本音とタテマエ使い分け! 面接でハズさない転職理由の伝え方
転職の面接で聞かれたら、どう答えたらいいか迷う人も多いのが「転職理由」。転職する理由は人それぞれですが、伝え方にはコツがあります。
退職した理由を本当に正直に答えていいのか、どんな風に伝えればよい印象になるのか…具体的な事例を交えてご紹介します。
みんなの転職理由ランキング
転職経験者は、どんな理由で転職を決意したのでしょうか。2019年の厚生労働省の調査では次のとおりとなっています。
総合ランキング
※参考→2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要|厚生労働省(「その他の理由 (出向等を含む)」「定年・契約期間の満了」を除く。)
上位の理由を大きく分けると、現職への不満や不安、会社都合、キャリアチェンジ、家庭事情の4つ。
とくに、1位「職場の人間関係が好ましくなかった」、2位「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」、3位「給料等収入が少なかった」が示すように、現職への不満や不安から転職を考える人の割合が多そうです。
男女別ランキング
※参考→2019年(令和元年)雇用動向調査結果の概要|厚生労働省(「その他の理由 (出向等を含む)」「定年・契約期間の満了」を除く。)
男女ともに、転職理由の上位3つを「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」、女性が「職場の人間関係が好ましくなかった)」、「給料等収入が少なかった」が占めています。やはり、条件や働き方に対する不満や現状を変えたいという思いから転職を考える人が多いようです。
違いが見られるのは、男性では4位の「会社の将来が不安だった」(7.3%)が女性では6位(4.1%)とやや低いこと。また、結婚・出産・育児など、家庭との兼ね合いが転職理由となるのは女性の方が多いようです。
これだけはおさえよう!転職理由で見られているポイント
実際に転職活動を始めて、面接や職務経歴書で伝えるべき「転職理由」は、「前職の退職理由」とイコールではありません。
転職理由には、「前職の退職理由」と「応募先企業の志望理由」の2つの要素が含まれています。どちらも前提となるのは「仕事に対してどんなことを求めるのか」というあなたの希望。
同じ希望でも、「それが満たされなかったから退職した」と話してしまうとネガティブに聞こえますが、「それが満たせるように応募先企業・職種を志望した」と話せばポジティブに聞こえます。
つまり、「転職理由」を話す際は、「あなたがこれから仕事で何をしたいのか」を軸にすることを意識しましょう。
転職理由で面接官が見ているポイント
面接官は前職の退職理由だけではなく、あなたがその企業でこれから何をしたいのかも知りたいと考えています。それを前提として転職理由を組み立てれば、退職した理由がネガティブなものであっても、マイナスの印象を避けることができます。
面接官がここで確認しようとしているポイントは3つです。
- あなたが仕事において何を重視しているのか
- 仕事に責任感を持って取り組めるか
- 新しい仕事への意欲
あなたが仕事において何を重視しているのか
転職理由が何であれ、前職を辞めたということは、そこではあなたが仕事に対して求める何かが満たされなかったということです。同時にそれが、次の仕事で叶えたいことでもありますよね。
面接官は、あなたの仕事に対する考え方を知り、応募している企業・職種とマッチするかどうかを判断しようとしているのです。
仕事に責任感を持って取り組めるか
転職先でも責任感をもってしっかり仕事をしてくれる人材かどうかは重要なポイントです。
具体的に分解すると、
- 業務に支障が出るような問題を起こさないか
- 仕事にきちんと取り組み、いい加減な仕事をしないか
- 組織適応力があるか
- ストレス耐性があるか
- すぐに辞めてしまわないか
つまり面接官は、仕事に責任感を持って向き合い、企業に貢献してくれる人材かどうかを見極めています。
