなメリットといえます。
その一方で、収入が途絶えてしまうことから、離職期間が長引くと経済的・精神的に困窮するデメリットがあります。仕事を辞める前に、これらのメリット・デメリットを理解した上で計画的に行動しましょう。