恥ずかしくない志望動機の伝え方 出戻り転職は失敗する?
一度他社に転職した社員が、元の会社に戻ってきて再び働く「出戻り転職」。
一般的な転職と違い、「一度辞めた会社に舞い戻る」転職のため、よく考えて決断しなければ失敗することもあります。
今回は、出戻り転職の実態から、恥ずかしくない志望動機の伝え方、出戻り転職に成功する人の共通点を紹介します。
出戻り転職は失敗するのか?
そもそも、どのくらいの企業が出戻り転職を受け入れているのでしょうか。
出戻り転職は増えている
出戻り転職を受け入れている企業は近年増加しています。
2016年にエン・ジャパン株式会社が企業の出戻り(再雇用)の実態を調査したデータによると、全体の67%の企業が「再雇用したことがある」と答えていますが、2018年には72%と、5ポイント伸びています。
マイナスなイメージがある出戻り転職ですが、徐々に受け入れてくれる企業が増えていることが読み取れます。
実際にパナソニック株式会社やKDDI株式会社などは、即戦力として活躍してほしいという思いから、出戻り転職を積極的に受け入れる制度を導入しています。
ただし、出戻り転職を歓迎する制度を設けている企業は8%とまだまだ少ないのが現実です。
出戻り転職をしたい会社に再雇用制度がない場合は、自ら前職に連絡を取るのが一般的です。志望動機や職務経歴書を提出するといった応募の仕方は通常の転職とさほど変わりませんが、一度辞めた手前、難易度が高い傾向があります。
元上司や元同僚に推薦してもらえた場合は成功する可能性が高まりますが、出戻り転職を希望する人自身が努力したからといって、必ずしも実現できることではありません。
※参考→第133回 出戻り社員(再雇用)について|エン人事のミカタ
出戻り転職のデメリットは?
出戻り転職を受け入れる企業は増えているものの、必ずしも再入社を歓迎されたり、スムーズに仕事ができたりするとは限りません。
下記のデメリットを踏まえて、慎重に検討しましょう。
以前より待遇が悪い可能性がある
かつて在籍していたときに成果を出していた人でも、一度辞めたことでその会社の仕事からは離れてしまったことから、退職前よりも低い給料・待遇で働く可能性があります。
また、出戻り転職した社員よりも勤続している社員が優先的に評価され、以前は担当できていた案件を任されないこともあります。その結果、実績を積み上げにくくなり、昇進に響いてしまう可能性もないとはいえません。
上司部下の逆転が起こり得る
以前は部下だった社員が、出戻り転職後は自分の上司になっている可能性があります。
立場の逆転を受け入れられるならば問題ありませんが、年下の社員に指示されることに抵抗がある方は、人間関係がうまくいかないリスクがあります。
また、自分は立場が逆転しても問題ないと感じていても、元部下側は仕事がしにくいと感じることがあるため、周囲の気持ちを十分に配慮する必要もあるでしょう。
恥ずかしさや気まずさがある
一度会社を辞めて戻ったことで転職に失敗したと思われる恥ずかしさを感じたり、出戻りを快く思わない社員とギクシャクしたりする可能性があります。
自分が歓迎されていない状況で仕事をするのは、人によっては大きなストレスになるかもしれません。
出戻り転職のメリットは?
出戻り転職には、出戻り転職だからこそ得られるメリットもあります。
企業風土や仕事内容を理解している
出戻り転職は、通常の転職と違って企業風土や仕事内容などを理解した上で働くことができるのが最大の利点です。
リアルな企業の姿を知っているからこそ、ミスマッチや不満が発生しにくくなります。
即戦力になれる
退職前に取り組んでいた業務を担当する場合、仕事を一から教えてもらう必要がないので、即戦力として働くことができます。
また、他社で培った経験やスキルを生かすことで、新しい視点からプラスアルファな提案もできるかもしれません。
出戻り転職の仕方や志望動機の書き方は?