前職を辞めた理由から仕事に対するいい加減な態度が透けて見えるような人材には、次の職場でも信頼して仕事を任せることはできません。そのため、例えば「人間関係のトラブル」や「前職の仕事に飽きた」など、この点が不安に思われるような転職理由はそのまま話すべきではなく、言い方に工夫が必要です。
新しい仕事への意欲
転職理由とは、前職を辞めた理由であるのと同時に、新しい仕事への意欲でもあります。
同じ転職理由でも、「前職への不満」として話すのか、「これから叶えたいこと」として話すのかで印象はまったく違います。転職理由がいくつかある場合は、これからの展望や希望として語れる点を強調して伝えるなどの工夫をしましょう。
伝え方別・「本音の転職理由」事例集
ここでは、上記の考え方を踏まえて、本音の転職理由を「そのまま伝えてOK」「言い替えるべき」「避けるべき」に分類します。
「そのまま伝えてOK」に分類しているものも含めて、どの転職理由であっても伝え方に工夫は必要です。それぞれの具体的な伝え方例も併せてご確認ください。
そのまま伝えてOK/言い替えるべき/避けるべき転職理由
そのまま伝えてOKの転職理由
- キャリアチェンジしたい
- 専門知識/技術を習得したい
- 雇用形態を変えたい(正社員になりたい)
- 前職が倒産した/リストラされた
転職先で叶えたいポジティブな希望がある場合は、転職理由としてそのまま伝えてOKです。
その希望がなぜ応募先企業で叶えられるのかを説明することに加え、それによって企業にどう貢献できるかという点まで踏み込んで話せるとベター。
言い換えるべき転職理由
- 残業が多い/休日が少ない
- 給与を上げたい
- 前職の社風が合わなかった
- 前職企業の将来性が不安
- パートナーの転勤
- 出産・育児との両立
前職に不満があったり、業務の負担が大きかったことによる退職の場合は、伝え方を工夫してポジティブに変換する必要があります。働き方の変更や改善をしたい場合も同様に、仕事に対してネガティブな姿勢が感じられてしまうと「次でもすぐに辞めてしまうのでは?」と思われかねません。
また、パートナーの転勤など、自分の仕事との向き合い方とは直接関係ない理由があった場合には、それを第一の転職理由とするのではなく、あくまできっかけとして、自分自身の仕事への意欲を伝えましょう。
避けるべき転職理由
- 人間関係でトラブルがあった
- 疾患によって業務に支障が出た
- 仕事がイヤになった・疲れた
今後の業務に支障が出たり、問題になることが懸念される内容は、転職理由としては避けるべきです。
たとえ自分に非がなかったとしても、「そういうことが起こった」ということ自体がネガティブな印象になってしまう可能性があります。
また、仕事そのものに対してネガティブな姿勢や、自己都合すぎると捉えられる理由は絶対にNG。そもそも社会人として不適切だと思われかねません。
転職理由別・伝え方事例集
ここからは、よくある転職理由ごとに、具体的な伝え方の例をご紹介します。記載した例は、伝えるべきポイントを簡潔に示したものです。実際に伝える際には、それぞれご自身の経験や状況を踏まえて具体的に肉付けし、自分の言葉でまとめましょう。
また、どの内容についても、必ずポジティブな「これからの展望」に着地させることが重要です。
キャリアチェンジしたい
前職までとは違う仕事をしてみたいという場合、いわゆる「未経験転職」になるため、なぜその仕事がしたいのかという具体的な動機と、前職までに培ったスキルや経験を新しい仕事でどう活かせるのかを盛り込めるとよいでしょう。
ただし、キャリアチェンジを希望する場合、年齢が上がれば上がるほどハードルは高くなります。「それでもキャリアチェンジする理由」をきちんと伝えることと、それまでのキャリアを捨てる覚悟があることも伝えることが必要になります。
NG例
「営業として5年間勤めてきましたが、そろそろ企画もやってみたいと思い、転職することにしました。」
OK例
「これまで5年間、化粧品メーカーで営業として勤めてきました。営業活動でお客様と直接関わることが多く、生の声を聞く中で、まだまだニーズに応えきれていないと感じ、お客様のニーズをベースにした商品企画に携わりたいと思うようになりました。」
専門知識/技術力を習得したい
前職までのキャリアの延長で、専門性を高めたい場合は、前職ではなぜそれができなかったか、これからのキャリアにどう活かしたいかを具体的に伝えられるとよいでしょう。
