理由と盛り込むべきポイント 職務経歴書は「職務要約」が9割?!

書類選考は転職活動の第一関門。「職務経歴書が評価されるかどうかは、その冒頭に書く職務要約で9割決まります」と話すのは、転職支援を行う株式会社クイックのキャリアアドバイザー・竹園翔一さんです。

なぜ職務要約が重要なのか、人事担当者が職務経歴書をチェックする視点と、書類選考を通過するための職務要約の書き方を聞きました。

なぜ「職務要約」で9割決まるのか?

竹園 翔一氏(以下、竹園):職務経歴書の書き方に悩む方は多いかと思いますが、職務経歴書を企業に評価してもらえるかどうかは、これまでの経歴を簡潔にまとめた「職務要約」の内容次第ということをご存じでしょうか。

理由はいたって単純で、職務経歴書の一番上に書かれているからです。

竹園:企業の人事担当者は日々忙しくしています。届いた応募書類ひとつひとつに、丁寧に目を通せないことも多いでしょう。

では、そんな人事担当者が応募書類をどう見ているのか。

職務経歴書の一番上にある「職務要約」を読んで、自社に合う人物なのかを確認し、書類を最後まで読むかどうか判断しているのです。

つまり、いくら業務の詳細部分に良いことが書いてあっても、「職務要約」がしっかりと書けていなければそこまで読んでもらえず、書類選考を通過することができないのです。

企業は入社後に活躍できるかを判断している

竹園:企業は「自社で即戦力となる経験・スキルを持った人材」を求めています。中途採用を行う目的は欠員補充や増員がメインなので、募集するポストですぐに活躍してくれる人材を採用したいと考えているのです。

ですが、今は超売り手市場で、どの企業も採用には苦戦しています。そのため、条件に合う可能性がある人はできるだけ書類選考を通過させて、一人でも多くの人と面接したいと考えている企業は少なくありません。

つまり、職務要約の中身で人事担当者に「求めている人材に近い」と思わせることができれば、書類選考をパスできる可能性はグッと高まると言えるでしょう。

企業が求める人物像を知る方法とは?

竹園:では、職務要約にどのような情報を盛り込めばいいのか。順を追って説明していきましょう。

まずやるべきは、企業が求める人物像を確認すること。そしてそのヒントとなるのが、求人票の以下の項目です。

  • 応募資格・応募条件
  • 業務内容

応募資格・応募条件

竹園:1つ目の「応募資格・応募条件」とは、企業が応募する人物に求める条件のこと。

これを満たしていなければ応募できないわけではありませんが、企業の採用サイトはもちろん、求人サイトの求人詳細に必ず書かれています。

「応募資格・応募条件」の例

toB営業職の場合

  • IT商材の法人営業経験2年以上

toC営業職の場合

  • 営業・販売サービス業界での経験(業界不問)

販売接客の場合

  • アパレル販売や飲食店における接客業務経験

先ほどもお話したように、企業は即戦力となる人、すなわち「応募資格にできるだけ当てはまる人」を採用したいと考えています。そのため、応募資格・応募条件に当てはまる経験がある人は、職務要約に必ず記載してください。

ただ、応募資格・応募条件は絶対的なものではありません

私が過去に転職の支援をしてきた中にも「経歴は条件に達していないが書類選考を通過した」という方は多くいます。条件に達してなければ即不採用になるわけではないので、職務要約にはいままでの経験を正直に書けばOKです。

業務内容

竹園:2つ目の「業務内容」とは、現在募集している業務のくわしい内容のことです。ここには、あなたが入社した際に任せたいと考えている業務の詳細が書かれています。

「業務内容」の例

toB営業職の場合

  • 見込み顧客に対するソリューション/サービスの導入提案
  • 契約いただいた顧客のアフターフォローの窓口対応 など

人事担当者はあなたが今まで経験してきた仕事が、募集しているポジションの業務内容とどれくらいマッチするか確認して、入社後の活躍イメージが湧くかどうかを考えるはずです。

そのため、いままでの経験を振り返り、求人票の「業務内容」に書かれている業務とリンクするものがあれば、職務要約に盛り込んでアピールしてください。

簡単2ステップ!「職務要約」の作り方

竹園:企業の求めている人物像のイメージがついたら、職務要約をまとめるためにやるべきことは次の2つです。

  1. 職務要約に盛り込む要素を洗い出す
  2. フォーマットに当てはめる

この2ステップだけで、簡単に職務要約を作ることができます。

ステップ1:職務要約に盛り込む要素を洗い出す

竹園:まずは職務要約に盛り込む要素を洗い出しましょう。

盛り込むべき要素は、以下の6つです。

【「職務要約」に盛り込む6つの要素】1.どんな会社で(何年間にわたって)/2.どの業界・顧客向けに/3.なんの製品・サービスを扱う/4.職種・業種なのか/5.どのような業務を行ってきたのか/6.どのようなスキル・強みがあるのか