他者推薦を受けたことで出戻り転職をするケースもありますが、ここでは自分から出戻り転職を志望した場合の志望動機の伝え方を紹介します。
出戻り転職を行うにあたって意識すべきポイント4つ
- 面接前に元上司や人事に相談する
- 志望動機は前向きな内容にする
- 志望動機に、他社での経験がどう役立つのかを書く
- 志望動機に現職への不満は書かない
面接前に上司や人事に相談する
会社が求人を出している場合でも、履歴書や職務経歴書などを提出する前に、まず元上司や人事に相談することが大切です。
相談時に、「もう一度働きたい」と、あなたの考えをしっかりと伝えましょう。元上司や人事が前向きに話を聞いてくれた場合は、選考課題の免除などを事前に会社に掛け合ってくれるかもしれません。また、応募後のやりとりも通常よりスムーズになる可能性があります。
反対に、事前に連絡をせずにいきなり履歴書・職務経歴書を送ると、心証が悪くなるリスクがあります。
志望動機を作るポイント
元勤務先だからと気を抜かず、出戻り転職をしたい理由が会社にしっかりと伝わるように、志望動機をきちんと作りましょう。
▼総合商社の営業へ出戻り転職する場合
貴社へは新卒で入社し、3年間、医療福祉分野の営業を担当しておりました。その後、医療機器メーカーA社に転職し、こちらでも2年間営業を担当しました。A社は介護・リハビリ領域の機器をメインに扱っていましたので、入社後は同領域に特化した知識を学んでおります。
お客様にヒアリングをしていく中で、商品の改善点に気付き、開発部に報告・相談することもありました。お客様の要望をもとに機器が改良されたこともあり、大口契約を5件獲得できました。
時に、お客様の課題や患者さんの年齢層によってはA社の商品がマッチングせず、やりきれない思いをしたこともあります。お客様の課題解決に柔軟に対応するには、一つの領域に特化するよりも、領域を横断した幅のある知識・商品が必要だと感じるようになりました。
貴社は総合商社として、多様なメーカーの商品を扱っているため、お客様の細かなニーズに対して最適な提案ができると考えています。
企業ページで、「福祉領域に注力していくため、介護関連機器のワンストップサービスの提供を開始した」というニュースリリースを拝見しました。A社での経験を生かし、福祉機器が課題解決に最適であるお客様については、ぜひ私が営業を担当させていただきたく思っています。
もちろん、退職前は全領域の商品を担当しておりましたので、特定の機器に限らず、柔軟に貴社の全商品を提案することができます。
今後も介護領域の商品をリリースしていく予定とのことでしたので、商品開発プロジェクトにも参加させていただければ幸いです。
何卒、よろしくお願い致します。
出戻り転職の志望動機を書くときのポイントは、以下の3つです。
1志望理由は前向きな内容に
志望理由は、ポジティブな内容を書きましょう。「他社勤務の経験を経て、なぜ前職の事業に取り組みたいと思ったのか」を明確にし、転職したからこそわかった前職の魅力も絡めると志望度がより伝わり、説得力が増します。
「長期入院」「親の介護」など、退職理由がやむを得ない事情だった場合は、その状況が解消し、支障なく勤務できることを伝えましょう。「退職前のように、家庭の事情によって早退が増えるかもしれない」といった理由で、断られるリスクが軽減されます。
2他社経験をどう役立てるか
現在までの経験・スキルが前職の業務にどのように役立つのかを具体的に説明します。
出戻りするあなたを採用することで、会社にとってメリットがあるのかを判断する材料になるため、「企画営業職の折衝経験を貴社の新商品プロジェクトで生かせると考える」や「前職の研究分野であるビッグデータ解析の知識が、貴社のマーケティング戦略立案に役立つ」などと、しっかりアピールしましょう。
3現職への不満はNG
給料や待遇といった条件面や、「現職の社風が合わない」といった現職への不満を書くのはNGです。
「待遇が変わったらまた辞めてしまうのでは?」「信頼関係の構築に難があるのでは?」と会社側は不安になり、採用につながらない可能性があります。
出戻り転職に成功する人の共通点
出戻り転職に成功する人の共通点は3つあります。
円満退職している
辞めるときにトラブルを起こしていないことはもちろんですが、成果を出すことで組織に貢献した、後任者が困らないよう丁寧に引き継ぎをしたなど、円満退職した人は会社からの印象も良く、成功率が上がります。
何らかのわだかまりを抱えたまま退職した場合は、出戻りすることで社員から反感を買い職場の環境が悪くなる懸念があることから、書類選考も通らない可能性があります。
退職後も元同僚との関わりがある
退職後も元同僚とコミュニケーションを取れるほど、良好な関係が続いている場合は出戻り転職の成功が見込めます。
人間関係に問題がないためポジティブにとらえてもらえることに加え、定期的にやりとりをしていると会社の状況を知ることができるので、出戻り転職の希望を伝えるタイミングが見つけやすいでしょう。
また、元同僚が好意的に人事や上司に取り次いでくれれば、採用してもらえる可能性もぐっと高くなります。
変化に柔軟に対応できる
変化に柔軟に対応できるかどうかも大切なポイントです。人によっては、退職前と大きく変化した環境で働くことがあります。
例えば、会社の注力分野が変わった、社長交代により仕事のフローが変わった、元部下との立場が逆転した、在籍時から制度が変わったなどが挙げられます。
現在の職場環境に順応しないままだと、「昔のルールと変わったのに、全然理解してくれない」と社員の好感度が下がり、仕事がしにくくなることも。あなたも周りの人も気持ちよく働けるよう、謙虚に仕事に取り組むことが成功の秘訣です。
まとめ
出戻り転職はデメリットも大きい傾向があります。ただ、即戦力として働いてくれるといった理由から、出戻り転職を積極的に受け入れる制度を導入している企業があるのも事実。
出戻り転職が自分にとって最適な選択なのかをじっくりと考えてみてください。