NG例
「社内SEとして勤務していましたが、エンジニアとしてスキルアップしたくなり転職を決めました。」
OK例
「前職では社内SEとして勤務していましたが、ヘルプデスク的な仕事が多かったために、エンジニアとしてのスキルアップがなかなかできない環境でした。また直近では、リーダーを任されメンバーのマネジメントがメインの業務になってきたため環境を変えたいと考えました。
技術力が高く新しいことに取り組んでいく御社のような環境で、自分自身もスキルアップしたいと考えております。」
前職が倒産した/リストラされた
企業の業績不振やリストラは、自分の力ではどうにもならないことです。そのため隠したりウソをついたりする必要はまったくありません。
ただし、リストラ対象になったということがマイナスに捉えられる場合もあるので、これからも意欲高く働きたいというポジティブな姿勢を示しましょう。
NG例
「前職の企業が業績不振になり、リストラにあったため転職活動をしています。」
OK例
「前職の企業の業績低迷により、所属していたマーケティング部がリストラの対象となったため退職しました。仕事は好きだったので不本意ではありますが、これをチャンスと捉え、新しい環境で心機一転頑張りたいと考えております。」
雇用形態を変えたい(正社員になりたい)
派遣社員やアルバイト、契約社員などの非正規雇用から正社員を目指す場合、「安定したい」だけでは不十分です。
非正規の働き方で叶えられなかったことが、正社員になることでどう叶えられるのかを具体的にイメージできるように話すことが必要です。さらに、それによって企業に貢献できる点もアピールできるとよいでしょう。
NG例
「前職までは、派遣社員としてさまざまな環境で働いてきましたが、そろそろ安定したいと思い、正社員を希望しています。」
OK例
「前職までは、派遣社員としてさまざまな環境で働いてきました。アシスタントとして幅広いスキルを身につけ、編集の基礎力を培えたと考えております。ですが派遣社員のままでは部分的にしか関わることができず、もっと媒体に長期的に関わりたいという思いが強くなりました。
現在の会社では派遣社員から正社員への登用制度がないため、転職を考えております。これまでに培った基礎力を土台に、腰をすえてひとつの媒体に関わりたいと考えております。」
残業が多い/休日が少ない
残業や休日についての不満は、伝え方によっては「残業がイヤで転職したい」とネガティブに聞こえてしまいます。「より効率的に働きたい」というポジティブな姿勢を示す言い方に変換しましょう。
また、職種によっては裁量労働制など、そもそも残業ありきの勤務形態もあります。過度の残業時間が改善できなかったのであれば、その理由もきちんと説明することで納得してもらう必要があります。
NG例
「サービス残業が多く、プライベートの時間がとれないため転職を考えました。」
OK例
「同じチームのメンバーが同時期に3名退職したことにより、6名で行っていた業務を3名で行うことになりました。サービス残業と休日出勤が続く中で業務フローの改善を提案したものの、上司には受け入れられませんでした。
自分自身の成長のためにも、より効率的に働くことで成果をあげられるような環境に身を置きたいと考えております。」
給与を上げたい
本音としては給与などの待遇面は気になるところ。ですが、最たる転職理由として全面に出すのは避けましょう。あくまで仕事への意欲を伝えるのが第一です。
なお、外資系企業などはっきり伝えても問題ない社風で、業績をきちんと評価される制度があれば、それも魅力に感じているというくらいの伝え方であれば問題ない場合もあります。
NG例
「前職の給与では正当に評価されていないと感じたため、きちんと評価してくださるところへ転職したいと考えています。」
OK例
「前職は完全な年功序列体制だったため、業績を上げても評価は一律でモチベーションを保つのに苦労しました。
私は年齢に関係なく実力に応じて責任あるポジションを任せていただける環境に身を置き、成長したいと考えております。また、モチベーション高く仕事に取り組めるという意味で、御社の評価制度はとても魅力に感じております。」