この6つが職務要約に盛り込まれていれば、人事担当者は職務要約の内容だけで、自社が求める人物像にマッチするか、ある程度判断することができます。

なお、6つの要素を洗い出すときは、求人の「応募資格・応募条件」「業務内容」にマッチした経験やスキルを書き出すようにしましょう。それを盛り込むことで、人事担当者にしっかりと「自分は企業が求めるスキルや経験を持っている」と伝えられます。

ステップ2:フォーマットに当てはめる

竹園:次に、洗い出した6つの要素を、下記の職務要約のフォーマットに当てはめてみてください。これで職務要約は完成です。

【6つの要素を当てはめて完成!「職務要約」穴埋めフォーマット】・①「     」、②「     」向けに③「      」の④「      」に従事。/・日々の業務では⑤「       」を行ってまいりました。/・⑥「     」を強みとしております。

1文目では現職の業務経験を簡潔に言い切ります。2文目で担当していた業務の詳細を書き、3文目は、業務経験と絡めながらあなたの強みとするスキルや経験を伝えましょう。

なお、職務要約に記載すべき具体的に職務要約に書く文量は、5行前後を目安にしてください。あくまで「要約」なので、自分の経歴を簡潔にわかりやすく伝えることが大切です。

例文は以下のとおりです。

toB営業職の場合(例)

「株式会社ABCで4年間、」「官公庁」向けに「自社ITソリューションとプラットフォーム」の「企画営業」に従事。
日々の業務では「自社アプリケーションの販売、提案」を行ってまいりました。
「ヒアリング力を活かした提案資料の作成と、成約後のアフターフォロー」を強みとしております。

toC営業職の場合(例)

「不動産仲介を行う株式会社いろは不動産で」、「買主のお客様」向けに「一戸建て住宅」の「売買仲介営業」に従事。
日々の業務では「反響営業や飛び込み客の接客・案内、ローンなどの資金計画、売主に対する交渉」を行ってまいりました。
「2年前に取得した宅地建物取引士の資格を活かし、顧客との信頼関係の構築力」を強みとしております。

販売接客の場合(例)

「アパレルブランド『マイデイジー』の路面販売店で2年間」、「20代の女性」向けに③「オリジナル婦人服および雑貨等」の「販売接客」に従事。
日々の業務では「お客様の声を聞く姿勢を大切にした接客・提案を徹底し、昨年より店長補佐として売上管理業務」を行ってまいりました。
「トレンドを押さえたコーディネート提案とクロスセルによる売上アップ」を強みとしております。

未経験歓迎の求人に応募する場合は?

竹園:求人のなかには「未経験歓迎」「経験・スキル不問」などと書かれているものもあります。

もしそのような求人に応募するのであれば、職務要約の情報だけで自社にマッチしているかを判断してもらうことは難しいので、いままでの経験をできるだけ簡潔に書けば問題ありません

その代わり「なぜこの職種に応募しようと思ったのか」「未経験でも活かせると思う経験やスキルはなにか」といったことを、職務経歴書の自己PR欄や履歴書の志望動機欄に書くようにしましょう。

逆に、応募する職種で活かせそうな経験やスキルがあれば、必ず職務要約に書いてください。

複数社を経験している場合は?

竹園:過去に転職経験があり、職務要約に複数社の情報を書く場合は、応募しようとしている職種に関する経験をメイン書きましょう。

例えば、営業とエンジニアの業務経験がある人が、エンジニアの求人に応募する場合は、営業経験は1文程度でOK。エンジニアの業務経験を主に記載してください。

また、1つの企業の中で全く異なる業務を行ってきた場合や、同じ職種で複数の転職経験がある場合は、直近で携わった業務について記載するようにしましょう。

これは先ほどお話した「企業は即戦力を求める」という部分にも関連しますが、企業の人事担当者はあなたの直近の業務経験やスキルをもとに、自社でどのように活かせそうか判断するためです。

職務経歴・自己PRもおざなりにしない

竹園:ここまで「職務要約」の重要性についてお話ししてきましたが、職務要約がよく書けたからといって満足してしまってはいけません。

職務要約で、企業が求める経験やスキルを持っていると判断されたとしても、その下の「職務経歴の詳細」や「自己PR」がいい加減では、せっかくの評価も台無しになってしまいます。ですから、職務要約以外の内容もしっかり書く必要があります。

竹園:また、改めて言うまでもありませんが、職務経歴書はあくまでビジネス文書です。誤字脱字は多ければ多いほど「業務でもミスが多いのではないか?」など、悪い心証に繋がってしまう可能性もあります。

そうしたミスを防ぐには、第三者にチェックしてもらうことが効果的です。

転職エージェントを使用する場合は担当のエージェントに、エージェントを利用しない場合は身近な転職経験者に、一度自分の職務経歴書を見てもらうことをおすすめします。

(文:転職Hacks編集部)

この記事の話を聞いた人

キャリアアドバイザー

竹園 翔一

株式会社クイック

転職支援を行うキャリアアドバイザー。主に建設・不動産・プラント領域を担当、多くの支援実績を持つ。求職者の可能性を広げる求人・企業の提案や、「現在」だけではなく、5年後・10年後を見据えたキャリア提案を心がけている。面接時の対策等、選考通過のための具体的なノウハウ提供も好評。

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