前職の社風が合わなかった
社風が合わなかったり、人間関係がうまくいかなかったりしたことを強調すると、「組織への適応力が低いのでは?」とあなた自身のマイナス評価につながってしまいかねません。
あくまで意欲高く仕事に向き合う中で、会社の風土や人間関係といったしがらみにとらわれたくないというポジティブな姿勢を伝えましょう。
NG例
「前職の職場は風通しが悪く、人間関係がギクシャクしており働きにくかったのが転職の動機です。」
OK例
「前職の営業では、個人ごとに目標が設定されており、チームで仕事に取り組む風土があまりありませんでした。また、トップダウンの社風だったため、若手は意見を言いにくい雰囲気でした。業務の改善点を見つけて意見したこともありましたが、上司に取り合ってもらえませんでした。
組織としても成長するには、周囲とコミュニケーションをとりながら仕事を改善していくことが必要だと思います。そのため、お互いに切磋琢磨できる環境で働き、より大きな目標に向かいたいと思ったのが転職の動機です。」
前職企業の将来性が不安になった
将来性に不安を感じた場合、それ自体を伝えることは問題ありません。ただ、それだけは「次の会社でも不安だと思ったらすぐ辞めてしまうのでは?」と不安に思われてしまいます。
アクションを起こしたけれども改善に結びつかなかった、というプロセスを話すことでその不安を払拭するとよいでしょう。
NG例
「会社の将来性に疑問を感じたため、転職を決意しました。」
OK例
「前職の専門出版社は規模が小さく、ひとつの書籍の改定をメインにしておりました。社長の方針として事業拡大はまったく考えておりませんでした。新しい書籍をつくる提案もしましたが方針は変わらず、会社としての将来性に疑問を感じたため転職を決意しました。
今後は、専門分野で培った知識や編集経験を活かし、読者のニーズに合うものを企画していきたいと考えております。」
パートナーの転勤
家族の仕事の都合で転居が伴い、転職せざるをえなかったとしても、それだけを伝えるのではなく、あなた自身の仕事についての話をしましょう。
転職はあくまであなた自身のこと。パートナーの転勤はあくまできっかけとして、これからあなたがどう働きたいのかを具体的に伝えましょう。
NG例
「夫の転勤に伴い転居の必要があったため、私自身も退職しました。」
OK例
「夫の転勤に伴い転居することになったため、私自身も退職することにしました。前職での仕事にはやりがいを感じていたため、こちらでもそのキャリアを活かして働きたいと考えております。」
出産・育児との両立
現在は産休を取って復帰できる職場も多いため、前職に復帰しなかった理由をきちんと伝えましょう。この場合にも、家庭とどう両立して仕事をしていきたいかという考えを明確にし、仕事への意欲も伝えることが重要です。
NG例
「出産のために退職しました。」
OK例
「以前勤めていた職場では残業も多く、育児と両立できる環境ではなかったため出産を機に退職しました。仕事は好きですので、ひと段落ついたらこれまでのキャリアを活かして働くべく、育児中もオンライン講座を受けるなどのスキルアップを行っておりました。
現在は近くに両親もいるため、サポートを受けながら両立し、仕事でも貢献していきたいと考えております。」
転職理由でウソをつくのはNG!
そもそもですが、退職理由がネガティブだったり印象が悪そうだからといって、ウソをついたり、そこにまったく触れずに当たり障りのない答えで取り繕うのはNG。
もしそのまま入社できたとしても、本当の転職の動機を偽っていれば、あなたの希望する働き方が叶えられない可能性もあります。そうなった場合、入社後のギャップで更に転職を重ねることになりかねません。
退職理由がネガティブなものだったとしても、それを踏まえた上で転職で叶えたい希望やキャリアの展望を伝えるようにしましょう。
※退職理由の伝え方について詳しくは→【事情別】面接での退職理由の伝え方
おわりに
転職理由には、ポジティブなものもあればネガティブなものもありますが、どちらであっても、あなたの仕事に対する考え方が表れています。
これから活き活きと働くために何を大切にしたいのかをきちんと考えるきっかけとして、ポジティブに捉えられればよいですね。
